3:6-クロロニコチン酸が尿中に検出され亜急性ニコチン中毒様症状を示した 6 症例 | 化学物質過敏症 runのブログ

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Ⅱ 結  果
33 人は 4~70 歳の男女で,全員非喫煙者であった。

IC 法で,初診時に 6 CNA が検出されたのは 2 人で,うち 1 人は発症後 24 時間以内,もう 1 人は発症後数日であった。
 発症 24 時間以内に受診した 11 人の初診時および再診時の尿 62 検体のうち,IC 法で 6 CNA を 6 人,9 検体から検出した。

この 6 人(IC positive 群)の初診時および再診時の尿 27 検体を LC/MS 法で分析し,20 検体で 6 CNA を最大 84 . 8 μg/L 検出した(Table2)。

LC/MS 法の定量下限(2 μg/L)以下または同定不能(37 Cl のピークがまったくない)を真の陰性とした場合の,IC 法の感度は 45%,特異度は 100%であった(Table 3)。

最初に 6 CNA を検出した日は,IC 法,初診日 1 人,2 日目以降 5 人,LC/MS 法,初診日 5 人,2 日目以降 1 人で,LC/MS 法による尿中濃度のピークは,初診日 1 人,2~7 日 3 人,7~20 日 2 人であった。
IC positive 群 6 人と,発症 24 時間以内に受診したが IC 法で 6 CNA が検出されなかった 5 人(ICnegative 群),発症 24 時間以降に受診した 22 人(chronic 群)の自覚症状,臨床所見,発症前の状況の比較を行った(Table 4)。

IC positive 群の 100%に頭痛・全身倦怠感,10 Hz 前後の安静時振戦,短期記憶障害(前日の食事内容が思い出せない),JCSI-1 の意識障害,心電図異常(洞頻脈・洞徐脈・間欠性 WPW 症候群のリズム異常,ST 変化,またはQT 時間の延長),83%に動悸,67%に胸痛・腹痛,50%に筋痛がみられ,83%が国産果物を発症前に 1日 500 g以上連日摂取しており,66%が茶飲料 500mL/day 以上を数週間にわたり摂取していた。

全例,果物・茶飲料の摂取禁止と保存的治療により 2~43日で回復した。
 仮の診断基準として,主症状(頭痛,全身倦怠感,手指振戦,短期記憶障害)全部と,副症状(発熱,咳,動悸,胸痛,腹痛,筋痛)4 つ以上,心電図異常(洞頻脈,洞徐脈,間欠性 WPW 症候群,ST 変化,または QT 時間の延長)を設定し,33 人の初診時の症状を検討したところ,すべて該当したのは,ICpositive 群の 6 人のみであった。

IC positive 群のうち,典型的な経過をとった 3 症例を提示する。
Ⅲ 症  例
 〔症例1〕 頭痛,腹痛,胸痛を訴えた34歳,女性。
 事務職で,生来健康であった。3 カ月前から中国産フレーバーティーを毎日 600~1 , 000 mL 飲み,約 2 カ月前から頭痛,不眠,全身倦怠感,焦燥感,日中の眠気,記憶力低下を自覚していた。

発病 4 日前にモモを摂取,発病前日は体調不良でナシ 1 個,緑茶 500 mL のみを摂取した。翌日午後 1 時,昼寝の後から激しい頭痛,腹痛,めまい,動悸,前胸部痛を自覚し,近医を受診したが脳 CT では異常がないといわれた。症状が増悪し午後 4 時に受診した。
 来院時,頭をかかえてうずくまり,会話ができなか っ た。 

血 圧 106/60 mmHg,SpO2 92 %, 体 温37 . 6℃,顔面蒼白,四肢筋の攣縮,著明な手指振戦,膝蓋腱反射亢進,歩行不能で,縮瞳は認めなかった。
心電図で,心拍数 53/min,洞徐脈,Ⅱ,Ⅲ,aVf誘導の ST の盆状低下と R 波のスロープ状下降,T波の平低化,胸部 3~6 誘導の T 波の平低化を認めた。末梢血検査で好中球増多(7 , 630/μL),リンパ球減少(1 , 100/μL)がみられたが,生化学検査では血清 CRP を含め明らかな異常を認めなかった。血清 K は 3 . 9 mEq/L であった。
経 過:嘔吐後,会話が可能となり,腹痛の増悪と腰痛,前胸部痛,筋肉痛を訴えたが,前日以前に何を摂取したか思い出せなかった。

