5:科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・1.1.5. シックビルディング症候群・シックハウス症候群に対する各省庁の対策と今後の課題過去 20 年、我が国のシックビルディング症候群・シックハウス症候群に対して各省庁が対策を行ってきました。

厚生省(現厚生労働省)が事務局となった「快適で健康的な住宅に関する検討会議」で、1997 年 6 月に中間報告としてホルムアルデヒドの室内濃度指針値を公表し、2002 年には厚生労働省による 13 種の室内化学物質濃度指針値が示されました。

2003 年には建設省および引き継いだ国土交通省による建築基準法の改正(建築材料をホルムアルデヒドの発散速度によって区分し使用を制限、換気設備設置の義務付け、天井裏等の建材の制限、防蟻剤クロルピリホスに関する規制など)がされ、また 2009 年には文科省による学校の環境基準の設定、住宅や学校新築時には濃度評価して引き渡すように法制度改正がなされました。

このような有効な規制政策がとられた結果として室内環境中のアルデヒド類やトルエンなど VOC類の濃度は徐々にではありますが減少してきています。
一方、シックビルディング(ハウス)症候群はアルデヒドや揮発性の高い VOCs 等、化学物質によってのみ起こるわけではありません。

最近は世界的に内装材や家電商品の難燃剤などに使用されているいわゆる揮発性が低い準(半)揮発性物質(Semi-Volatile Organic Compound: SVOCs)に注目が集まっています。

厚生労働科学研究でもハウスダスト(家のほこり)中のフタル酸エステル類など SVOCs 濃度が高い住居ほどシックハウス症状を訴えるものが多いという結果が得られています。

高断熱・高気密の住宅で換気不足の場合は湿度環境が悪化し、壁にも結露やカビが発生し、可塑剤が分解し、より低分子で揮発性の高い物質が発生することもありえます。

加えて日本では難燃剤として有機リン系化合物使用は海外よりも多く、今後健康への影響の検証も必要になります。
また、シックハウス症候群有訴を症状別に詳しく見て原因を調べますと、現時点で、シックビルディング症候群・シックハウス症候群、シックビルディング関連病、化学物質過敏症の 3 つの関係は図1.1.1.のように示されます。

シックビルディング症候群・シックハウス症候群とシックビル関連病は、上記に述べた種々の環境要因で症状が起こり原因の除去により数週から数か月の単位で寛解あるいは治癒にいたります。

非特異的な自覚症状が主体で軽いものを一般にシックビルディング症候群・シックハウス症候群と称します。

しかし同じ化学物質(たとえば有機溶剤)にばく露しても濃度が高ければそれぞれの化学物質に特有の中毒症状を起こしますので、これはシックビルディング・シックハウスが原因の産業中毒として労働災害に該当します。

これに対していわゆる化学物質過敏症はシックビルディング症候群・シックハウス症候群が原因かどうかわからないのがほとんどです。

実際に環境濃度を調べても低い濃度であることが多く、また原因と言われる化学物質のばく露がなくなっても症状が持続し、また原因以外の多種の化学物質で症状が誘発されるのが大きな特徴です。

両者の症状や病因の違いに基づくリスク要因の除去を考えながら、健康障害の予防や対策を考えていくことが今後の課題と考えられます。