3.感作性
イソシアネート製造工場、発泡ポリウレタン製造工場、ポリウレタン加工工場などの疫学調査や肺機能に関する各種検査で呼吸器感作性があることが確認されている。
ポリイソシアネートと血漿中タンパクとの抱合体が形成され、その抱合体がアレルゲンになってアレルギーを起こすと考えられている。
アレルギーのタイプは、IgE、IgG両者ともに関係するが、イソシアネート特異IgE、IgGと関係するわけではないようである。
発症タイプは液性アレルギーと細胞アレルギーの両方の性質を持ち、即時性反応、遅延性反応、その両性反応の3種類ある。
暴露から発症までの時間はイソシアネートの種類によって異なる。
流通しているイソシアネート材料は何種類かのイソシアネートの混合物に、さらに溶剤や硬化剤、その他の物質を混合したものなので、複雑な発症をする。
1種類のイソシアネートに感作が成立すると、他の種類のイソシアネートにも交差反応で反応する。
イソシアネートの接着剤を使った木材チップボード製造工場の工員186名中8人は過敏性肺炎をよく起こし、イソシアネートとアルブミン抱合体に対する特異IgEとIgGが検出され、抱合体の皮膚刺激試験が陽性であった。
努力肺活量FEV1 とFVCの低下があり、血中の好中球は増加した。
鋳造工場で感作していて死亡した作業員の肺臓は、上皮の剥離、粘膜への好酸球/好中球に浸潤、気管支の拡張、浮腫、肥厚、および平滑筋の不揃いなどが見られた。
感作を起こす限界濃度は作業環境の平均濃度TWA(1日8時間、1週40時間)で0.005ppmとされていて、それを一般環境(1日24時間、連続)に換算すると0.0002ppmになる。
しかし、感作を起こすのは、平均濃度や全暴露量よりも、最大暴露濃度が支配することも知られている。
作業環境では、最高濃度が0.02ppmを超えないこと、作業時間の15%が0.005ppmを超えないことが推奨されている。
外国の一般環境の目標では0.0002ppmなどが提示されている。
4.短期毒性、慢性毒性
呼吸器への直接刺激
喘息
慢性的肺閉塞症
過敏性肺炎(肺内部のアレルギー)
肺虚弱症候群(大出血性肺炎、肺の中で音を立てる)
イソシアネートによる喘息
1.アレルギーの前歴がない。
2.イソシアネート暴露がある。
3.暴露の場所で再発する。
4.暴露の場所を離れると、よくなることが多い。
5.一度過敏になると、次からは刺激がないレベルのイソシアネートでも再発する。
6.慢性では、頻発する喘息が、暴露の場所と離れたところで、イソシアネートと無関係の特別でない刺激で起きる。
皮膚への影響直接触れると痛み、腫れ、発赤、水泡ができる。
アレルギーの感作が起き、気道に過敏性が起きることもある。
目への影響刺激と流涙があり、ときにははっきり見えなくなる。
目に入ると痛くて角膜を痛める。
神経系への影響酔ったような感じ、感覚が鈍り、平衡が取れない。
ポリウレタンの火事の際、消防士は、それらの症状が治るのに4年かかった。
吐き気、嘔吐、腹部の痛みが時々あった。
炭化水素溶媒とイソシアネートMDIがある工場で約半年間働いて行動が変わったと認められた5人について調べたものがある。
以前は炭化水素だけを使っていて何らの変化はなかったが、イソシアネートを使うようになってから異常が現れた。
主観的な症状として、呼吸量の低下、頭痛、気が沈む、苛立ち、健忘、言葉が出ない、集中力・計算能力の低下、などがあった。
呼吸器への影響と違い、動物実験で確かめにくい障害なので詳しく調べた報告は少ないが、イソシアネートのMSDSには反復暴露の全身毒性としてこのような神経症状が記されている。