-10「本態性環境非寛容症(化学物質過敏症)」有訴者の基本的特徴 及び発症原因 | 化学物質過敏症 runのブログ

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5. 結言  本態性環境非寛容症(従来の化学物質過敏症)の被害の低減のため、対策の推進や有訴者への社会的 理解の促進に役立つ情報を得ることを目的に、全国の有訴者488名と対照者279名にアンケート調査 (回答者はそれぞれ278名と165名)を行った。

性・年齢、有訴者が発症前に持っていた本症について の知識の程度、被害年数、アレルギー症状の有無、ライフスタイル、医師の診断の有無、診断地域、 発症原因、改善のための工夫とその改善度等から、主に以下のことを明らかにした。

 (1)有訴者には 40 代から 50 代の女性が多かった。

約半数の有訴者の被害年数は 4 年より長いことが わかり、有訴者が早期に診断を受け、適切な治療を受けたり健康管理を行えるように、本症の診断・ 治療ができる医師の増加や、それらの知識の普及が望まれる。 (2)発症を自覚した以前は過半数の有訴者がほとんどあるいは全く本症について知らなかったことか ら、本症に関する知識が原因で発症した可能性は低いことが示された。 

(3)有訴者が答えた発症原因は、建物の新築・改築・塗装等が約4割で最多であったが、それ以外にも 家庭用殺虫剤等の使用、職業暴露、大気汚染、農薬類の使用、医薬品の副作用、洗剤・化粧品類の使 用、タバコの煙の暴露等多種多様であった。

 (4)有訴者は対照者よりもアレルギー症状のある人の割合が明確に高いことから、アレルギー体質の人 は本症になる確率が高いと考えられる。しかし、医師に本症である、またはその疑いがあるとの診断 を受けた有訴者でもアレルギー症状のない人がいること、逆に対照者でもアレルギー症状のある人が 4割弱いることから、本症はアレルギー症状と区別して扱う必要があることが示された。

 (5)有訴者は対照者と比較して特に不適切な生活を送ってはおらず、喫煙や飲酒は避けていることがわ かり、有訴者のライフスタイルが原因で症状が改善していないとはいえないことが明らかになった。

 (6)本症に対応できる病院・診療所がない地域に住んでいる有訴者は、診断を受けていない人が比較的 多いことが示され、本症の診断・治療をする病院・診療所の全国への拡充が望まれた。 
 
謝辞  本研究でアンケート調査を行うにあたり、調査票作成において環境省の「本態性多種化学物質過敏症 の調査研究」研究班の大井玄氏(調査時所属:独立行政法人国立環境研究所参与)、吉村健清氏(調査時所 属:産業医科大学産業生態科学研究所臨床疫学教室)、宮田幹夫氏(社団法人北里研究所北里研究所病 院臨床環境医学センター)、遠乗秀樹氏(北里大学医学部衛生学公衆衛生学教室)、土屋悦輝氏(環境管理 センター分析センター)から貴重なご意見を頂いた。また、NPO 法人化学物質過敏症支援センターと横浜国立大学浦野・亀屋研究室の皆様にアンケート調査実施において、多大なご協力を頂いた。

ここ に記して深く謝意を表します。