健康的な学習環境を維持管理するために-学校における化学物質による健康障害に関する参考資料-
平成24年1月
文部科学省
はじめに
児童生徒等が多くの時間を過ごす学校においては、室内空気質による健康障害を発生させない予防的な取組が最も大切であり、文部科学省では、これまでに児童生徒等の健康に影響を及ぼす可能性のある化学物質による室内空気汚染に関する対策に取り組んできました。
国内では、学校の教室等における室内空気質による健康障害の総称に対して「シックハウス症候群」の名称が用いられ、また極微量の化学物質に反応する場合にはいわゆる「化学物質過敏症」の名称が用いられていますが、それら名称を巡っては、いまだ両者を混同して使用される等の混乱が見受けられる状況にあります。
したがって、本参考資料における「シックハウス症候群」及びいわゆる「化学物質過敏症」の用語の使用に関しても、室内空気質による健康障害に関する医学的判断基準を示すものではなく、現状の関連各省庁や専門家の見解を基に、室内空気質による健康障害が学校においても起こり得ることを前提に、それらに対する適切な対策の立案及び実施を行うために便宜的に整理を行ったものであることに御理解をお願いします。
本参考資料は、学校における室内空気質による健康障害に対する対策の基本的な留意点を示していますが、室内空気質による健康障害はその発症原因や症状等が様々であることから、それぞれのケースに応じた対策が必要になります。
特に、極微量の化学物質に反応する児童生徒等の学習環境を確保するためには、一般化できない個別対応が必要となることが考えられます。
本参考資料では、児童生徒等及びその保護者や担任教員等の個人レベルでは対応に困難な場合に対して、学校全体や教育委員会等の組織だった連携が必要になることを基本的な考え方として示しています。
それら対策の実施に当たっては、各学校における全ての職員及び教育委員会等の理解と行動が必須でありますが、室内空気質による健康障害を持つ児童生徒等及びその保護者だけでなく、同じ環境にいても健康障害がない児童生徒等及びその保護者の理解が不可欠と思われます。本参考資料が、多くの学校関係者の理解を助け、対策が促進されることを望みます。