3:化学物質過敏症高リスク群と関連因子に関する研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.研究成果
群馬県総合教育センターWEB
http://www.center.gsn.ed.jp/school/gakko.htm
に記載されている高校は87 校であった(2012年4 月現在)。

そのうち回答が困難であると考えられる特別支援学校2 校、居住区域が学校所在地から離れることが多いと考えられる中等教育学校2 校と通信制高校・国立高校の各1 校、家庭での影響要因の検討が難しい全寮制高校1 校、全7 校を除外し、80 校(公立68 校、私立12 校)を調査対象とし、研究協力を依頼した。

その結果、21 校(26.3%)から研究協力が得られた。その後、6,144 名に調査票を配布し、5,775 名から回答を得て(回収率94.0%)、欠損値等がない4,630 名(有効回答率80.2%)を分析対象とした。
(1) 対象者の属性
対象者4,630 名の内訳は、男性2,413 名(52.1%)、女性2,217 名(47.9%)で、学年別では1 年生2,342 名(50.6%)、2 年生1,639 名(35.4%)、3 年生649 名(14.0%)であった。
対象者のうち、アレルギー体質を持つ対象者は症状別に、花粉症61.6%、蕁麻疹30.9%、アトピー性皮膚炎18.2%であった。

また、対象者のうち、0.4%はシックハウス症候群の、0.5%は化学物質過敏症の診断を受けていた。
(2) MCS 高リスク群の抽出
MCS 高リスク群の抽出は、北條のカットオフ値を用いた。

その結果、QEESI のQ1 化学物質曝露による反応≧40、Q3 症状≧20、Q5日常生活の支障の程度≧10、の3 条件が揃った対象者は415 名(8.9%)であった。

以後、この3 条件が揃った対象者415 名を“高リスク群”、その他の対象者4,215 名(91.0%)を“対照群”とする。以下、群別に単変量解析を行った結果を述べていく。
(3) 群間比較
群別に属性、診断/アレルギーの有無、住環境、生活習慣などを比較した結果を表1~表4 に示す。
①性別、学年、専攻、居住地域、高校(表1)
性別、専攻、高校で統計的に有意な差が認められた。

高リスク群が女性である確率は対照群が女性である確率の1.55 倍であったことは先行研究と同様の結果とも言えるが、今回の対象者が主婦ではなく、高校生であるということに注目したい。女性は男性に比べて、主婦として化学物質を放出する家で被曝する時間が長いため、MCS になる可能性が高いのではないかと考えられてきたが、今回の結果は、その他にも何らかの理由が存在する可能性があることを示している。

また、居住地域別では有意差が認められず、高校別で有意差が認められたが、MCS の発症に影響を及ぼすと思われる農薬散布や排気ガス、工場から排出されるガスは、いずれも日中に発生しやすいため、日中の時間帯を過ごす場である高校の所在地がより影響しているのではないかと考えられる。

残念ながら今回の結果は県内80 校中21 校の回答であり、高校の所在地に偏りがみられるため、高校周囲の環境等についての詳細な検討は今後の課題としたい。
②SHS/MCS の診断の有無、アレルギー症状の有無(表2)
SHS の診断を受けていることとMCS の可能性があることには関連性が認められたが、本来、関連があるべき、MCS の診断を受けていることとの間には関連性が認められなかった。

診断・治療を受けて生活を見直し、症状が現れなくなったため、QEESI の点数が低くなったとも考えられるが、この点についてはQEESI の感度やカットオフ値も含め、今後の検討が必要である。

また、診断基準が確立されていない疾患であるため、どのような基準で診断されたかは不明である。

今後は質問紙調査だけでなく、MCS と診断された対象者への面接調査も検討する必要がある。