・催奇形性
ピペロニルブトキシドは指の奇形を生じる。
妊娠ラット(妊娠11-12日)に、 0、630、1065、1800 mg/kgのピペロニルブトキシドを投与した。
指の数の減少と指の癒合・指の数の増加が1065 と 1800 mg/kg投与群で有意に増加し、投与量に関連していた (17)。
マウスでも前足の指の数の減少を引き起こす。妊娠9日のマウスに、0、1065、1385、1800 mg/kgのピペロニルブトキシドを1回経口投与し、妊娠18日に検査をした。
用量依存性に胎児の前足の指の数減少が起こった (18)。
発癌性
動物実験でピペロニルブトキシドの発癌性が報告されている。
初期の研究では、ラットにピペロニルブトキシドを10,000 ppmと5,000 ppmの濃度で餌に混ぜ、2年間投与した場合、腫瘍形成を示すリンパや細網組織の異常増殖が雌ラットに見られている (4)。
マウスとラットにピペロニルブトキシドを 79 週間投与した実験では、100と300 mg/kg/日を投与した雄のマウスと、300 mg/kg/日を投与したの雌で、肝臓重量増加と、腺腫*の発生率増加が見られた (2)。
雄マウスにピペロニルブトキシドを餌に0、0.6、1.2%の割合に混ぜてピペロニルブトキシドを12か月間投与した。
投与した群で肝細胞癌が用量量依存性に発生したが、対照群には発生しなかった。
肝細胞癌の発生率は0.6%投与群で11.3%、1.2%投与群で52.0%であった。
このことはマウスでピペロニルブトキシドが肝細胞癌を発生させることを示す (13)。
雌雄のラットにピペロニルブトキシドを餌に0、0.6、1.2、2.4%の割合に混ぜて2年間投与した。
ピペロニルブトキシドはピペロニルブトキシドは雌雄のラットで投与量に依存して肝細胞癌を発生させた。
肝細胞癌の発生率は、雄で1.2%投与群でさえ26.7%、2.4%投与群で80.8%であった。
雌では57.7%投与群で57.7%であった。
雌雄のマウスにピペロニルブトキシドを餌に0 、0.6、1.2%の割合に混ぜて1年間投与した。
肝細胞癌が投与群で投与量に応じて発生した。
雄では0.6%と1.2%投与の場合、発生率はそれぞれ11.3%と52%であり、雌では1.2%投与で41.2%であった (15)。
発癌性のメカニズムに関しては、ピペロニルブトキシドが、発癌のプロモーションに関係する とし(10) 、その機構として薬剤代謝酵素の誘導や、ギャップジャンクションによる細胞間の情報伝達を阻害すること、肝細胞の壊死などが考えられている (10,11)。
初期の研究では発癌性は認められていなかった。
ラットにピペロニルブトキシドを餌に0.5%と1%の割合で混ぜて2年間投与したが発癌性は確認されなかった (8)。
・変異原性
発癌性の問題に絡んで、変異原性でも見解が分かれている。
人間由来の培養細胞でウワバイン*耐性変異の検出によって、ピペロニルブトキシドが変異原性を持つことを証明した。また、K-rasコドン12変異によっても変異原であることが検出された。
検出された (12)。
チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO-K1細胞を用いて、ピペロニルブトキシドが姉妹染色分体交換と染色体異常を起こすかどうか調べた。
ピペロニルブトキシド (0.25 , 0.3 mM)は、S9*なしで3時間処理後、細胞周期の遅れと、わずかではあるが統計的に有意な姉妹染色分体交換を起こした。
S9の存在下で、ピペロニルブトキシドは核内倍化*を起こす (20)。
ピペロニルブトキシドは、代謝活性化の有無にかかわらず、サルモネラ菌では変異を誘導しない (3)。
ピペロニルブトキシドによる不定期DNA合成は人間の肝臓 (1) やCHO細胞 (3) では起こらないと報告されている。(1,3)
ピペロニルブトキシドはCHO細胞で染色体異常を起こさない (3)。