・3.化学物質としての規制
香料物質は化学物質でもあるため、一般有機化合物として各種法規制の対象となる場合がある。
化学物質を管理する規制として代表的なものには、日本では化審法、米国ではTSCA、欧州ではいわゆるEU 危険物指令がある。
また国内規制に限っていうと、ほとんどの香料は可燃物であるので消防法により可燃物としての規制を受けるほか、安衛法、悪臭防止法、危険物輸送基準、有機溶剤中毒予防規則、毒物及び劇物取締法、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、製造物責任法、(揮発性有機化合物)の規制などが香料と係わりがある。
ただしあくまでもそれぞれの物質としての規制であって、香料として使用される場合の安全性の問題とは切り分けて考える必要がある。
3.1.国内における規制
3.1.1.化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
化審法は、化学物質の安全性確保を目的として1973 年10 月に制定された法律であり、化学物質の安全性審査による規制を盛り込んでいる。
(1)化審法の適用対象となる物質
適用対象物質は、化学物質、すなわち「元素または化合物(天然物を含む)に化学反応を起こさせて得られる物質」であるが、環境汚染やそれに伴う人体への安全性の確保についての規制が主目的であるため、従来より存続する使用用途ごとの化学物質についての詳細な規制と重複する規制とならないように、化審法適用対象外化学物質を明記している。
それによると、以下に該当する物質は下記の各法律を優先し化審法の規定は適用されない。
?? 食品衛生法:食品・食品添加物(含:食品香料)
?? 農薬取締法:農薬
?? 肥料取締法:肥料・肥料添加物
?? 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律:飼料・飼料添加物
?? 薬事法:医薬品・医薬部外品・化粧品・医療用具上記の法律に含まれない用途、例えば、洗剤や芳香剤などは化審法で規制される。
(2)安全性基準
新規化学物質の審査・判定に求められる安全性試験には以下のものがある。
ただし物質の量・性質によりこれらの試験の必要度は異なる。
?? 微生物等による化学物質の分解度試験
?? 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験
?? 細菌を用いる復帰突然変異試験、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、
?? ほ乳類を用いる 28 日間の反復投与毒性試験
?? 藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験、魚類急性毒性試験
(3)香料と化審法の関係
食品香料は食品添加物に該当するため本法の適用除外となっている。香粧品香料については、化粧品や医薬部外品に使用される場合には薬事法の範疇で規制されるが、洗濯洗剤等のいわゆる雑貨に使用される場合は本法の適用下となる。
しかしながら香料物質はあらかじめ用途を限定して開発されるとも限らず、また適用外香料であっても、たとえば監視物質に指定されたものなどについては新たな要件が発生するなどし、その影響を鑑みて業界内で自主規制によりその使用を制限することもある。
また、有用な香料素材としての新規香料化合物は用途を問わず広く使用することが考えられ、したがって香料を開発するに当たってはこの法律を避けて通ることはできないといえる。