・1.2. 快適な室内空間とは
1.2.1. 快適空間と熱、空気、光、の環境、並びに本マニュアルで扱う対象人々は多くの時間を室内で生活しています。
住宅では高齢者や幼児が特に長い時間を室内で過ごします。
学校では、児童、生徒らが勉学などのために、またオフィスではワーカーが仕事をするために長い時間を室内で過ごします。
そのような室内の環境は、在室者にとって少なくとも衛生的で快適であり、学校では授業に集中できるように、オフィスでは効率が上がるように作られているべきです。
室内の環境は、物理的な観点からは、熱、湿気、空気、光、音の環境に分類され、それらの環境条件が、人の生理的、心理的な快適性、健康性に大きな影響を及ぼします。
そしてその影響の度合いや最適範囲は在室者側の条件、即ち年齢、性別、健康状態、社会的な背景などによっても大きく異なります。
更に、行為の内容、即ち机に座って仕事をしているのか、動きながら仕事をしているのか、団らんしている時か、寝ている時かなどによっても異なります。
衛生的で快適な環境条件に関する研究については多くの蓄積があり、その成果に基づいて建築物や設備の設計、建設、運用が行われてきています。
しかしながら、例えばシックハウスという言葉が一般化したように、近年の建築物は必ずしも衛生的で快適な環境が実現されているわけではありません。
また、住宅の中での不慮の事故死として、高齢者では浴槽の中での溺死が数として多いことが報告 1)されています。
一方では、暑い夏に室内にいながら熱中症にかかるケースが増加しています。
更に集合住宅で生活している人たちは上の階や隣に住戸から様々な生活に伴う音で悩まされる、或いは太陽の光が隣の建物のガラスなどに反射してまぶしいなど様々な問題が存在します。
以上のように室内では多くの環境的な問題や課題がみられます。
本報告書では、熱的、空気的な環境問題を対象とし、快適で健康な建物を実現する上で必要な基礎的な理論、設計の考え方と方法、建物の使い方、設備の調整の方法や扱い方について解説します。