89;科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・7.4.3. 熱環境に関する実測調査
各地の仮設住宅を対象として夏期や冬期に熱空気環境の測定を実施しました。

その中から仙台市の仮設住宅2軒の冬期における三日間の測定例を示します。

これらの住戸では暖房の時期の前に壁に断熱材(宮城県の場合グラスウール 10cm)が付加されており、断熱性能は建設当初よりも高くなっています。
A 住宅(図 7.4.2.)では,開放型石油ストーブを居間で 2 台使用しています。

また、空気清浄機を使用し、換気扇を必要に応じて運転しています。温度の変化は大きく、暖房運転しているときは 25℃程度まで上昇し、明け方は外気温が-5℃位のときに 5℃近くまで下がっています。

また、暖房時における床上 10cm の温度は、他の住宅と比べて低くはありませんが、これは扇風機で空気を攪拌しているためです。

絶対湿度は暖房時に上昇しており、開放型ストーブからの水蒸気の発生によるものと考えられます。
B 住宅(図 7.4.3.)の居住者は,電気使用量を節約するために極力暖房運転を控えています。暖房設備は電気カーペットの上にこたつ机を置き,こたつ布団を被せて暖を採るのみです。

また,厳寒期であっても南北の窓を開けて、定期的に空気の入れ換えをしています。

ただし、聞き取りによれば居住者は特に寒さを問題であるとは考えていないとのことでした。

しかし居間温度は 10℃前後で推移しており寒冷な室内環境であるといえます。
以上の二例を含めて多くの測定結果によりますと、暖房時における室内の温度湿度の状況は、暖房の使用頻度、暖房方式などによって大きく異なることが分かりました。

これらのことは、既に筆者らによる長年の調査研究からも予想されたことですが、同様の建物性能の住宅の間でもこれだけの違いがあることは驚くべきことです。

室内の温度が低いこと、また、室内で温度の高い場所と低い場所があることは、健康を維持する上で問題があるといえます。

十分な断熱性能を確保し適切に温度を維持することが大切です。
 

7.4.4. 仮設住宅内の空気環境の現状
27戸の仮設住宅の居間において8月末から11月中旬にかけて室内の空気汚染の程度を二酸化炭素の測定によって調べました。

それによりますと、二酸化濃度は全体的に高く、1000ppm(オフィスビルの許容濃度)を超える時間の割合が 75%以上となっている住宅が74%に上っていました。

また,最大値が 5000ppm を超えている住宅数は 17 件(63%)、そのうち 5 件では 10000ppm を超えていました。
これらの住宅では開放型燃焼器具(ガスレンジや暖房器具)の使用があったものと推察されました。

このように多くの住宅の多くの時間帯において換気が不足している状況が明らかになりました。
一方で、終日、機械換気を運転している住宅の場合には、二酸化炭素濃度が 1000ppm を上回ることがありませんでした。
次に、27 戸の住宅で訪問時に揮発性有機化合物を測定しました。

その結果によると、中央値が厚生労働省の指針値を上回った揮発性有機化合物はアセトアルデヒドだけでしたが、総揮発性有機化合物濃度(TVOC)の中央値は 2000μg/m3であり、暫定目標値 400μg/m3を大幅に上回っていました。

これらの傾向は新築の住宅における測定結果と同様でした。
更に仙台市内の 40 戸の仮設住宅内で真菌の測定を行いましたが、40 住宅 66 室のうち、45 室(68%)で室内浮遊真菌濃度が目安である 1000cfu/m3を超えていました。

 

7.4.5. 仮設住宅の熱・空気環境に関する課題
仮設住宅の環境的課題、設計法、住まいの工夫についてまとめますと以下の通りになります。
a. 温熱環境の改善
夏季において室内を涼しくするためには、日射の徹底的な遮蔽、通風の確保が必要です。

仮設住宅は狭い敷地に多くの住宅が収容されるために最小限の隣棟間隔しか設けられていませんが、可能な限り隣棟間隔をとることや、連続する住宅の数を減らして通風の得られやすい配置にするなどの工夫が望まれます。

室内が30℃以上に暑くなる場合には冷房を運転し、熱中症の予防に配慮する必要があります。
冬期の室内環境を快適に維持するためには、断熱・気密性能を十分に確保することが大切であり、最低限のレベルとして、次世代省エネルギー基準を満たすことが必要であると考えます。

計画の段階から十分な断熱・気密性能を確保する必要があります。
b. 結露・カビ発生の防止
室内の壁表面が結露し、カビが生えている例が数多く見られました。

結露の防止のためには、換気が第一ですが、洗濯物を室内で干さない、開放型の燃焼器具を用いないなど、水蒸気の発生を抑えることが生活の面では大切です。

しかし換気口が居室に設けられていないケースもみられました。

また、換気口を閉鎖したり、換気扇を殆ど運転しない例も見られました。カビで悩まされている住宅では、室内に家具や寝具、衣類が壁や窓に接して積み重ねられており、壁や床の表面の空気が動かない状態となっています。

湿気はそのような狭い場所にも侵入していくので、スペースを設けて空気の流通を良くすることが結露やカビの発生の防止には重要です。
c. 清浄な室内空気環境の維持今回の測定では、多くの仮設住宅で、二酸化炭素の濃度が望ましいとされる基準を超えていました。
その理由は、換気が不十分であること、暖房用に開放型器具が使用されていることです。

換気扇はトイレ、浴室にも設置されていますが、多くの場合それらはトイレ、浴室の使用時のみ運転されています。
仮設住宅は気密ではないというものの、隙間だらけの住宅とは違うので常に換気扇を運転して換気を行う必要があります。

また、換気口はすべての居室に設置しなければなりません。