雨の旅にブロンプトンをつれて(その3)―旅行先、旅行中、帰宅日が雨降りの場合 | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

今日の旅行は、交通機関の発達によって、新幹線や飛行機を利用すれば、一日で何百キロもの移動が可能です。
すると、家を出るときには晴れていたのでターミナル駅や空港まで折りたたみ自転車で走っていったのに、いざ乗車なり搭乗して現地の駅や空港に到着してみたら雨、ということはよくあります。
もちろん天気予報がありますから、ある程度は予測がつくわけですが、家の周囲は晴天でも目的地は雨という場合、当日に旅行そのものをやめようとする前に、色々と旅程変更を考えてみましょう。
実際にやってみると、結構面白い経験ができて、「またやってみよう」と自信がつくところ、行き当たりばったりの旅でも何とかなってしまう、ブロンプトンならではの旅になると思います。
今回は、長距離移動を新幹線と飛行機で行う2つの場合に分けて考えたいと思います。


なお、最初に断っておきますが、「旅とは(人生がそうであるように)自分の思い通りにならないものだ」という前提でこのブログを書いております。
「旅は予定通りに行って当然であり、予定通り行かないのは、(自己も含め)計画した人間が悪い」という考えの方はここから先はご遠慮ください。
もちろん、予定通りに運ぶよう努力することは大切です。
しかし努力したとて、結果が伴うとは限らないのは、人生往々にしてあることでしょう。
そして「当たり前にいって普通」という考え方は、時として傲慢さを産みます。
「人間は間違えることもある」と考えるか、「人間は正しくて当然。誤るのは出来損ない」と考えるのは正反対でしょう。
後者の人間に限って、自己の非は絶対に認めないし、間違えた人に対し「こどで道を誤ったか一緒に考えてみよう」などという言葉掛けも絶対にできません。
間違える可能性についてすら頭から否定しているのだから、当然といえば当然の帰結ですが。


本当の課題は、間違えるか否かではなく、間違えたときにそれをどう糧にするかなのに。
正しいことを当然とする人間は、自分が間違っていることをしている事実が露呈しそうになると、他人に責任を転嫁して逃げてしまうか、いよいよ逃げられないとなると、病気に逃げるか、自殺するかのどちらかです。
本人は太く短く生きているつもりかもしれませんが、なんと卑劣で無責任なのかと思います。
旅も同じことです。
天候以外にも、交通機関の遅延、運休というものは事故以外にも安全のために頻繁に起こります。
トラブルに見舞われるか否かではなく、トラブルに遭遇したときにどう行動するかで、旅人の真価が問われます。
トラブルを誰かのせいにしたり、その補償をすべて自分以外に求めたりするのではなく、楽しむくらいの余裕をもって旅をしたいものです。

(羽田ではこんなに晴れて)
(1)新幹線で行く場合
①途中下車
さて、前回は途中下車をする方法をご紹介しました。
新幹線だって途中下車できますよ。
途中下車ができないきっぷというのは、片道の営業キロが100キロまでの普通乗車券、大都市近郊区間内のみをご利用の場合の普通乗車券、特急券、急行券、グリーン券、寝台券、指定席券、乗車整理券、途中下車が制限されている一部のお得なきっぷ、回数券等々です。
ということは、営業キロが100㎞を超える普通乗車券は途中下車が可能です。
つまり、新幹線の場合、乗車駅で切符を買う際に、乗車券だけは目的地まで買って、自由席でも指定席でも、特急券は途中下車する駅まで買います。
そして、残りの区間について別に特急券を買うわけです。
その分割高になりますが、目的地で雨が降っていて自転車に乗れない以上、これも一つのアイデアです。

