研究予算
(単位:千円)
H15 H16 H17
サブテーマ1 10,000 11,000 9,500
サブテーマ2 7,500 7,500 8,500
サブテーマ3 2,500 1,500 2,000
合計 20,000 20,000 20,000
総額 60,000 千円
研究成果の概要
本特別研究により以下のことが明らかとなった。
サブ1 脳・神経系における化学物質の影響解析
海馬におけるシナプスの可塑性,神経細胞生存などに重要な役割を果たしているNMDA受容体サブユニット(NR2AとNR2B)の機能は動物の学習行動や記憶機能に密接に関連している。
低濃度ホルムアルデヒド曝露をすると、海馬におけるNMDA受容体サブユニットの遺伝子発現が有意に増加することを明らかにした。
さらに、アレルギーモデルマウスにホルムアルデヒド曝露を行った結果でも、NR2A mRNAの発現増強に働くことが明らかとなった。(図3)
一方、NMDA受容体遺伝子の発現の制御にかかわるドーパミン受容体であるD1とD2遺伝子の発現は、曝露により有意に増加することを明らかにした。
したがって、曝露により海馬におけるNR2A、D1とD2mRNAの発現に変化がみられたことは、低濃度、長期のホルムアルデヒド曝露が海馬において記憶・学習機能に重要な役割を果たしているNMDA受容体を介する記憶形成機構に変調を生じたことを示唆する。
さらに、低濃度ホルムアルデヒド曝露による嗅細胞からの情報伝達系である嗅球、扁桃体でのGABAニューロンの活性化、ドーパミンニューロン系への作用を明らかにした。
また、海馬からの情報交換の場でもありストレス応答領域である視床下部において、そのホルモン情報伝達にもかく乱が起こることを明らかにした。
海馬から扁桃体、視床下部への情報伝達回路の動きを探るために、高周波で海馬破壊処理したマウスに曝露してその影響を解析したところ、扁桃体、視床下部での記憶関連遺伝子の更なる変動が認められた。
化学物質の特異性を調べるため行った低濃度のトルエンの長期曝露では、マウス海馬においてNMDA受容体サブユニットNR2Bの遺伝子発現増強を介して細胞内情報伝達網のアップレギュレーションを引き起こすことを明らかにした。