・7.4. 仮設住宅の環境と健康問題 1)
7.4.1. 仮設住宅の概要
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、地震や津波によって多くの人々が家を失いました。
それらの人々は、災害公営住宅や自立再建による住宅等が完成するまでは,応急仮設住宅(以下,仮設住宅と略す)などでの生活を強いられています。
合計で約 53,000 戸の仮設住宅が建設されており 2015年 1 月現在でも、39,000 戸、83,000 人が暮らしています。
仮設住宅の建設に当たっては各都道府県知事が必要となる収容施設数を取りまとめて(社)プレハブ建築協会に発注する体制が整えられており、プレハブ建築協会の規格建築部会と住宅部会の会員が施工に当たりました。
その他、(社)日本住宅協会への依頼,地元企業を対象とした公募も実施し、早期に建設が行われました。
図7.4.1.に2DKの平面図の例、表7.4.1.に震災における規格建築部会の仮設住宅の仕様例を示します。
暖冷房設備としては、当初エアコンが一台設置されていましたが、その後、希望に応じてエアコン、コタツ、電気カーペットのいずれかが支給されています。
表 7.4.1.の断熱仕様は岩手県の例です。他の地域はこれに満たない住宅も多く、建設後にそれらの住宅に対しては不十分ながら断熱改修が行われています。
また小屋裏の結露が過去の仮設住宅において問題となったため、原則として小屋裏換気扇が設けられていますが、換気口のみの住戸も多くみられます。
住宅全体からの熱損失の大きさを表す床面積当たりの熱損失量(熱損失係数)は、仙台市のユニット式 2DK 仮設住宅の場合を例にとると、中間住戸で 3.4W/m2K、妻側住戸では 3.6W/m2K です。
この値は東北地方南部の気候条件に対応する新省エネルギー基準(平成 4 年)である 3.3W/m2K よりもやや大きくなっています。
未入居の住宅において気密性能の測定を行ったところ、床面積当たりの相当隙間面積は中間住戸で5.4~5.9cm2/m2、妻側住戸で 6.2~6.3cm2/m2でした。
7.4.2. 室内環境問題に関するアンケート調査
生活の上で問題と感じる点について、筆者らは簡易アンケート調査(2011 年 8 月と 9 月に仙台市内の仮設住宅地12 団地、758 件を対象に仙台市と町内会の了解を得た上で、ハガキを投函し、150 件の有効回答を得た(回収率 19.8%))により尋ねました。
その結果、「居室の暑さ」を指摘した居住者が多く、8 割に上りました。「部屋の広さ」に関しても 7 割を超え、「居室の湿気」、「周囲の騒音」、「虫の侵入」に関しては 6 割の居住者が指摘していました。
「その他」としては、「玄関に屋根がない」、「収納スペースが少ない」、「台所に窓がない」、プライバシーの問題等が挙げられました。
また、詳細アンケート調査(仙台市内 95 世帯、南三陸町 4 世帯の計 99 世帯を対象。
2011 年 12 月までに 80 世帯 181 名からの有効回答を得た(回収率 80.8%))では、夏期における風通しについて、「やや不満」「かなり不満」の回答を合わせると全体の半数近くとなっており、風通しへの不満が目立ちました。
これは仮設住宅の隣棟間隔が狭いことが大きな原因であると推察されます。温熱快適性については、冷房を使用しないときには不満側の回答が 7 割程度と多くなっていますが、冷房を使用しているときは「満足」と回答した割合が 41%となっています。
総合的な温熱快適性に関しては、「不満」、「やや不満」、「どちらともいえない」がそれぞれ 3 割を占めていました。
結露、カビ、水シミの発生に関する調査結果によれば、半数を超える住居で結露が発生しており、部位別では窓・サッシでの発生が50%と最も多くなっていました。
一方、カビ、水シミに関しては 10%程度でした。