・休学状態が続く高校生
制汗スプレーで発症
中学、高校と学年が進むと、消臭除菌スプレーや制汗スプレーを使う生徒が増える。
札幌市の高校2年マリさん(仮名、女性、17歳)は、その被害者の一人だ。
マリさんは中学入学のころから、香水・洗剤・タバコ・排ガスなどが苦手になった。
なんとか通学して卒業。私立高に進み、周囲で使用される制汗スプレーにさらされてから、頭痛・吐き気におそわれるようになった。
次第に全身倦怠感・めまい・発熱・関節痛・食欲不振が加わり、通学が困難になった。
事情を説明すると、自分のクラスでは協力が得られたが、他のクラスでは協力してもらえなかった。
体育会系の部活動が盛んで、汗臭さを消すために制汗スプレーを使う生徒が多いのだ。
防塵マスクを着けて通学していたが、症状はさらに悪化し、いまはほぼ休学の状態だ。
大学進学をめざし環境のよいところを探しているが、見つかるだろうか、と不安がよぎる。
教師も“被害者”に
生徒に近づけず、退職
埼玉県の市に住む臨時教員ヒカルさん(仮名、40歳代の女性)は、3年前、あるマンションへの引っ越ししたのが原因で、SHSと思われる体調不良になった。
転居するとややおさまったので、勤めを続けてきたが、一昨年6月に勤務し始めた都立の特別支援学校で、強い柔軟剤臭のする生徒たちに接すると、症状が出て指導するのが難しくなった。
1クラス5~6人しかいないが、生徒の着替えやトイレ介助などで体を密着することが多い。
校外歩行で一斉に虫よけスプレーをかけられるのが、耐えられない。
勤務1ヵ月で、右股関節が激痛で2日間歩けなくなるようなことも起きた。
MCSになったようだと管理職に訴え、生徒たちと接触しない仕事に変えてもらったが、間もなく同僚の教員の柔軟剤や整髪剤にも反応するようになり、更衣室にも職員室にもいられなくなった。
昨年2月に東京の専門クリニックでMCSの診断を受けたころには、食べたり歩いたりする力さえなくなり、任期を2週間残して退職した。
いまは回復に努める日々。
小中高校と特別支援学校の教員免許を持っているので、臨時教員を務めてほしいとの申し出は絶えない。
しかし、「香害」のある職場では働けないと断り続けている。