24:平成16年度本態性多種化学物質過敏状態の調査研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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3-3 トルエン曝露による上気道粘膜上皮の変化と炎症性細胞の動態  鼻腔では、呼吸上皮の細胞質内に HE 染色でエオジンに好染した小体が出現する好酸性変 化(写真4)が、各群 5 匹中、対照群の2匹、トルエン単独曝露群の2匹、OVA 単独曝露群 の5匹、OVA・トルエン重複曝露群の5匹に観察された。好酸性変化を示す部分の PAS 反応 は陰性であった。

その他に、トルエン単独曝露群では鼻道の粘膜に組織学的な変化は確認さ れなかったが、OVA 単独曝露群と OVA・トルエン重複曝露群では、呼吸上皮の粘膜下に少数 の好酸球の浸潤が確認された(写真5)。

好酸球の浸潤は、OVA 単独曝露群と OVA・トルエ ンの重複曝露群で同程度であった。

また、OVA を曝露した2つの群において、呼吸上皮領域 に PAS 反応にて陽性を示す粘液物質を含有した杯細胞が多数観察されたが、これはトルエン 単独曝露群でも頻繁に出現し、かなり出現頻度は下がるものの対照群にも同様の陽性像が観 察された(写真6)。

これら杯細胞の過形成には、個体差があった。Toluidin blue 染色にて、 肥満細胞の上皮内への浸潤を検索したが、すべての群において、肥満細胞は上皮下組織に分 布しており、扁平上皮、呼吸上皮、嗅上皮のいずれの上皮内にも肥満細胞の浸潤はなかった。 
 
3-4 トルエン曝露による下気道~肺の変化と炎症細胞の動態  気管・肺の組織においても、トルエンの単独曝露群と対照群との間に組織学的な差はみら れなかった(写真7)。

OVA 単独曝露群と OVA・トルエン重複曝露群では、気管支から末梢の 終末細気管支領域の上皮に著明な杯細胞の増生(写真8)を認めた。

Toluidin blue 染色に て、頭部と同様に気管・気管支上皮内への肥満細胞の浸潤を検索した結果、OVA を曝露した 2つの群に肥満細胞の上皮内浸潤がみられたが、トルエン曝露群ではみられなかった。

OVA 単独曝露群と OVA・トルエン重複曝露群との間で、気管支の杯細胞の増生、炎症細胞の浸潤、 上皮内への肥満細胞の浸潤所見に差はなかった。   

(4)結論  今回の低濃度ホルムアルデヒド(最大 2000ppb)およびトルエン 50ppm の吸入曝露では、マウスにおいて気道粘膜上皮細胞の著明な剥離や扁平上皮化生、腫瘍変化等を生じなかった。

また明らかな炎症性細胞の浸潤もなく、肥満細胞(Mast cell)の分布にも変化はみられなかった。

さらに、OVA の吸入曝露による気道粘膜変化は観察されものの、OVA とホルムアルデヒドの両者による 相乗効果は光顕的に確認されなかった。