『ほんっとうに海入りたくない。。』


トンケは岩場からじ~っと海を見つめていた。


ドン!

『ぎゃ』

ドボン


『イモ引いてんじゃねぇよ』


鬼夜子はトンケの背中を押し、トンケは海に落ちた。


『げぼげぼ、あぶないじゃないですかげぼげぼげぼ』

半分溺れながらトンケは命綱を触って確認すると…


(いのちづな。ついてない!)

『鬼夜子さ…げぼげぼ命綱!げぼげぼ』


『あ?あーワリィワリィ。かたむすびするの忘れてた。』

と鬼夜子は綱を持って言った。


『アガガガ…げぼげぼ…ごくごく』

波にのまれながらトンケは岩場にたどり着こうと必死に泳いだ。


やっと岩場にたどり着いたトンケは、ワカメを巻き付かせた体を横たわらせた。


『お前、ワカメしか取ってねぇじゃねぇかよ。』


鬼夜子は苛立った表情でトンケに巻き付いたワカメをむしり取り、タコとエイの入ったアミに入れた。


『おい、帰るぞ』


トンケは立ち上がったがすぐにフラフラと倒れた。




携帯ブログBEST100携帯ブログランキング

鬼夜子を見ると何故か上着を脱ぎ始めている。


その下は、フンドシに上はさらしという何ともたくましい姿だ。


ざっぱーん


「鬼夜子さん!!!?」


岩場に立っていたた鬼夜子は、黒く渦巻く海の中に飛び込んだ。


「誰かー!!誰か助けてくださーい!!」


驚いたトンケは必死に周りの助けを呼ぼうと、叫んでいた。

しかし、こんな夜更けにあたりに人はいない。


鬼夜子が飛び込んでから、軽く2分が過ぎていた。


「鬼夜子さん…死んだのかな…」


トンケはガックリとうな垂れて涙を流していた。




その時、



ざっぱーん


「おい、トンケ!!タモ持って来い。」


鬼夜子の野太い声がした。


「え!鬼夜子さんっ!?」


恐る恐る海方を見ると、片手にはタコ、片手にはエイを掴んで、鬼夜子は海面から顔を出していた。


「あー!!鬼夜子さん生きてたんですね!!よかったー!!」


「は?タモもってこいって言ってんのが聞こえねえのかよ」


「あ、すいません!タモですね!」


トンケはタモを用意し、タコとエイをすくい上げた。

鬼夜子は岩場に上がってくるなり、


「次、オマエな。」


と言った。


「え!無理ですよ!!ホント死にますって!!!」


トンケは首を振った。


「ああ、じゃあ置いて帰るけどいいんだな。」


トンケはしぶしぶ服を脱ぎ準備し始めた。


「よかろう。最初はいちお、命綱付けといてやるよ。」


鬼夜子は縄をトンケの腰に巻く。

トンケは覚悟を決め岩場に立った。






『出掛けるぞ』

『え?もう夜ですよ?』

夜八時過ぎ、鬼夜子はトンケに出掛ける用意をするように言った。

小屋から馬を出し、鬼夜子はそれにまたがる。
そしてトンケを後ろに乗せた。


『ハイヤー!!』

ばしっばしっ

馬は走り出す。

馬に乗ることが初めてのトンケは、その大きな震動に『車酔い』ならぬ『馬酔い』をしてしまい、終始嘔気と戦っていた。


『オウエ~。気分悪いです~』

当然鬼夜子は無視。

そのまま走り続けること2時間。

体力、気力共に限界を迎えていたトンケは白眼をむき、意識を朦朧とさせていた。


ヒヒーン!!


鬼夜子は手綱を引くと馬は前足を大きく上げ止まった。

ドサッ

ゴロゴロゴロ


と同時にその傾きによりトンケは落馬していた。


『う。うーん…ここは…』

体を起こし目に映ったのは、大きな黒い波が荒れ狂う、まさに地獄を連想させる海だった。