2:化学物質過敏症を見落とさないために──各診療科へのお願い | 化学物質過敏症 runのブログ

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極めて微量な化学物質でも反応
SHSの場合は、建材、家具から放散される接着剤、塗料などの揮発性有機化合物に曝露して発症しますが、そのうち約70%が、その後、合成洗剤、香料、柔軟剤、漂白剤、暖房の燃料ガス、たばこ、殺虫剤、防虫剤、プラスチックなど、ごくありふれた日用品にも反応
するようになり、日常生活に多大な支障を来すことになります。 

これが典型的なCSです。
このため自宅の化学物質対策を行うことになりますが、職場の化学物質汚染や他人の衣服の残留合成洗剤や農薬散布、野焼き、近隣の新築、排気ガス、工場廃液や排ガス、都市開発、PM2.5、黄砂などの環境汚染への対策は個人では限界があります。

従って、 転職、退職、転居を余儀なくされる場合も決して少なくありません。

特に近年は柔軟剤などの香り付き製品による健康被害が増加しています。

自分の家で柔軟剤を使用していなくても、他の児童の家庭では使っていることがあるため、その臭いで学校の教室に入れない児童も出てきています。

いずれも健康人には許容される程の極めて微量な化学物質に反応しているのです。
また、上記に加え、食品添加物や食品の残留農薬に反応する患者もいます。


症状は多岐にわたる
化学物質が脳に影響を及ぼすため、 非常に多彩な症状を呈しますが(表1)、1人の患者にこのような症状が全て出るわけではありま
せん。同じ化学物質の曝露によっても症状の内容、過敏度は患者によってまちまちです。
また、発症当初は頭痛のみで、数カ月かけて複数の症状を呈す場合もあります。


1999年合意を基準に診断
多 種 類 化 学 物 質 過 敏 症(MCS:MultipleChemical Sensitivity)の定義には国際的な基準として認定されたものはありませんが、本症の特徴をよく捉えたものとして「1999年合意」を推奨します(表2)。

1999年に開催
された米国の国立衛生研究所(NIH)後援のアトランタ会議において、本症を定義するための6項目が示され、臨床環境医89人の合意
事項として決議されました2)。
このうち項目5は基本的には正しいのですが、開発等で地域全体が汚染されている場合、あるいは近隣の住宅から常に化学物質の曝露を受けている場合など、周囲の環境が不良であるときは明瞭でないことがあります。

特に、①発症初期で過敏度が亢進している、②患者自身が化学物質回避対策に習熟していないなどの場合にはこの状態になりやすく、診断に苦慮することがあります。

化学物質汚染の少ない場所、例えば、近隣の100m以上の山で1~2時間滞在してもらうなどを試み、症状改善を確認するのも一法でしょう。

項目6に関しては、先に述べたように、発症時から多臓器にわたる症状を呈さない症例もあることに注意して経過を見てください。
その他、スクリーニングとしてQEESI(QuickEnvironment Exposure and SensitivityInventory)が使用されますが、あくまで主観的な自己記入式の問診票であるため限界があります。

特殊な検査として電子瞳孔計、追従眼球運動などの眼科的検査、静脈血酸素分圧、負荷試験前後の近赤外線酸素モニター、PETなどがありますが、 いずれも研究段階の検査です。

 

女性が男性の約5倍多い
成人においては女性が圧倒的に多いことはほぼ常識的に述べられてきました。 

当科受診の成人例(16歳以上)349例の検討においても、男女比は1:4.82であり、女性が男性のほぼ5倍を占めます。

SHSの場合、女性は家事などで自宅の滞在時間が長いためなどと言われましたが、それだけでは説明できません。

女性が本症に対する感受性が高いと考えるべきです。
ところが、 小児のCSの男女比は1:1.15であり、成人の男女比に比較して有意の差を認めませんでした(p<0.001)。

今後、小児の例数を増やして検討する必要がありますが、成人と小児の男女比の違いはかなり大きなものです。

あくまで仮説にすぎませんが、男児には成人までに軽快・治癒に至る症例が多いのかもしれません。
今後の経過観察が重要と考えます。