90;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・第Ⅳ部 シックビルディング・
シックハウス症候群の予防
第 8 章 居住者の年齢や季節に
応じた予防 
第8章 居住者の年齢や季節に応じた予防
8.1. 乳幼児など?どもと室内環境をめぐる課題
これまでの章で既に解説されているように、室内環境中の化学物質や湿度環境により引き起こされるシックハウス症候群が日本でも 1990 年代に問題となり、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどの化学物質について室内濃度指針値が厚生労働省により定められました。

その結果、室内の建材や内装材、家具等への使用が減り、近年はこれらの化学物質によるシックハウス症候群は減少しました。

しかし、その他の化学物質ついては、室内濃度指針値などの規制はなく、未だ室内の建材など他、多くの製品に使用されています。

子どもは、成人よりも体重当たりの吸気量は多く、さらに乳幼児は、床を這う、手や物を口に入れるという行動などから、化学物質に対して脆弱(もろくて弱いこと)であるといわれています。

したがって、子どもの背丈から床面までの比較的低い空間に存在する化学物質は、特に子どもにとって重要なばく露源になる可能性があります。以下の項では、未だ室内濃度や建材などへの使用規制や指針値がない化学物質や温度や湿度等の物理学的要因による子どものシックハウス症候群やアレルギー症状に対する予防や室内環境をめぐる課題について紹介します。
シックハウス症候群の有症率は、成人よりも未成年で高く、特にその傾向はシックハウス症候群の鼻症状で強く見られます。

国内外の疫学研究より、住宅室内や学校の教室の湿度環境の悪化が子どもの咳症状や頭痛、疲労感、吐き気等のシックハウス症候群の一般症状、および鼻症状のリスクを上げると言われています。

子どもは日中を学校や幼稚園、保育園など自宅以外の室内で過ごす時間も長いため、自宅以外の室内環境も非常に重要です。

また、教室内のSO2や NO2の濃度が高いことが子どものシックハウス症候群の粘膜症状や鼻症状のリスクになるため、SO2や NO2の発生源となる燃焼性の暖房器具を使用する際には、SO2や NO2等を室内から除去するために換気システムを利用する、または定期的に窓を開けて換気を行うことが必要です。

特に冬季は外の冷たい空気を室内に入れないため換気口を締め切っていたり、また冬季以外にも電気代節約のために換気システムの電源を切っている例が多く見られます。

換気は室内の有害物質を屋外に排出する重要な設備ですので、適正に使用することが必要です。
室内の換気システムについては、『第 6 章 3 節 換気の重要性』で詳しく述べていますので参考にしてください。

SO2や NO2の発生源となる燃焼性の暖房器具には、FF 式(Forced draught balanced Fluetype: 燃焼用空気を室外から給排気筒を通して燃焼用送風機の力で強制的に取り入れ、発生した熱を送風ファンで室内へ送り出し、排気は給排気筒を通して室外に出す方式)や FE 式(Forced Exhaust: 室内の空気を使って燃焼、排気のみ屋外へ出す構造)で燃焼により生じた排気を屋外へ排出する方法があります。

暖房器具の導入の際には、ガスや灯油の燃焼性の燃料の暖房器具ではなく電気の暖房器具を導入する、もしくは、燃料が燃焼性の場合は室内に排気をする開放型燃焼器具ではなく、FF 式や FE 式の暖房器具を導入が望ましいでしょう。

開放型燃焼器具については『第 5 章 5.5 開放型燃焼器具による
汚染とその影響』で詳しく紹介していますので参考にしてください。

その他、室内に喫煙者がいることも子どものシックハウス症候群のリスクとなるため、子どもが生活する空間での喫煙は避けるべきでしょう。同様に室内の湿度環境の悪化、燃焼性暖房器具の使用、換気をしないことがアトピー性皮膚炎や喘息のアレルギー症状のリスクになると言われています。

したがって、子どものシックハウス症候群のみならずアレルギー症状の予防のためには学校や住居の適正な湿度管理および暖房器具や換気システムの導入と使用、または定期的な換気などの室内環境の改善に努めることは非常に重要です。
室内に存在する化学物質のうち、未だ室内濃度や建材などへの使用規制や指針値がない化学物質のひとつに、フタル酸エステル類やリン酸トリエステル類があります。

フタル酸エステル類は、プラスチックを柔軟にし、加工しやすくするために使用される可塑剤ですが、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:
PVC)製品の他、塗料、接着剤、化粧品、薬品等、多くの日用品に使用されています。

リン酸トリエステル類は難燃剤として建材や家具、家電、カーテンなどの内装材に使用されています。

したがってフタル酸エステル類とリン酸トリエステル類は室内に非常に多く存在していることになります。

これらの化学物質は、製品から徐々に揮発し、室内空気としてガス状、およびダストに吸着して存在しています。
分子量の特に小さいものは気中に存在し、分子量が比較的大きいフタル酸エステル類はダスト中に存在するという性質があるため、私たちは、室内環境中で気中やダストからもフタル酸エステル類やリン酸トリエステル類にばく露されています。
前述のように、子どもは、成人よりも体重当たりの吸気量は大人より多く、代謝機能が未熟であ り、さらに乳幼児は、床を這う、手や物を口に入れるという行動などから、子どもは大人と比較して脆弱です。

これらの物質が含まれている製品を室内環境から完全に除去することはできませんが、プラスチック製の家具・内装材や玩具を使用しない、合板にも接着剤や塗料として含まれるため極力使用しないようにする、塗料は天然成分の塗料を用いる等が可能であれば室内環境からのばく露を極力抑えることができるでしょう。

また、電化製品は静電気でダストが付着しやすいためこまめにダストを拭き取る、特に子どもの背丈より低い場所のダストをしっかり拭き取ることは普段の生活でも可能な方法ですので推奨します。