2:多種化学物質過敏症(MCS) における遺伝子型のケース・コントロール研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・MTHFR (メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)は、いくつかのビタミン B (B12 及び葉酸を含む)の代謝にかかわる主要な酵素に信号を出す。MTHFR C677T 多型を持ち、葉酸(folate)の摂取が少ない女性は神経管奇形(neural tube malformations) を持った赤ちゃんを産むリスクが高い。損傷を受けたビタミン B12 代謝は神経学的症状に寄与することがあり、また、著者らは以前に血清ビタミン B12 レベルがコントロールよりケースで高いことを観察していたので、MTHFR C677T 多型遺伝子が調査された。
研究チームは次に、ケースとコントロール間の遺伝子的相違を特定するために設計された統計的分析を実施した。特に研究チームはテストされた遺伝子セットの対立遺伝子頻度(allele frequencies )と遺伝子型分布(genotype distributions)の相違を探した。

何が分かったか?

 マッケオンイッセンらは、MCS の女性と症状のない女性との間にいくつかの著しい遺伝子的相違を発見した。

 特定の遺伝子における対立遺伝子頻度間の相違をテストして、彼らは、CYP2D6 遺伝子において著しい相違(p = 0.02)を、また NAT2 遺伝子において僅かに著しい相違(p = 0.07)を見出した。

 ケースとコントロールの遺伝子型の分布は、CYP2D6 遺伝子(p = 0.02)と NAT2 遺伝子(p = 0.03)の間に著しい相違があった。

CYP2D6 遺伝子(*1 対立遺伝子、CYP2D6 活性度増大に信号を送る)の活性型に同型の女性は、CYP2D6 遺伝子(*3/*5、*4/*4、:4/*5、*5/*5 )の不活性型に同型の女性に比べてMCSになるリスクが3倍高く、オッズ比は3.6で95%信頼区間は1.33-8.5であった(p = 0.01)。

CYP2D6 遺伝子(*1 対立遺伝子)の活性型に異型の女性はまた、統計的有意さは不足しているが、MCS のリスク増大を示した。このパターン、すなわち、同型活性に著しいオッズ比、異型に僅かに著しいオッズ比-は、活性 CYP2D6 対立遺伝子が増えると MCS になるリスクが増大する"遺伝子-用量影響(gene-dose effect)"を示唆する。

NAT2 遺伝子(*4 対立遺伝子)が正常にあり”rapid acetylators”と言われる急速型に同型の女性は、*4 対立遺伝子が欠損する”slow acetylators”の女性に比べて4倍以上のMCSリスクを持ち、オッズ比は4.14(95%信頼区間 1.36~12.64、p=0.01)であった。
 最も印象的な研究結果は、CYP2D6 と NAT2 との遺伝子間の相互作用である。両方の酵素(CYP 2D6 同型活性と NAT2 rapid acetylators 遺伝子型)による急速代謝へ信号を送る遺伝子を持った女性は、遅い代謝型を持った女性に比べて18倍以上 MCS になりやすいようであった(オッズ比18.7、信頼区間2.9-122.5、p=0.02)。

 PONI-55 と PONI-192 遺伝子に異型な女性もまた、そうでない女性よりも MCS になりやすい(PONI-55に対してオッズ比2.05、信頼区間1.04-4.05、p=0.04。PONI-192 に対してオッズ比1.57、信頼区間1.01-2.45、p=0.04)。

 MTHFR-C677T とケース-コントロールとの間には関連性はなかった。

 マッケオンイッセンらは、潜在的な寄与因子(喫煙、出生場所、ビタミン剤の使用など)との統計的関連性は見出さなかった。

何を意味するか?

 マッケオンイッセンらのこの画期的な研究は、MCS の人々はそうでない人々に比べて汚染物質の解毒に重要な酵素に遺伝子的相違があることを初めて示した。それは MCS が身体的な現象であり、懐疑論者が主張する”患者の精神的なもの”だけではないことを明白に示す遺伝子的証拠である。