輸液開始後 4 時間で歩行可能となり,抗生物質および保存的内服薬を処方し,茶飲料,果物の摂取禁止を指示し帰宅させた。

第 2 病日以降症状は徐々に改善し,第 7 病日には前日の食事内容を思い出せるようになった。心電図は,第 2 病日に洞リズム,59/min となり,以後安定した。

中国産茶葉からアセタミプリドの検出を液体クロマトグラフィー法で試みたが,陰性であった。
 

〔症例 2〕 高熱と頭痛,全身筋痛に間欠性WPW症候群を伴った 22 歳,女性。
 事務職で,鉄欠乏性貧血とアレルギー性鼻炎の既往がある。

発症の約 2 カ月前からウーロン茶を毎日1~2 L,発症前 10 日間はブドウジュースを毎日飲んでいた。

午前 7 時にナシを半個食べ,30 分後に全身違和感,1 時間後に鼻閉,咽頭狭窄感,全身筋肉痛,腹痛が出現し,2 時間後,頭痛,右下腹痛,呼吸困難,全身筋肉痛と筋肉のひきつれ感が増悪し歩行不能となり午前 9 時に来院した。 

来院時,ぼーっとして,前日に何を食べたか思い出せなかった。

血圧 120/60 mmHg,SpO2 98%,体温 39 . 8 ℃,顔面蒼白,鼻咽頭の分泌亢進,口蓋扁桃の肥大発赤,頸部リンパ節腫脹,手指の著明な安静時振戦,膝蓋腱反射の亢進があったが,縮瞳は認めなかった。

心電図上,心拍数 110/min,I,aVl誘導のデルタ波,1 対 1 の間欠性 WPW 症候群およびペースメーカー移動がみられた。

末梢血検査では,軽度の貧血(Hb 11 . 0 g/dL, Ht 35 . 4%),好中球増多(9 , 600/μL),リンパ球減少(1 , 190/μL),血清CRP の上昇(1 . 12 mg/dL)以外,異常を認めなかった。
経 過:輸液,抗生物質,保存的治療により午後5 時には 39 . 3℃となり,間欠性 WPW 症候群の発生は 2 対 1 から 3 対 1 に減少し,歩行可能となり,茶,果物の摂取を禁止し帰宅させた。第 2 病日,自覚症状が軽減し,心電図は洞リズムとなった。

第 4 病日,循環器科で施行した心エコー上異常はなく,24 時間心電図で期外収縮が上室性 665 個(単源性),心室性 151 個みられた。心拍数は第 25 病日に 78/minとなった。

電子瞳孔計イリスコーダー(浜松ホトニクス製)による検査で,初期散瞳と潜時の延長,正常の最大収縮速度がみられ,交感神経,副交感神経とも緊張亢進の所見であった。〔症例 3〕 クループ様咳と意識障害の 6 歳,女児。 満期安産で,心身の発育は良好,喘息の既往があるが 2 カ月間内服薬なしで寛解中であった。発症10 日前にナシ,7 日前からモモを毎日 1 個以上食べていた。ぼーっとして,咳が出ると,母親が付き添って受診した。
 来院時,意識は JCS I-1,何も話せず,前日の食事内容が思い出せなかった。

血圧 88/46 mmHg,SpO2 92%,体温 37 . 1℃,手指振戦,膝蓋腱反射の亢進があり,クループ様の咳と嗄声を認めた。縮瞳はなかった。

スパイログラムは正常範囲内で,心電図上,心拍数 64/min,洞徐脈であった。
経 過 保存的内服薬を処方し,果物の摂取禁止を指示し帰宅させた。

第 2 病日,咳,頭痛は持続したが,食事内容を思い出せるようになった。

第 19病日に症状は消失,心拍数は 81/min となった。