・Guardian は、今年9月にMP が水道水にも検出されたと報道した*5。
これは、非営利調査団体 orb mediaが科学者らと調査した結果で、世界8か所からの水道水、159サンプルを調べたところ、83%と殆どの水道水から MP が検出された*6。
MP が最も多い地域は米国で94%、低い地域は欧州で72%、また個数は0-57個 /リットルで、平均4.36個になるという。
また魚類からもMP が高い頻度で検出されていることが、世界各地で報告されている。
2016年、東京湾産のカタクチイワシの8割から MPが見つかったと報道された*7。
動物プランクトンは MP を食べるが消化されず、そのプランクトンを食べる小魚、それを食べる上位の魚、魚を食べる動物や人間という具合に、MP の食物連鎖による蓄積が起きている。
MP は、海洋汚染物質を吸着しやすく、海水中の数万倍から百万倍の濃度に濃縮するという。
東京農工大学教授・高田秀重らは、MP を含む魚などを食べた鳥の体内で、PCB など POPs が鳥の脂肪に移行することを確認している*8。MP 自体の毒性はまだ不明だが、原料に含まれる環境ホルモン物質の影響、さらにナノレベルと微小になったプラスチック微粒子の危険性も危惧されている*9。
世界経済フォーラムは2016年、世界のプラスチックの年間生産量は2050年までに、現在の3倍に増え、推計11億2400万トンになると推測した*10。
さらに現在のように生産量の約3分の1が自然界に放出して海洋ゴミとなると、重量換算では海のプラゴミの量は魚の量を超えると発表した。
同フォーラムでは、プラスチックはリサイクルの割合が現在14%と低く、今後は回収とリサイクル、再生可能容器の利用、ゴミ分別収集のインフラ整備、自然界への流出防止を進めるよう勧告をだした。
2017年の国際科学誌では、人間がこれまでに生産してきたプラスチックは累積量83億トンで、その76%が廃棄され、廃棄中リサイクルされたのはたった9%、焼却されたものが12%、ゴミ埋立地や環境中にゴミとして廃棄されたものが79%と、上述のフォーラムの計算よりも約2倍多い総量中約70%が環境中のゴミとなってきたと報告した*11。
このままだと2050年には累積約120億トンものプラスチックがゴミとして廃棄され、環境汚染を起こすと警告し、プラスチックの大量使用を考え直すべきと提言している。
日本ではプラスチックゴミは分別回収してリサイクルにまわすか、可燃ごみとしているが、環境中に放置されるプラゴミも目につく。
どちらにせよ大量消費は問題だ。またリサイクルの大部分はサーマルリサイクルで、燃やしてゴミ発電に使用され、地球温暖化を促進している。
実際に再生利用される場合も、プラスチック原料の有害な化学物質が排気や排水を通じて環境中に放出され、健康障害の原因となる可能性が高い。
私達の身の回りにも、ペットボトルや使い捨てプラスチック容器が溢れ、プラスチックは明らかに使い過ぎだ。
フリースなどの化学繊維は、一着一回洗濯すると排水に MP 繊維が2000本出てくるという*12。メラミンフォームスポンジは使用して削れていくうちに MPとなることも分かっている。
現代でプラスチックを全く使用しない生活に戻ることは難しいが、明らかに方向転換が必要だ。医療用のプラスチック製品など、必要性が高い分野で限定的に使用することが望まれる。
国際レベルでも使い捨てプラスチックを減らす動きが進んでいる。
今年フランスでは、2020年より使い捨てのプラスチック食器を禁止にする法律を決めた*13。
プラスチックのマイクロビーズ(スクラブ)は、欧米では近年化粧品などへの使用は禁止され、日本では2016年になって化粧品会社が自主規制を発表した。
日本も使い捨てプラスチックの減量化、見直し政策を進めることが求められている。
参考資料
*1 https://www.theguardian.com/environment/2017/sep/08/sea-salt-around-world-contaminated-by-plastic-studies,(日本語:
http://rief-jp.org/ct12/72592)
*2 Karami A, et al., Sci Rep. 2017 Apr 6;7:46173.
*3 Iniguez ME, et al., Sci Rep. 2017 Aug 17;7(1):8620
*4 Yang D, et al., Environ Sci Technol. 2015 Nov 17;49(22): 13622-7
*5 https://www.theguardian.com/environment/2017/sep/06/plastic-fibres-found-tap-water-around-world-study-reveals(日本語:
http://rief-jp.org/ct12/72488?ctid=65)
*6 https://orbmedia.org/stories/Invisibles_final_report
*7 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05H0Y_V00C17A9CR0000/
*8 http://pelletwatch.jp/
*9 Bouwmeester H, et al., Environ Sci Technol. 2015 Aug 4;49(15):8932-47.
*10 https://www.cnn.co.jp/business/35076480.html
*11 Geyer R. et al., Sci Adv. 2017 Jul 19;3(7):e1700782
*12 Browne MA. et al., Environ Sci Technol. 2011 Nov 1;45(21):9175-9.
*13 http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/19/france-to-ban-plastic-cups-and-dishes_n_12095320.html