23:平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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6-2)低濃度ホルムアルデヒドおよびトルエン曝露によるマウス気道粘膜上皮細胞の変化と炎
症細胞の動態についての形態学的検索  
 
研究協力者 佐藤房枝、菊池 亮、欅田尚樹、嵐谷奎一(産業医科大学産業保健学部) 
 
(1)研究目的   ホルムアルデヒドの吸入毒性については、鼻腔内呼吸上皮細胞の線毛の消失や扁平上皮化 生の発生などが報告されている。

今回、マウスを用いて、低濃度ホルムアルデヒド(最大 2000ppb)およびトルエン 50ppm の吸入曝露が気道粘膜上皮に形態学的な変化を及ぼすかどう か、また気道粘膜に浸潤する炎症性細胞の動態を特に肥満細胞(Mast cell)の分布を中心 として検討した。

さらに、OVA 感作アレルギーモデルを作成したが、これらについても吸入 曝露の影響について同様に検討した。 
 
(2)研究方法 マウスはネンブタ?ル麻酔下で失血死させ断頭し、頭部を4%パラホルムアルデヒド/0.1M 燐酸緩衝液(pH7.4)で浸漬固定した。

さらにメタノ?ルで脱脂したのちに Plank-Rychlo 法に より骨組織の脱灰をおこなった。

その後、頭部を4つ(図 1:A,B,C,D)に切り出して型どお りのパラフィン包埋をおこない、標本を作製した。染色は HE 染色と Giemsa 染色、Toluidin blue 染色を施した。 
 
(3)研究結果  3-1 ホルムアルデヒド曝露による上気道粘膜上皮の変化と炎症性細胞の動態  鼻腔の上皮は鼻孔から扁平上皮細胞、多列線毛円柱上皮細胞と杯細胞よりなる呼吸上皮細 胞、嗅細胞へと移行する。

Point.A は鼻孔の扁平上皮から呼吸上皮に移行する部位であり、 Point.B では鼻甲介・顎甲介が出現して鼻腔のほとんどが呼吸上皮で覆われていた。

Point.C は嗅上皮で覆われた種々の内側・外側甲介がみられ、それにより呼吸上皮の占める割合は半 減していた。

Point.D は喉頭へと続く咽頭呼吸器部で内腔はかなり小さくなり、粘膜は再び 呼吸上皮細胞より覆われていた(写真1)。  

粘膜上皮細胞には4Point いずれにおいても、光顕的に OVA+・OVA-ともにホルムアルデヒ ド曝露0ppbと80ppb,400ppb,2000ppb間に違いはみられなかった(写真2)。

粘膜固有層では、 OVA+において一部に好酸球の浸潤が観察された。  

肥満細胞は組織内のいたるところに分布しており、その数を厳密に比較することは難しい。 

今回は、C3H/HeN マウスの鼻孔から喉頭間の4Point において、鼻腔粘膜上皮基底膜直下に限 定して肥満細胞を観察した。

肥満細胞は扁平上皮細胞下ならびに呼吸上皮細胞下に多く分布 する傾向があり、嗅上皮下には少なかった。

統計的には Point A を除いてすべてにおいて肥 満細胞数に OVA 吸入曝露の影響が推察されたが、ホルムアルデヒド吸入曝露による濃度依存 的な有意差はみられなかった(図2~5)。 
  
3-2 ホルムアルデヒド曝露による下気道~肺の変化と炎症細胞の動態  喉頭に続く気管・気管支の内腔上皮は多列線毛上皮であり、主として線毛細胞と杯細胞か らなっている。

上皮細胞はさらに肺側の小葉気管支、終末細気管支となるにつれてしだいに クララ細胞が優位となり肺胞へと移行する。

0ppb,80ppb,400ppb,2000ppb のホルムアルデヒ ド曝露濃度において OVA+/C3H, OVA-/C3H のすべてのマウスに、明らかな上皮細胞の剥離や扁 平上皮化生、腫瘍性変化等はみられなかった(写真3)。

しかし、OVA+ではホルムアルデヒド の曝露濃度に関係なく、気管支から末梢の終末細気管支にかけて著明な杯細胞の増生がみら れた。

さらに、粘膜固有層にも好酸球ほか炎症性細胞の明らかな浸潤像は観察されなかった が、OVA+では気管上皮内に分布する肥満細胞が目立った。