2 「学校環境衛生基準」について
「学校環境衛生基準」については、文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/component/
b_menu/other/_icsFiles/afieldfile/2009/04/01/1236264_9.pdf)からダウンロードできます。
【参考】
学校における衛生検査は、学校の施設規模によって「学校環境衛生基準」のほか、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和45年法律第20号。
以下「建築物衛生法」という。)に基づく「建築物環境衛生管理基準」に従って、空気環境の調整、給排水の管理、清掃及びねずみ等の防除について維持管理する必要があります。
学校教育法第1条に規定する学校では、1棟当たりの延べ面積が8,000㎡以上の校舎等が建築物衛生法の規制対象となり、専修学校などの学校教育法第1条に規定される以外の学校は、1棟当たりの延べ面積が3,000㎡以上の校舎等が建築物衛生法の規制対象となります。
なお、建築物衛生法の規制対象となる学校においては、「学校環境衛生基準」と「建築物環境衛生管理基準」で同じ項目についての基準値は、厳しい方を遵守していただく必要がありますので留意してください。
(1)教室等の環境における揮発性有機化合物の基準
「学校環境衛生基準」の教室等の環境における揮発性有機化合物の濃度の判定基準は、下表のとおりです。
表 教室等の環境における揮発性有機化合物
ホルムアルデヒドに関しては、厚生労働省及びWHO専門家委員会が、ヒトの感覚器に対する刺激を防ぐことを指標として30分平均値で100μg/㎥を指針値としていることを考慮し、「学校環境衛生基準」においても短期間のばく露によって起こる影響に対する指標として設定したものです。
また、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン等の値は、長期間のばく露によって起こる毒性を指標として策定した厚生労働省の指針値と同じ値を採用しています。
したがって、「学校環境衛生基準」の基準値を超えても直ちに、人体に影響が出るとは考え難いものの、健康的な学習環境を確保するためには可能な限り有害な化学物質の室内濃度の低減に向けた努力が必要です。
特に、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息をはじめとするアレルギー関連疾患の既往等があり、皮膚・粘膜の防御機能に障害ある者については、当該基準値を上回る濃度でのばく露が持続した場合、皮膚や粘膜の症状が増悪するおそれがあることに留意することが必要といわれています。
(2)揮発性有機化学物質の定期検査
① 検査時期及び回数
定期検査では、毎学年1回、ホルムアルデヒド及びトルエンの測定を行います。
ただし、これらが著しく低濃度であれば、次回からの測定を省略することができます。
また、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン及びスチレンは、必要と認める場合に測定します。
必要と認める場合とは、パラジクロロベンゼンを便所の消臭剤として使用している場合など、これらの揮発性有機化合物の発生が懸念される場合です。
検査の時期については、教室等内の温度が高い時期としていますが、これは温度の上昇に伴い室内のホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物の濃度が高くなる傾向があるためです。
すなわち、冬期においても、寒冷地では、常に暖房を使用し室内温度が上昇する可能性があること等から、地域の実情に応じて必要性を考慮し、検査を実施することが考えられます。
② 検査方法
• 検査場所
普通教室、音楽室、図工室、コンピュータ教室及び体育館等の必要と認める教室等が検査対象となります。
• 採取方法
採取は、午前8時から午後5時までの通常、授業を行う時間帯に行います。原則として児童生徒等が在室していない状態での採取が勧められます。
その場合、30分間窓を全開放し換気を行った後、5時間以上部屋を閉め切った後に空気の採取を行います。
やむを得ず、授業を行っている等、児童生徒等が在室の状態で空気の採取を行う場合は、通常の授業時と同様の状態で、壁面から1m以上離れた場所を選びます。
採取時間は、吸引方式では30分間(検体は午前と午後それぞれ1回以上採取する)であり、拡散方式では始業から終業まで8時間以上で1回です。
また、ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物の濃度は外気の影響を受けていることもあるため、外気の濃度も測定しておくことが勧められます。
• 測定方法
ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物を活性炭等で一定時間吸着させた後、ホルムアルデヒドは高速液体クロマトグラフ法で測定し、その他の揮発性有機化合物はガスクロマトグラフ-質量分析法で測定します。.
なお、トルエン及びキシレンは、ガスクロマトグラフのみで分析してもよいとされています。
なお、ホルムアルデヒドに関しては、近年、測定器が開発され、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則」(昭和46年厚生省令第2号)に基づき「厚生労働大臣が指定する測定器」として定められている測定器もあります(http://www.mhlw.go.jp/ bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/03.html参照)。
(3)揮発性有機化学物質の臨時検査
学校施設の新築・改築・改修及び机・いす・コンピュータ等の新たな学校用備品の搬入によりホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物が発生するおそれがあるときには、臨時環境衛生検査を実施する必要があります。