(横浜港もよく見えたのに)
但し、途中下車の場合は青春18きっぷなどのフリー乗車券と違い、途中下車した駅から再乗車せねばなりません。
つまり、旧東海道で行ったような尺取虫形式はできません。
だから、例えば名古屋が目的地で当地が雨の場合、手前の浜松が晴れならそこで下車し、サイクリングコースになっている遠州鉄道の廃線跡を辿って三方ヶ原や奥浜名湖にゆき、また同じ道を(バスや鉄道を別料金で支払い、戻ってくるのも可)浜松駅に戻るとか、浜松駅付近から旧東海道を西へ向かって走っても、どこかで別料金にて東海道本線に乗って浜松駅に戻らねばならないということです。
ただ、これも考えようによっては面白く、目的地で雨が降っているからということで途中下車した駅は、天候が良かったら二度と下車しなかった駅かもしれず、そう考えてその街の名所旧跡を巡ると、これまで頭の中では見落としていたものが見えてきたり、思いもかけない発見があったりするものです。

(だんだんと雲が広がって)
②乗り越し
では、目的地までの途中ではなく、目的地の向こうへ行く場合を考えてみましょう。
たとえば京都へゆくのにそこは雨で、大阪は晴れているような場合です。
この場合は、京都までの乗車券+特急券を手元に持っていて、乗車前と乗車後で分けて考えます。
まず乗車前の場合ですが、駅の窓口で乗車変更してもらいましょう。
差額分の運賃と料金を払えば、1回目は手数料なしで変更してくれるはずです。
乗車後の場合は、車掌さんに申し出ます。
同じように、差額を支払えばOKです。
ただ、どちらも指定席特急券は、同じ席に座れるとは限りません。
乗車前の場合、席そのものが変更になりますし、乗車後の場合、たまたまその席が引き続き空いていれば問題ありませんが、京都から先別の乗客が押さえていたりすると、別の席か自由席に移ることになる場合もあります。
大坂から京都まで戻る際は、JR、阪急、京阪と、宿泊ホテルの立地で選べばよいのではないでしょうか。

(伊丹ではこの通り)
(2)航空機(国内線)を利用する場合
飛行機に搭乗して上空へあがると、どんな雨の日も雲の上には太陽が燦燦と照っているのだなと感動することがあります。
そして、天気ごときで一喜一憂している自分の小ささを感じます。
新幹線のように、乗り越しや途中下車できない航空機の場合、さらに工夫が必要です。
まずチェックイン前ですが、空港で目的地と便を変えてもらうという手があります。
たとえば、羽田から大阪伊丹空港までの航空券を持っていて、それを関空への便や神戸空港への便に変えてもらうような場合です。
日本国内では、福岡空港と北九州空港、北九州空港と山口宇部空港で同じようなことができそうです。
(羽田からの航空券を持っているのに、わざわざ成田まで自転車で走って国内線に登場する人は殆どいないでしょうから無視します。
羽田から成田まで走ったら、一日がかりですしね。)
一般旅行客であれば、「ノーマル」と呼ばれる普通運賃を支払っていれば、便、キャリア、路線(の場合は差額を支払って)の変更は自由です。
割引運賃の場合は、運賃毎に変更制限があるので、そこをみます。
なお、鉄道でいう「途中下車」にあたる「途中降機」(ストップオーバーといいます)は、普通運賃の場合、国際線についてはできるのですが、国内線においてはできません。

(晴れ間が出ていても)
次に搭乗後ですが、この場合は目的地の空港で作戦を練りましょう。
というのも、空港には座るところもコンセントもふんだんにあり、Wi-fiも使えるうえに、各地へのバス便が伸びていますから、そこからの旅程変更の計画がたてやすいうえに、動きやすいのです。
或いは、リムジンバスが嫌であれば、空港近くのターミナル駅へバスやタクシー、電車で移動し、そこのファストフード店で旅程を練り直すということもできます。
以前9月に美しい朝焼けをみながら自宅から羽田空港まで自転車で走り、大阪(伊丹)便を利用したときは、現地はあいにくの雨でした。
(本当は梅田まで自転車で走って、両方の空港で自転車アクセスをしようとしたのに)
仕方なく、路線バスに乗って梅田駅まで移動し、コーヒーショップで朝食を兼ねながら、その日に自転車で走る場所を検討しました。
その日の宿泊地は京都三条でしたが、天気予報を確認すると生憎の雨。
しかし、西から天候が回復するとのことで、1時間半もすれば神戸は晴れてくるとのことでした。

