7:科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・1.2.2. 建物の?途と快適・健康問題
a. 住宅
(1) 空気の質と湿気に関する問題
シックハウスとは、その中にいると頭が痛い、目がちかちかする、皮膚がかゆいなどの症状を起こし、離れると症状が回復するという建物のことであり、室内の空気が化学物質などによって汚染されていることが原因です。

この問題は省エネルギーや快適性の向上等のために建物の断熱性が追及され、気密化されてきたことが原因の一つであり、1990 年頃から問題が顕在化してきました。

その後、膨大な調査研究が実施され、厚生労働省からはシックハウスの原因となる 13 の化学物質の濃度指針値が公表され、シックハウス防除のために建築基準法が 2002 年に改正されました。

その結果、シックハウス問題は下火になりましたが、未だにこの問題に悩まされている居住者は後を絶ちません。
これらの問題を解決するためには化学物質の発生を抑えることと換気を十分に行うことが必要です。
詳細は別の章で述べられます。
また、近年児童のアレルギー症状が増加の傾向にありますが、その一因として室内のカビの発生が指摘 2)されています。

この問題も換気が不十分で室内の湿度が高くなり、結露・カビが発生することから生じます。

このような建物のことをダンプビル(じめじめした建物)と呼んでいます。 

(2) 低温と高温が原因となる問題
住宅の冬期の室温は、地域によりまた部屋の用途により大きく異なります。

北海道の住宅は多くの場合、住宅全体が暖房され快適な熱環境が形成されています。

また北海道以外の寒冷な地域にある都市部の新築住宅では北海道と同じように住宅全体が暖房される傾向になってきました。

しかしながら既存の住宅の多くは、暖房は居間だけで朝と晩の時間帯のみに行われています。

したがって、寝室や浴室・トイレは低い温度のままであり住宅の中で場所による室温の差が生じることになります。

このことがヒートショックの原因となり、浴室内での溺死につながるわけです。

これを防止するためには建物の十分な断熱化、気密化が必要です。
一方、夏期の暑い時期に室内で熱中症に罹る例が増えてきていますが、これを防止するためには日射の遮蔽を十分に行うこと、適切に冷房設備を利用することが必要です。
特に高齢者の場合には、環境の変化に対して鈍感になっていることや抵抗力が落ちていることもその背景にあります。

これらの課題に関しては別の章で詳しく記述されます。
b. 学校
学校の室内環境の調整は、文部科学省「学校環境衛生基準」にもとづいて実施されています。

しかしながら実際には、暖房時に室内に大きな温度のむらが生じる、冷房設備の運転時に換気が不十分である、児童・生徒がシックハウス症候群にかかることがある、など様々な問題が報告されています。
これらの問題の原因としては、断熱気密性能が十分でない、暖房方式が不適切である、換気設備の運転が不適切である、などが挙げられます。これらの問題を解決するためには、断熱改修、設備更新が必要ですが、多くの場合は設備の運用が適切に行われていないことが背景にあります。

したがって、環境を調整する立場にある管理者や教員が、機能を正しく理解したうえで、適切に制御することが重要です。
シックハウス問題に関してはこれまでマスコミなどによっても何度か報道されてきており、現在でも皆無ではないと推定されます。

シックハウスの原因は不適切なワックスや仕上げ材の使用等です。
一方、熱・空気環境と生徒・児童の知的生産性に関する研究が近年進みつつあり、それらの成果を踏まえた環境調整ということも大切になってきています。
c. オフィス
欧米ではシックビルディングが一時期、大きな問題となりました。

その原因は、省エネルギーのために必要換気量を減らしたことであると説明されています。

我が国では室内空気の質を表す総合的な指標である二酸化炭素濃度の基準を、省エネルギーの要請が強かった際にも変更しなかったために、必要換気量を減少させることはなく、シックビルディングについて欧米のような問題は発生していません。

しかし、新築のビルに入居して間もないときに頭が痛い、気分が悪くなるなどの健康上の問題が発生したということは、ときどき耳にすることです。
また、オフィスにおける環境条件と知的生産性に関する研究が近年、急速に進み、例えば、換気量が多いほど知的生産性が向上するなどの成果 3)が発表されています。
更に、省エネルギーのために暖房時や冷房時における快適温度の許容範囲に関する研究が実施され、例えば自然換気を行うオフィスの場合には、空調する場合に比べて温度の快適範囲が広がるといった成果が発表 4)されています。
以上のようにオフィスの場合には、快適性・効率性の向上が環境調整の大きな課題となっています。 

d. その他の建物
快適性・衛生性の問題が議論されるケースが多い建物としては、以上の他に病院、高齢者施設、最近では仮設住宅があげられます。

病院はやや特殊なのでこのマニュアルでは触れていません。

ただし、病院等の医療施設には健康の面から問題を抱えている方が多いことから、医療や感染防止のために固有の要求や制約が環境整備を進める上で課されています。

換気空調方式や設備設計等も特別に配慮し
たものとなることから、通常の建築・設備技術者に管理を委ねることは難しいのが実態です。

従って、医療従事者については労働安全規定、患者等については施設の医療従事者の専門知識が活用されることが望ましいと思います。
高齢者施設における環境上の課題としては、空気質、特に臭いの問題が挙げられます。高齢者施設
における臭いの発生源は、高齢者自身から出る臭い(加齢臭)、排泄物、消毒・薬品などです。

これらの問題を解決するためには換気が最も重要です。

換気量を増やすことはエネルギー消費の増大や快適性の低下につながるために空気清浄機が設置されるケースが多いようです。

この問題に関しては別の章で記述されます。
仮設住宅は、東日本大震災の後に数多く建設されました。居住年数が仮設住宅の場合は 2 年と法律で定められていますが、様々な理由により転居できないケースが多いために、最大 5 年まで認めることに変更されました。

そのため土台が腐朽するといった耐久上の問題をはじめとして、様々な問題が発生しており、室内環境の面でも空気汚染、結露の発生、カビの発生といった問題が生じています。
環境上の問題は、不十分な断熱、不十分な換気が主な理由ですが、結露やカビの発生は多くの家財道具や寝具、衣類を狭い空間に詰め込んでいることが大きな原因です。

これらの問題については別の章で詳述されます。