・http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/
出典:私たちと子どもたちの未来のために
・ディート(ジエチルトルアミド)昆虫忌避剤
ディート(ジエチルトルアミド)は安全であると一般に信じられているが、重度の神経障害や皮膚炎などを起こすことが知られている。
直接皮膚に使用する薬物であるので、製品の注意書きを守ることや、着衣の下に使用しないなどの注意が必要である。
湾岸戦争症候群の原因物質の一つとしてディートは疑われており、ディートは他の農薬などと同時に使用すると、単独の化学物質が起こすより、重度の神経障害を招くことが知られている。
ディートを使用する場合、他の薬物に被ばくしない注意が必要である。
カナダでは厳しく規制することになった。
はじめに
ディートは1946年に兵士用に米軍が開発した。一般に安全な物質と考えられていおり、蚊やダニから、及び蚊やダニが媒介する病気(ツツガムシ病や日本紅斑熱など)から個人を防護するためには非常に優れた薬剤である。
また、風土病が蔓延するような地域では特に重要な薬剤である。
殺虫剤や農薬ではなく忌避剤という名称を用いているため、ディートに対して無条件に安全であると信じ込み、不注意な使い方をしがちである。
ディートは稀であるが重症の神経障害を起こしたり、皮膚炎を起こすことがある。
このため、ディートの毒性や使用法について検討する。
名称
ディート、deet、DEET、ジエチルトルアミド、N,N-ジエチル-m-トルアミド、N,N-diethyl-m-toluamide、N,N-diethyl-3-methylbenzamide
急性毒性
ディートは様々な経路で投与した場合、一般に毒性が低いことが動物実験で報告されている(下表を参照)。
動物 経路 毒性
ラット 経口 LD50 2170-3664 mg/kg
ウサギ 経皮 LD50 4280 mg/kg
ラット 吸入 LD50 5.95 mg/L
EPA(1998)より[1]
米中毒防止センターPoison Control Centersの9,086人のディート被ばく事例の分析によると、被爆者の3分の2では症状が現れないか、速やかに回復した弱い症状だけであった。
眼に被ばくした場合と吸入した場合に症状が現れやすい。[2]
経口摂取により死亡と重度の反応が発生したことが報告されている。
多量のディートを飲んだ5症例の共通した症状は共通した症状は昏睡と発作、低血圧であり、摂取1時間以内に現れた。
ディートによる症状の発現は速やかである。[3]
動物実験で、致死量近く投与した場合の中毒症状は、運動失調・振戦・うつぶせになる・平衡失調・けいれん・紅涙 Chromodacryorrhea (ラット)、昏睡状態(ラット、ウサギ)、後肢の伸展(ウサギ)が見られた。[31]
動物実験で、最もよく見られる症状は、体重増加抑制・食物摂取減少・肝臓と腎臓への影響であった。[31]
・ 雄ラットの腎臓で、尿細管の変性、慢性的炎症、尿細管上皮再生が見られた。
この腎臓の変性は2μ-グロブリンの蓄積に関連する。この変性は雄に特有であった。[31]
・ 多量のディートを投与したマウスで、脾臓と腸管膜リンパ節でリンパ系の過形成、唾液腺と膀胱の炎症が見られた。[31]