9:微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響について | 化学物質過敏症 runのブログ

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5.3 日本の大気環境基準
わが国では欧米の動向を踏まえ,1999年度からPM2.5と健康影響の関連性を明らかにするために微小粒子状物質曝露影響調査を開始し,2007年にその成果を取りまとめて公表した40)。

さらにPM2.5の健康影響に関する国内外の知見を評価するため,2007年に微小粒子状物質健康影響評価検討会を設置し,2008年に報告書を発表した5)。

この報告書では,PM2.5は総体としてヒトの健康に影響を与えることが疫学的・毒性学的知見から支持されると述べている。
環境省では2008年に中央環境審議会大気環境部会に微小粒子状物質環境基準専門委員会を設置し,PM2.5に関して「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準」である環境基準値の指針をまとめた。同報告書6)では,PM2.5の健康影響に関して次のように総括した。
「疫学知見に基づく微小粒子状物質への曝露と健康影響との関連性については,共存大気汚染物質の影響等,多くの不確実性が存在すると考えられるものの,信頼性の高い研究に着目すると,微小粒子状物質への短期曝露及び長期曝露と循環器・呼吸器疾患死亡,肺がん死亡との関連に関する疫学的証拠には一貫性がみられることから,これらの健康影響の原因の一つとなりうると考えられる。
微小粒子状物質への短期曝露と循環器系の機能変化及び呼吸器症状・肺機能変化との関連に関しても多くの疫学的証拠がある。

また,これらの疫学知見の評価と生物学的妥当性や整合性の検討結果を総合的に評価すると,微小粒子状物質が総体として人々の健康に一定の影響を与えていることは,疫学知見並びに毒性学知見から支持されており,微小粒子状物質への曝露により死亡及びその他の人口集団への健康影響が生ずることには,十分な証拠が存在する。」これを受けて,中央環境審議会から環境基準の設定について答申がなされ,2009年9月に環境基準の告示がなされた。
 

長期基準:年平均基準値設定の根拠
微小粒子状物質環境基準専門委員会報告書では次のように整理した。
1. 国内の死亡に関するコホート研究からは,PM2.5濃度推計誤差も考慮して,20μg/m3を健康影響が観察される濃度水準とみなせる。
2. 国外,特に米国における死亡に関するコホート研究からは,15~20μg/m3の濃度範囲を超える領域では健康影響が観察される。

3. 国内の死亡以外の疫学研究からは25μg/m3を健康影響が観察される濃度水準であると考えられる。
4. 国外の死亡以外の疫学研究からは15μg/m3を健康影響が観察される濃度水準であると考えられる。
国内の知見を重視するとわが国では20μg/m3が適当であるが,知見が充実している国外知見から15μg/m3も考慮すべきであると考えられた。

また疫学知見に特有の不確実性が存在することにも考慮され,長期基準として年平均値15μg/m3が最も妥当であると判断された。