(梅田に着くころには土砂降りに)
ということで、阪急全線一日乗車券(1300円)を購入し、梅田から神戸線に乗ると、六甲山が見えてくるあたりから雨がやんだので、芦屋で降りて「田園調布など問題にならないくらい」といわれる高級住宅街の中を走り、ついで神戸の港まで行ってあちこち走りました。
そして夕方近くになって雨が収まったのを見計らい、阪急神戸線で梅田へ戻り、そこから京都戦に乗り換えて四条河原町までゆき、まだポツポツ雨が降っていたので、アーケード街を通って新京極三条に近いホテルに行きました。
こういう場合、荷物は予め京都のホテルに宅急便で送っておくか、梅田駅のコインロッカーに入れておきます。
そのためにも、携行する場合は自転車に乗って背負えるタイプの鞄を重宝しています。
なお、イレギュラーで行った先の街でどこを走ったら良いか分からないじゃないかと考える向きの方もいらっしゃると思いますが、普段から東京及びその周囲の近郊で、ブロンプトン散歩に耐えられるお散歩コースや道を研究していれば、機内や伊丹空港、梅田駅や阪急電車の車内でも、地図を見てどこに行こうか検討をつけることができます。
また、神戸の街は一度西国街道を尺取虫方式で踏破する際に通過していますので、まったく軸の無い街ではありません。
そういう意味でも、日本全国街道旅をしてみることをお勧めします。

こうして書いてきたことは、旅行中の現地中日に雨が降った場合も同じように旅程変更できます。
その場合はホテルのフロントさんに相談するのも良いでしょう。
何といってもロコ(地元民)ですから、人によっては普段自転車に乗って生活しているでしょうし、そういう日常が見たいのだといえば、怪訝な顔をされるかもしれませんが、真意さえ伝われば、よく相談に乗ってくれるはずです。
最期に、最終日(帰宅する日)に雨が降った場合ですが、これはもう、朝お散歩に行くとしても歩いてゆける範囲に留め、傘をかりて雨の目的地を楽しむにかぎります。
チェックアウトぎりぎりまで宿泊施設でゆっくりし、ホテルの送迎システムを使って駅までゆき、そこから鉄道なり航空機などつかって家へ帰ります。
私は天候が不安定な季節は、こうした事態に備え、チェックアウトが11時の宿泊施設を優先的に選んでいます。
雨が降っているからといって、早寝早起き習慣が付いている人が、いきなり旅先で夜更かしや朝寝坊をできるものではありません。
そんな場合は、現地での雨を楽しむのが一番です。
地方都市の場合、アーケードが充実している街があり、そこに面したホテルを取って、アーケードの中を自転車で走って店をまわれば、雨は関係ありません。
また、そんな場所で朝ご飯を食べながら読書をしていると、地元の人たちの生活が垣間見えて、面白いものです。

(しかし神戸は良く晴れていたのでした)
このようにして、畳んでカバーをかけて電車に乗ることで、神出鬼没な動きが可能になるブロンプトンゆえに、雨を避けて旅行を楽しむということができます。
とくに今の世の中のように、情報が発達し、降雨情報がリアルかつタイムリーに手に入り、アプリ上で街の様子や地形の様子が確認できれば、想像力豊かな人であれば、知らない街でも何処へ行ったらよいかが判断しやすいのです。
折り畳み自転車は本物の自転車に比べて云々、金持ちの道楽云々と馬鹿にされることもありますが、折り畳みゆえに、乗り手の創意工夫が要求されます。
ひたすら筋肉を増強してタイムを競うことや、老化を防止するために歯を食いしばって自分との闘いにいそしむだけの人には、この感覚はなかなか分からないかもしれません。

それに、山登りやハイキング、普通の輪行と違い、天候そのもので旅行を諦めるというケースは、ずっと少なくなります。
そのためには、旅先だけでなく、普段から想像力だけでなく、旅程創造力をたくましくして自転車に乗ることだと思います。
雨の日の旅行経験を積めば積むほど、この創造力は磨かれますので、雨だからといって旅行を諦める前に、是非検討してみてください。
(おわり)