15:WHO:内分泌攪乱化学物質の科学の現状 | 化学物質過敏症 runのブログ

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ある種の EDC(主に POP、ヒ素、BPA)への成人の曝露と2型糖尿病との関係を示す疫学データは少数ながら存在するが、1 型糖尿病に関するデータはない。

内分泌的機構の証拠は不十分であり、一般的に言ってこの分野全体の研究が不十分である。
免疫障害:ヒトでも野生動物でも、免疫系に関する障害にEDCが関わっていることは次第に明らかになりつつある。

多くの免疫障害は内分泌系と密接な関係があることが十分に確認されており、一部の内分泌経路の障害によって免疫応答が乱され、アレルギー、子宮内膜炎、骨障害、自己免疫性甲状腺疾患、免疫性の癌などを誘発する可能性がある。

これは免疫系と内分泌系がホルモン受容体と免疫信号経路とのクロストークを通じて複雑に絡み合っているためである。

脂質 X 受容体(LXR)およびステロイド X受容体(SXR)が白血球増殖の調節に役割を果たしていること、炎症、免疫性機能障害、免疫性癌と EDCが関係づけられることを示すデータが得られている。
有機塩素系農薬、PCB、有機錫化合物、アルキルフェノール、フタル酸エステル、アトラジン、BPA によって、免疫系と内分泌系の相互作用に関係する受容体神経経路が活性化あるいは抑圧されることがいくつかの動物実験によって示されている。

限られた実験的および疫学的証拠が示唆するところでは、ある種の PCB、エストロゲン、アトラジン、フタル酸エステルは発達期に対する免疫毒性を示し、炎症性または自己免疫性障害のリスクを増大させる。

フタル酸エステルへの曝露が喘息発症率の増加に強い関係があることが、動物実験によって支持されている。

内分泌系の関わる機序は十分考えられるが必ずしも実証されてはおらず、研究されていないものもある。

これらの最近の知見は、免疫系の正常な機能と障害にEDCがどのように影響するか、疾患(特に小児の呼吸器病)の発病に曝露時期がどのように関係するかの解明を速やかに推進する必要があることを示している。
ヒトと野生動物の EDC への曝露:EDC 曝露に関する知識は、EDC と考えられる物質の多様性においても、ヒトおよび野生動物の曝露の経路やレベルにおいても、10 年前に比べて格段に増加している。

たとえば 10 年前の IPCS 資料(IPCS, 2002)では、臭素化難燃化剤は簡単に触れられているのみであり、過フッ化化合物については全く記述されていないが、現在ではこれらに加えて更に多くのEDCがヒトにも野生動物にも見出されている。

EDC への曝露に関して最も重要な知見を以下に要約する。
10 年前と比べて、現在では POP に限らず更に多様なEDC にヒトも野生動物も曝露されていることが一層よく理解されている。

EDC は化学的に多様であり、多くは人工物であって、広範囲の材料や物品に使用されており、食品にも自然界(野生動物)にも人体にも存在している。

またヒト・野生動物・植物による他の人為的化学物質の分解生生物としてEDCが生ずることもある。

ヒトも野生動物も複数の EDC に同時に曝露されており、異種の EDC の協働によって、ヒトと野生動物の健康への悪影響のリスクが増大していることを懸念する十分な理由がある。

特に憂慮すべきは、ヒトと動物とを問わず、受精から胎児発達期を経て育児初期に至る危険性の高い時期にも EDC への曝露は起こっていることである。

また小児は手と口の接触が多く代謝速度も大きいため、曝露量が高い。
現在までに測定されている化学物質の範囲やEDCの種類はごく少なく、氷山の一角にすぎない。

各種 EDCの様々な混合物へのヒトと動物の曝露を一層包括的に評価する必要がある。

EDC の可能性のある物質をすべて測定できる能力を備えることは世界的な優先目標である。理想的には"exposome"、すなわち生涯にわたって起こる可能性のある環境的曝露の詳細なマップを開発するのが望ましい。
食品以外にも屋内環境、電子製品リサイクル、投棄場など新たな EDC 曝露源が見出されている(投棄場は特に発展途上国や経済的転換期にある国で問題となっている)。

しかし材料や物品の化学組成が必ずしも公表されないため、すべての EDC 曝露源を知ることはできない。
EDC は自然現象(海流、気流)によっても貿易によっても全地球的に輸送され、ヒトも野生動物も曝露される。

曝露の傾向やレベルの理解には空間的・時間的モニタリングが不可欠である。このモニタリングには、残留時間の短い EDC をも捕捉するため、ヒトと野生動物(様々な種を含め)の組織のほか、水域その他の環境区画を含めなければならない。

ヒトおよび野生動物の体内濃度は化学物質の使用量を反映する。

いくつかの POP は、禁止されたことによって環境中濃度も人体への負荷も低下した。

対照的に過フッ化アルキル化合物や、禁止された臭化難燃化剤の代替品など、いくつかの新しい EDC のレベルが上昇傾向を示している。