-2:健康的な学習環境を維持管理するために-学校における化学物質による健康障害に関する参考資料- | 化学物質過敏症 runのブログ

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・第1章 「シックハウス症候群」及びいわゆる「化学物質過敏症」について
1 「シックハウス症候群」について

(1)「シックハウス症候群」の症状

 症状は多彩であり、具体的には、皮膚、眼、鼻、咽頭等の粘膜の刺激症状、頭痛、頭重、めまい、吐き気、嘔吐、倦怠感、皮膚の発疹等の訴えが比較的多いといわれています。

(2)「シックハウス症候群」の発生要因

① 化学物質

 住宅の建材や内装材から放散する揮発性有機化合物等の化学物質は、空気中濃度が高くなることにより刺激症状や中毒症状等の健康障害を引き起こすことがあります。症状の発現に比較的個人差が少なく、集団発生することがあります。しかしながら、原因となる化学物質が明確になりやすく、原因物質の除去等により症状がすみやかに消失するといわれています。

② 化学物質以外の要因

 眼、鼻、咽頭の刺激症状や皮膚の発疹等は、温度、湿度及び気流等の温熱環境の因子並びに花粉、ダニ及び真菌のような生物学的な因子が症状の発症及び増悪要因となることが知られています。

これらは、アレルギー疾患や感染症等の患者においても高頻度に認められる症状です。

 また、頭痛、頭重、めまい、吐き気、嘔吐及び倦怠感等は、様々な疾病により生じる症状であり、疾病でなくても温熱環境因子、照度、騒音、振動等の物理的環境因子等の変化及び精神的ストレス等によっても生じることがあります。

2 いわゆる「化学物質過敏症」について

(1)いわゆる「化学物質過敏症」とは

 近年、これまでの化学物質による中毒症状やアレルギー疾患の増悪といった既存の疾病概念では説明不可能な極微量の化学物質のばく露により生ずる健康障害が存在する可能性が指摘されています。

 国際的には、上記健康障害に対してCullenが提唱した「MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)」の名称が一般に使用されています。

 しかしながら、1996年2月にベルリン(ドイツ)で開催された国際会議 1)において「MCS」について既存の疾病概念では説明不可能な環境不耐性の患者の存在が確認されていますが、「MCS」という用語は因果関係の根拠なくして用いるべきではないとして新たに「IEI(Idiopathic Environmental Intolerances:本態性環境非寛容症)」という概念が提唱されています。
1) 本会議は、IPCS(国際化学物質安全計画:UNEP、ILO、WHOの合同機関)、ドイツ連邦厚生省等の主催で開催されているが、

   示された見解については必ずしも主催機関の公式見解ではないことに留意する必要があります。
参考:「MCS」の定義(「コンセンサス1999」 2)から)

① 再現性を持って現れる症状を有する。

② 慢性疾患である。

③ 微量な物質へのばく露に反応を示す。

④ 原因物質の除去で改善又は治癒する。

⑤ 関連性のない多種類の化学物質に反応を示す。

⑥ 症状が多くの器官・臓器にわたっている。
 国内では、「MCS」に相当する病態を表す用語として「化学物質過敏症」の名称が使用されています。

(2)いわゆる「化学物質過敏症」の症状

 症状は多彩であり、刺激症状(結膜炎、鼻炎、咽頭炎)、皮膚炎、呼吸器症状(気管支炎、ぜん息)、循環器症状(動悸、不整脈)、消化器症状(胃腸症状)、自律神経症状(異常発汗)、精神症状(不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化)、中枢神経症状(痙攣)、頭痛、発熱、疲労感等が同時に又は交互に出現するとされています。

3 本資料における用語の使い方

 本参考資料では、「シックハウス症候群」3) を児童生徒等及び職員の健康を維持するという観点から問題のある教室等において見られる健康障害の総称として捉え、特に揮発性有機化合物による健康被害の発生の予防対策を第2章において解説を行っています。

また、第3 章では、学校内において児童生徒等及び職員に「シックハウス症候群」と考えられる健康障害が発生した場合の基本的な対応策についてまとめています。

 いわゆる「化学物質過敏症」については、その病態や発症機序が明確になっていないことが多く当該症状を定義することは現状では困難であるものの、本参考資料では「環境中の種々の低濃度化学物質に反応し、非アレルギー性の過敏状態の発現により、精神・身体症状を示すもの」と捉え、その症状を有する児童生徒等に対しては第2章における「シックハウス症候群」に対する学校における予防的な取組では対応ができない場合が想定されるため、第4章において個別の対応に対する基本的な考え方を示しています。
2) 1999年に米国の研究者34名の署名入り合意文書として公表されたものです。

3) 平成16年4月に健康保険による診療保険請求の疾病名として「シックハウス症候群」の使用が認められており、「化学物質   過敏症」の使用についても平成21年10月に認められました。