・2.危害に関する主な相談事例
※相談事例は、疾病名も含め相談者の申し出に基づくものです。括弧内の属性は相談者の属性で、いずれも被害者(身体にけがや病気等の疾病(危害)を受けた者)と相談者が同じ人である事例です。
(1)本人が使用した柔軟仕上げ剤に関するもの
【事例1】柔軟仕上げ剤を使用したところ、においで気持ち悪く、体調不良になる贈答品であるためもったいないと使い始めた。
洗濯時の柔軟仕上げ剤のにおいで気持ちが悪く、体調不良になる。.家族ともに同じ症状が出る。
この商品は大丈夫なのか。
(2013 年8 月受付、40 歳代、女性)
【事例2】柔軟仕上げ剤を使用したところ、せきが止まらなくなり、医師に複数の薬を処方された
柔軟仕上げ剤を使用し、室内干ししたところ、においがきつく、妻と2 人ともせきが出るようになった。
柔軟仕上げ剤を使用したタオルで顔を拭くとせきが止まらなくなった。
.メーカーに連絡すると、柔軟仕上げ剤を持参して医師の診察を受けるように言われたのでそのとおりにした。
2 人共アレルギーの反応が低かったため、原因不明とのことで、複数の薬を処方してもらった。
(2011 年10 月受付、30 歳代、男性)
(2)他人が使用した柔軟仕上げ剤に関するもの
【事例3】近隣からの柔軟仕上げ剤と思われるにおいで悩まされている
最近、マンションのベランダ側から入ってくる近隣からの柔軟仕上げ剤と思われるにおいで、鼻や喉が痛くなり悩まされている。
ベランダの窓を閉めていても換気口からにおいがする。
(2012 年10 月受付、40 歳代、女性)
【事例4】隣人の洗濯物のにおいがきつ過ぎて頭痛や吐き気がある
隣人の洗濯物のにおいがきつ過ぎて頭痛や吐き気があり、窓を開けられなく換気扇も回せない。
柔軟仕上げ剤のにおいではないかと思う。医師の診察は受けていないが、家族3 人全員同じような症状で今まで特定の物質にアレルギーがあると言われたことはない。
(2013 年6 月受付、40 歳代、女性)
【事例5】飲食店の店員からの柔軟仕上げ剤のにおいで、食べたい気持ちがなくなってしまう
皆が柔軟仕上げ剤を使い過ぎてそのにおいに過敏に反応して気持ちが悪くなる。
特に、飲食店で柔軟仕上げ剤のにおいがする店員に運んで来られると食べたい気持ちがなくなってしまう。
(2012 年6 月受付、50 歳代、女性)
【事例6】頭痛や気分が悪くなる。化学物質過敏症に苦しむ人がいることを知ってほしい
最近、香りが長く継続するような柔軟仕上げ剤が販売され使用している人が多く、近隣の洗濯物や電車内等で、香り付きの柔軟仕上げ剤の香料によって頭痛や気分が悪くなることがある。
化学物質過敏症に苦しむ人がいることを知ってほしい。
(2012 年8 月受付、40 歳代、女性)
3.柔軟仕上げ剤のにおいの成分について
一般的に、製品のにおいの元となる香料成分は、数千種類あるとされ、事業者はそれらをブレンドして特徴のある香りを作っています。
この香料成分を製品から逆にたどって、使用されているものを特定し、含有量を測定することは大変難しいものです。
2012 年に消費生活センターの依頼により実施した商品テストでは、柔軟仕上げ剤を使用した洗濯物を干した際の室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の分析データから、成分の同定を試みました。
ほとんどの成分は同定できませんでしたが、いくつかの成分は香料原料や香料の溶剤等として使われる化学物質と推定されました。
さらに、洗濯物を干した際の室内空気質の状態をみるため、強い芳香のある柔軟仕上げ剤、微香タイプの柔軟仕上げ剤を使用した場合、そして柔軟仕上げ剤を使用しない場合について、室内空気中の総揮発性有機化合物(TVOC(注8):Total Volatile Organic Compounds)を調べました(注9)。
その結果、柔軟仕上げ剤を使用しない場合と微香タイプの柔軟仕上げ剤を使用した場合ではそれぞれ約20μg/m3 上昇しましたが、強い芳香のある柔軟仕上げ剤を使用した場合では約70~140μg/m3 上昇しました(注10)。
(注8)TVOC には、香料成分等のにおいのある成分も、においのない成分も含まれています。
(注9)それぞれ標準使用量の柔軟仕上げ剤を使用した洗濯物約2kg を、容積35.0 ㎥(約8.7 畳)、換気回数約0.7 回の室内に1 時間干した後のTVOC の室内空気中の値を調べました。
なお、相談の多くは、隣家などの他人が使用した柔軟仕上げ剤のにおいについての相談であるので、屋外に干した洗濯物から放散され室内に入ってくるものについてテストするのが望ましいのですが、揮発性成分については、温度、風向き等により大きく異なることが予想されるため、テストの再現性を優先し、室内に干した場合についてテストしました。
(注10)厚生労働省が定める室内空気質のTVOC暫定目標値は400μg/m3とされています。
この数値は、国内家屋の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した値であり、室内空気質の状態の目安として利用されることが期待されています。
TVOC暫定目標値は、毒性学的知見から決定したものではなく、含まれる物質の全てに健康影響が懸念されるわけではありません。(厚生労働省:シックハウス対策「室内濃度指針値一覧表」
http://www.nihs.go.jp/mhlw/