3: 化学物質過敏症を見落とさないために──各診療科へのお願い | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

病型別の推移
シックハウス症候群との関係
国土交通省「建築統計年報」によれば日本の住宅着工戸数は1965年から急増し、1972〜1985年にピークとなり、年間120〜170万戸に達しています。

これに伴い1980年代からSHSが多発し、1990年代に社会問題となったため、2002年、厚労省は前述の通り室内空気中化学物質濃度の指針値等を提示しました。

そして、2003〜2011年の間、厚生労働科学研究費補助金による3つの研究班を立ち上げました。
以下、最終報告である「シックハウス症候群の診断基準の検証に関する研究」、相澤班が策定した診断基準3)を紹介します(表3)。


当科受診 CS、SHS、電磁波過敏症(以下、EHS)349例 中、SHS で の 発 症 例 は 78 例(22.3%)であり、このうち54例(69.2%)がCS、CS+EHSに 進展していました。

このことから
SHSの本質は家屋や備品に関連して発症したCSと考えます(図
1)4)。

 

電磁波過敏症合併が増加傾向
過去20年間の初診患者数の推移を病型別に図2にまとめました。SHS単独型は2007年以降少なくなり、代わってCS発症型が増加の傾向にあり、SHS発症、CS進展型が少し見られます。

これはカルテの記述から、多くはリフォームによる発症であることが確認できました。

そして、2011年以降はEHS合併CSが増加の傾向にあります。
SHSの漸減は2002年の厚労省の室内空気中化学物質濃度等の提示によるものであることは先に述べました。

CSの増加は洗剤、柔軟剤、香料、農薬などの生活環境の化学物質汚染、そして、EHSの増加はWi-Fiをはじめとした近年の環境における電磁波曝露の急増と無関係ではないと考えます。


患者さんへの対応と治療
問診においては事実のみを時系列で予断なく語ってもらいます。

自宅・職場環境、生育歴、職歴、家族構成など多岐にわたるので1
〜2時間を要しますが、この中で回避と曝露による症状の消長について確認し、反応物と症状をまとめてカルテに記載します。
治療の中心は化学物質の回避の検討につきます。

表4に対策についてまとめました。

具体的には、まず、自宅を安全な環境にすることから始めます。

それが難しければ、安全な部屋を作ります。

過去にシロアリ駆除剤を散布したことがある場合は、次善の策になりますが2階に居住してみます。

防虫剤、ベニヤなどの合板、合成洗剤、香料、接着剤、塗料、家具などは全て排除してください。

つまり、何もない部屋にして症状が出ないことを確認します。

この状態で一つ一つ疑わしいものを部屋に入れて症状の有無を確認します。

押し入れはベニヤ板などの合板であることが多く、アルミテープなどで封止します。

活性炭フィルター使用の空気清浄機は、電磁波過敏症が重度でなければ使用可能です。

また、隣家からの洗剤など化学物質の侵入に備えて目張りなどの対策を講じます。

以上で駄目なら、転居を検討せざるを得ません。
薬物療法が有効か否かに関しては慎重であるべきですが、下記処方(表5)が有効な患者がいることは確かです。

効果には個人差がありますが、試行することは許容されるでしょう。