04/October/2025
ロンドンから電車とバスを乗り継いでグロスターに無事到着した日の翌日の土曜日、ビアトリクス・ポターの物語のひとつ、『グロスターの仕立屋』のイラストのモデルとなった古い家を訪ねた。そこは現在、ピーターラビット関連の展示と店舗を兼ねたビアトリクス・ポター記念館となっている。日曜日が休業日のため、短い期間の旅行で予定を立てるのにギリギリだったが、なんとかオープンしている日に行くことができた。
滞在しているホテルから歩いて10分ほどで店のある小路を見つけた。小路に入る前の大通りの前方には大聖堂?の塔が見えた。
『グロスターの仕立屋』は、クリスマスにちなんだフェアリーテイル。年老いた仕立屋がクリスマスの朝までに市長が結婚式のお祝いに着るウエストコートを仕立てようとするが、雪の降る夜、ハードワークと寒さで風邪をひいて寝込んでしまい(ハードワークと言うよりは、高齢で腰痛もありヨレヨレの体なのだが生活のために仕事を受注したようだった・・と夕べまたアニメ版を見て思った。なんだか、いずれ自分もそうなるのか?とちょっと現実的に複雑な気持ちになった)、仕立屋は飼い猫のシンプキンに洋服の仕立てに使う足りなくなった糸と食料のお使いを頼む。シンプキンがお使いから戻ると、ティーカップの下に隠しておいたネズミを仕立屋が逃してしまったのを見つけて憤慨し、シンプキンは買ってきた糸をティーポットの中へ隠してしまう。そしてねずみたちは逃してもらったお礼に、仕立屋が寝込んでいる間に、ウエストコートを仕上げると言う面白い話。ずいぶん前に実写版とアニメを組み合わせた古い映像をBSで放送していた記憶があるが、Youtubeでもその動画があったので、クリスマスの時期になると必ず一度は観たくなる。また実写版もあって、そちらにはもう亡くなってしまった名優のイアン・ホルムが仕立屋役で、また、若きジュード・ローも出演している。
アニメ版↓
実写版↓
いつだったかその「グロスターの仕立屋」のイラストのモデルとなった店がイギリスのグロスターに実際に存在すると言うのを知り、いつか行ってみたいと思っていたが、今年その願いがついに叶った。
小路を進んでいくと現れた店先は、確かにビアトリクス・ポターの本に出てくる雪の日の仕立屋の店先の様相をしていて、感動した。そしてその脇にあるゲートをくぐって進むと、グロスター大聖堂にも通じていた。
(写真:記念館の店先と大聖堂に続く小路)
(エドワード二世の墓を詣でる巡礼者が通ったとされるSt Michael’s Gateの壁に掲げられたプレート。ここを通ってグロスター大聖堂へ行ける。ビアトリクス・ポターの「グロスターの仕立屋」がこの門の左側の店に”住んでいた”と書かれている。)
店内に入ると、1階はピーターラビットのおはなしに出てくるキャラクターのかわいらしいグッズやお土産がたくさん並んでいて、その奥には、仕立屋の家の中に似ている、暖炉と食器棚がある居心地の良さそうな空間があった。そこではスタッフが子供に絵本を読んで聞かせていた。
2階への階段を上がって行くと、壁には、ポターとグロスターの関係などが詳しく掲示されていた。なんでも、ポターがグロスターに近いStroudという街の近郊に住む親せきの家によく滞在していたそうで、ある日、そこを訪ねてきた女性客からPrichardと言う名の実在する仕立屋についての面白い話を聞き、ポターはそれをインスピレーションに仕立屋の物語を書いたそう。ポターはこのグロスターにも訪れており、街の風景をよくスケッチしていたので、「グロスターの仕立屋」の絵本には、その風景をもとに描いたイラストが使われたという。展示では、どこの場所を描いていたか、イラストと写真を比較して紹介されていた。
「グロスターの仕立屋」の物語は、ポターが知り合いの病気の少女のために書いたもので、クリスマスプレゼントとして贈られたそうだが、物語に添付された少女宛ての短い手紙には、「最も奇妙なことは、この話をグロスターシャーで聞いたこと、そして、少なくとも「仕立屋」と「ウエストコート」と"No more twist!”(もう糸がない!)については真実だということです」と記してあったそう。
(これが例の?ウエストコート。正しくは、1980年にGloucestershire Federation of Women's Institutes(グロスターシャー婦人協会連盟)が再現したものだそう。)
(実在した仕立屋、Prichardの店が写っている古い写真)
(Westgates Street, Upper Street, Three Cocks Laneが交差するところにあった中世の建物。物語の原稿には猫のシンプキンが夜間徘徊するシーンとして出てくるらしい。)
(2階に上がると、ピーターラビットと仲間たちのさまざまなキャラクターの置物やゲーム、記念品が展示されていた)
(ねずみたちが仕立てを手伝う風景の再現らしい。後で知ったが、コインを入れると人形が動くからくりの展示があったらしい。気付かなくて残念💦)
ビアトリクス・ポターといえば、彼女が暮らしていた湖水地方のヒルトップの記念館になっている家にも20数年前に一度行ったことがあるが、数十年!の時を経て、こちらの場所を知り、実際に訪れることができて本当に嬉しかった。グロスターの街もそれほど観光地というわけではないので、10月ということもあり落ち着いた雰囲気でゆっくりと滞在を楽しめた。

























































