6.4.3. 浸水被害への対応
蒸暑気候に開放的な設えを旨として対処してきた我が国の住宅は近年、省エネ・快適をめざ し急速に変化し、基礎周辺の密閉化と断熱化が著しく進んでいます。
一方、地球温暖化の影響 で局地的降雨の増加が危惧され、水害は激甚化傾向にあることから、建物と居住者の健康に大 きな影響を及ぼさないよう適切な対応が求められています。
なお、ここでの「浸水」は特記し ない限り、「津波」に起因するものと「洪水等」に起因するものをまとめて記述しています。
1浸水被害の特性
浸水は、以下に挙げるような被害により地域の人命や物理的・経済的・社会的基盤を損ない、
住民及び地域社会の「健康性」の急激な低下を招くことが知られています。
● 人命喪失・受傷等による身体・精神的被害
● 建造物・都市などの損傷・損壊・流出等と経済基盤毀損による経済・精神的被害
● 短期・中期のインフラ途絶(排水・廃棄の停滞、給水・ガス・電気・水道の停止)
● 構造安全性、居住利便性の低下と不安
● 被災拡大・復旧遅延等の不安
● 清掃・復旧・改修等の労力と経済的・時間的負担 浸水は、堤防整備等による治水措置や地盤かさ上げにより、防止或いは減災が可能な災害です。
しかし、社会資本として莫大な投資と長期間の整備・管理努力を要することから、個人レベ ルでの対処は困難な場合が多い上、そのリスクは多様で、認知されていても解消することはしいことも事実です。
2被災住宅の環境的な問題点
被害には、構造体・財物等の損壊や、内装等の汚損・劣化など認識が容易なものと、躯体内 部の木材や断熱材の含水や菌繁殖に伴う機能・性能低下など、その認知が速やかにできないも のがあります。
なかでも腐朽による耐久性劣化や、微生物繁殖などによる不快や健康影響の発 生には多くの要因が絡んで予測も評価も難しいことから、居住環境に係わる主な懸念状況とそ の機序・要因を列記し整理しておきます。
1) 温熱環境
- 繊維系・吹込み系断熱材などの変形脱落に伴う断熱性能の低下による夏季の暑さ、
冬季の寒さの問題が特に懸念される。 - 清掃・リフォームに際して保温仕様、暖房仕様が変更・省略される場合もある。
- 木質構造・コンクリート・畳・繊維板・土壁等の含水・変形・破損に伴う断熱・気
密性能の低下が室内温熱環境に影響を与える可能性が大きい。 - 6.4.3. 浸水被害への対応
蒸暑気候に開放的な設えを旨として対処してきた我が国の住宅は近年、省エネ・快適をめざ し急速に変化し、基礎周辺の密閉化と断熱化が著しく進んでいます。
一方、地球温暖化の影響 で局地的降雨の増加が危惧され、水害は激甚化傾向にあることから、建物と居住者の健康に大 きな影響を及ぼさないよう適切な対応が求められています。
なお、ここでの「浸水」は特記し ない限り、「津波」に起因するものと「洪水等」に起因するものをまとめて記述しています。
1浸水被害の特性
浸水は、以下に挙げるような被害により地域の人命や物理的・経済的・社会的基盤を損ない、
住民及び地域社会の「健康性」の急激な低下を招くことが知られています。
● 人命喪失・受傷等による身体・精神的被害
● 建造物・都市などの損傷・損壊・流出等と経済基盤毀損による経済・精神的被害
● 短期・中期のインフラ途絶(排水・廃棄の停滞、給水・ガス・電気・水道の停止)
● 構造安全性、居住利便性の低下と不安
● 被災拡大・復旧遅延等の不安
● 清掃・復旧・改修等の労力と経済的・時間的負担 浸水は、堤防整備等による治水措置や地盤かさ上げにより、防止或いは減災が可能な災害で
す。
しかし、社会資本として莫大な投資と長期間の整備・管理努力を要することから、個人レベ ルでの対処は困難な場合が多い上、そのリスクは多様で、認知されていても解消することは難しいことも事実です。
2被災住宅の環境的な問題点
被害には、構造体・財物等の損壊や、内装等の汚損・劣化など認識が容易なものと、躯体内 部の木材や断熱材の含水や菌繁殖に伴う機能・性能低下など、その認知が速やかにできないも のがあります。
なかでも腐朽による耐久性劣化や、微生物繁殖などによる不快や健康影響の発 生には多くの要因が絡んで予測も評価も難しいことから、居住環境に係わる主な懸念状況とそ の機序・要因を列記し整理しておきます。
1) 温熱環境
- 繊維系・吹込み系断熱材などの変形脱落に伴う断熱性能の低下による夏季の暑さ、
冬季の寒さの問題が特に懸念される。 - 清掃・リフォームに際して保温仕様、暖房仕様が変更・省略される場合もある。
- 木質構造・コンクリート・畳・繊維板・土壁等の含水・変形・破損に伴う断熱・気
密性能の低下が室内温熱環境に影響を与える可能性が大きい。 - 内装材・電気設備・配管等の解体・点検・清掃・補修・交換等に際して断熱気密性
が損なわれ、(別貼り防湿シートなどが)復元できない可能性が大きい - 2) 結露
- (既出)繊維系・吹込み系断熱材などの変形脱落に伴う断熱性能の低下により、冬 季の室内側表面温度の低下が生じ、表面結露発生の危険性が増大する。
- (既出)内装材・電気設備・配管等の解体・点検・清掃・補修・交換等に際して、 防湿気密性が損なわれ、復元できない可能性が大きい。
- リフォームに際して、暖房設備が変更・省略され、開放型器具などが導入される場 合もある。含水あるいは乾燥不十分な構造材・下地材などをそのまま用いた場合、 壁内・床下での内部結露発生を助長するおそれがある。
- 通気層・通気口等の清掃が難しい場合、本来の通気・排湿が妨げられ、結露を助長 するおそれがある。
- 3) 室内空気環境とダンプネス発生
- 浸水・含水した内装材・構造材・家具等の使用継続によって、真菌類の繁殖が促され、室内気中の微生物環境が悪化する懸念がある。
- 浸水時に流入・付着した未知の化学物質が内装材・構造材・家具等に残留してい場合、居住時に再放出され、健康影響を及ぼす恐れがある。
- (既出)リフォームに際して、暖房設備が変更・省略され、開放型器具などが導入されることによる排気ガス汚染の危険性がある。