自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4 発症しやすさを決める遺伝子背景に「引き金を引く」環境要因
(1)400 以上の自閉症関連遺伝子がつくる遺伝子背景ヒトの病気,障害にはすべて遺伝子が関係する,すなわち遺伝要因がある。

したがって,突然変異などによる遺伝子の変化の有無にかかわらず,遺伝要因が発症の要因の 1 つであることは当然で,あまりにも当然なので普通は強調されない。
確かに,自閉症に似た疾患・障害でも遺伝子変異が発症に直接かかわっている場合は,その家系の遺伝子解析から単一の原因遺伝子が容易に発見されている。

自閉症様の症状を併発するレット症候群の原因遺伝子変異は,DNA のメチル化を抑制して遺伝子発現をかく乱するエピジェネティックな異常に関係する MECP2 遺伝子であった。

また精神発達障害をおこす脆弱 X 症候群の原因遺伝子 FMR1 も MAP1B という細胞骨格関連蛋白などの遺伝子発現を抑制し,樹状突起上のスパインの発達を調節する。

したがって,この遺伝子の変異で新生児期の高次機能にかかわるシナプス形成に異常をおこし,発症すると理解できる。
自閉症 “原因” 遺伝子の発見競争が始まってしばらくたったとき,シナプス結合の接着蛋白・ニューロリジン(Neuroliginの塩基配列変異が発見され,自閉症関連遺伝子で最も有望と考えられた。

しかし,この遺伝子変異もすぐに少数の自閉症児だけに見られることがわかり,さらに,“言語遺伝子” としてマスコミで騒がれた FOXP2 など多くの関連遺伝子候補にも一般性はまったくないことが確定し,現実にも「自閉症“原因” 遺伝子 はない」と,研究者は確信するようになった。

真の原因遺伝子がないだけでなく,この遺伝子変異があれば,かなりの子どもが自閉症になりやすいという,強い自閉症関連遺伝子もめぼしいものはないらしい。

そのような多くの自閉症児に見られる(遺伝的浸透率の高い)共通の遺伝子変異があればすぐに見つかり,その強い関連性が証明されているはずだからである。
自閉症の関連遺伝子,すなわち「発症しやすさ」に関係する遺伝子が非常に多いことは,「神経回路(シナプス)形成不全が発達障害の発症メカニズム」とすれば当然のことである。

すでに 484遺伝子が枚挙されており,表 1 にその主なものの一部を掲げた。

もちろん,この 484 遺伝子の自閉症との関連性の強さは遺伝子によってさまざまで,臨床症状との相関性が比較的高いものから,辛うじて候補と主張する論文があるだけのものまで含んでいる。

しかも今後も,さらに多くの遺伝子が追加されると思われる。
自閉症の発症しやすさの遺伝学的背景は,おそらく数千以上の小さな遺伝子変異の組み合わせで,それら遺伝子群の相互作用による多因子遺伝であることは明らかである。

多因子といっても 2 個や 3 個ではないので,このような膨大な数の遺伝子変異の順列組み合わせは天文学的な数字になり,とても 1 つ 1 つ特定できない。

このようなことは実は古典遺伝学の時代から想定されておりその当時から「遺伝子背景」といううまい表現が使われていた。
詳しく解説するスペースがないが,1 つの関連遺伝子に自閉症発症につながりかねない変異があったとしても,他の多くの遺伝子の働きでカバーされて,簡単には機能が障害されないよう,システム的に頑健(robust)になっていると考えられる。
記憶などの脳の高次機能は動物の摂食,生殖などに必須で,ことにヒトとなると言語や社会性をはじめ,生存して子孫をつくるのに非常に重要で強い淘汰がかかり,このように複雑,頑強に進化したと思われる。
脳高次機能をささえる多様な遺伝子群の発現の微妙さ,環境からの影響を受けやすいことを考えると,高血圧や糖尿病などいわゆる「生活習慣病」と同様「なりやすい体質」すなわち「発症しやすい遺伝子背景」があると理解したほうがよい。