4.3有訴者全体と対照者との比較 本症の有訴者にはアレルギー症状を持つ人が多いことは、本症とアレルギー疾患には何らかの関連 があることを示し、本症には免疫系機能の障害が関与している可能性が高いと考えられた。
また、ア レルギーの種類については本調査では調べていないが、石川、宮田(1999)の調査によると、本症の70% 近くの人が眼、鼻、皮膚、呼吸器などのアレルギーを持っているとのことであった。
今後、本症の有 訴者の持つアレルギー症状の種類や重さとの関係についても調査されることが望ましい。
既述の報告でも、本症と免疫系機能の関連を示す報告(Thrasher, 1990)はあるが、それらに一貫性 がないとする報告(Simon, 1993)もあり、免疫学的機序だけで本症の病態は説明できない(Sparks, 1994)と言われている。
免疫系以外の関連を示した本症に関する説明、例えば神経感作の仮説(Bell, 1999)、遺伝子多型性の関与(McKeown-Eyssen, 2004)なども提示されている。
また、医師から本症で ある、またはその疑いがあるとの診断を受けた有訴者の中で、「過去も現在もアレルギー症状はない」 と答えた人が12.2%(18人)いたこと、また有訴者全体の中で本症の発症以前にはアレルギー症状がな かった人も29.8%(83人)いたこと、また対照者にも38.8%にアレルギー症状があったことなどから本 症とアレルギーは区別して考える必要があるといえる。
ライフスタイルについては、有訴者が特に不適切な生活を送っていることはなく、むしろ運動不足、 睡眠不足にならないように努力していると考えられる。
喫煙率の低さから、有訴者は喫煙を避けていると考えられた。
また、本調査では明確にはしていな いが、有訴者の大部分がタバコの煙を避ける傾向があることから、過去に吸っていた6.8%の有訴者は 本症の発症を機に吸わなくなった可能性が高いと思われる。
さらに、有訴者の家族の喫煙率の低さか ら、家族も喫煙を控えていると考えられた。
また、有訴者の飲酒率は低いが、その理由として体調不良のため飲めない、または体調改善のため 飲まない、あるいは遺伝的な要因からもともと飲めない体質である、などが考えられるが、本調査で はこれらの区別は明らかにできなかった。