自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・(1)症状の多様性と個性との連続
発達障害児の症状は多様であり,通常は発達障害とは診断されない,いわゆる「引きこもる」「切れやすい」と表現されているような「特定の行動が平均的な子とは異なっている」子どもたちと連続性がある。

発達障害の診断基準を見ても,多くの人々が,その基準項目のどれかに当たる傾向がある。

*1―最近では,自閉症児のもつ多様な症状が連続的で,はっきりと区別するのが難しいことから,『精神疾患の分類と診断の手引(DSM-IV-TR)』(米国精神医学会)で広汎性発達障害としてまとめられていた,自閉性障害,レット症候群,アスペルガー障害などを,2013 年 5 月に改訂される DSM-5 では,レット症候群を削除して,残りを「自閉症スペクトラム障害(AutismSpectrum Disorder, ASD)」としてまとめるらしい。

しかし過去の論文は,特に基礎分野では,いわゆるカナー型(低機能)と高機能自閉症からなる自閉症のみを念頭に置いている向を 1 つ 2 つはもつほどである。

もっと踏み込んで言うと,発達障害の子どもたちは個性の強い子どもたちと連続している。記憶などヒト脳の高次機能を長年研究してきた立場からすると,脳高次機能を支える脳内メカニズムの発達過程における「遺伝と環境の超複雑な相互作用」からいって,この多様性は当然といえる。
これら高次機能を含むヒト(動物)のさまざまな行動は,すべて脳内にできあがった,それぞれに対応する神経回路の活動による。

これら膨大な数の神経回路は,脳の発達に伴い,細胞中のおびただしい数の遺伝子発現(遺伝子が読み出され蛋白質をつくること)に,外界からの刺激による遺伝子発現の変化が複雑に時空間的に重層され,複数の神経細胞(ニューロン)間でシナプスが形成(時には脱落)されて,できあがっていく。

いわゆる「遺伝と環境の相互作用」は胎児期から一生の間続いており(顔が異なるように一人一人がもつ遺伝子塩基配列のわずかな差(遺伝子背景,4 節参照)と,一人一人で当然異なる経験の差が積分され,異なった行動パターン,個性といわれる性格が形成される。
したがって,多くの子どもたちの行動や能力を一定の基準で評価すると,大まかにいって,正規分布に近い形になる。

たとえばよく使われる知能指数(IQ)をとれば図 2A のようになる。

自閉症を調べる指数で多くの子どもを見れば,平均的な子どもは図 2B の点線,自閉症と診断された子どもでは図 2B の実線のようになるという。

自閉症は実際の生活における問題の有無などで診断されるので,自閉症指数で見ると,診断されない子どもと重なる部分がある。

診断が難しい一因で,「子どもは皆一人一人違う」ので当然といえる。
症状の多様性(heterogeneity)とともに発達障害で目立つのは,症状を重ねてもつ子どもがいることだ。

自閉症と ADHD の症状を両方もつ子どもは珍しくない*2。

この合併(併存)性(co-morbidity)も,後で述べる多種の環境化学物質が脳内に時空間的に多様に曝露され,神経回路(シナプス)形成のうち特定のものを阻害するという考えによれば,症状の多様性とともに,当然のことといえよう。なお多くの発達障害は女性より男性に多い。

男の脳に何らかの脆弱性があり,遺伝子および性ホルモンの違いが影響していると考えられる。