4.2.2. 諸外国の室内空気汚染に対する取り組み
欧州、アジア、北米等の諸外国における居住環境の室内空気汚染に対する取り組みの基本概念は情 報提供です。
その方法には、室内空気質ガイドライン、関係業界等による自主的な建材等のラベリン グ、一般向けのパンフレットやファクトシートなどが含まれています。
有害性が高く幅広く使用され、 深刻な公衆衛生問題を引き起こしていると判断された場合のみ、放散源の規制基準勧告や使用禁止措 置がなされています。
例えば、アメリカ、ドイツ、スウェーデンなどのホルムアルデヒド発散建材の 放散基準に基づく規制、カナダの尿素樹脂系発泡断熱材の使用規制、アメリカのクロルピリホスとダ イアジノンに対する使用規制などがあります。
居住環境の室内空気汚染は、特定の化学物質に高濃度ばく露する事業場内の労働環境とは異なり、 多数の低濃度の化学物質に複合ばく露します。
そのため、特定の化学物質を対象とした法的拘束力の ある規制よりも、情報提供を基本とした誘導的な方策が採用されています。
これらの取り組みは、多 種類の低濃度化学物質による複合汚染であり、その汚染濃度には、換気、建築様式、住まい方、維持 管理、屋外気候などの要因が複雑に関係している室内空気汚染の最大の特徴であると言えます。
a. 室内空気質ガイドライン
欧州、アジア、北米等の多くの諸外国で室内空気質ガイドラインが策定されています。
これらのガ イドラインは、気候風土、生活習慣、建物の室内空気汚染の実態等の各国独自の実態と戦略に基づい て策定されています。
但しアメリカは、室内空気質のガイドラインの策定を行わず、1989 年に連邦省 庁間室内空気質委員会を発足して省庁間の連携をはかっています。
また、室内環境を所管する米国環 境保護庁は、1自ら実例を示して導く、2研究の実施、3教育の提供、4民間の責任の強化など、規 制ではなく誘導的な方策を実行しています。
米国環境保護庁は、そのホームページ上において、室内 空気質に関連する情報を一般向けにパンフレットやファクトシートで多数提供しています。
汚染物質 や汚染源などの基本情報、汚染時の対策、汚染防止方法などが主な内容です。