3.1 一般状態(TABLE 3.1)
妊娠ラットの一般状態に異常は認められなかった。
3.2 体重(TABLE 3.2)
妊娠ラットの体重には、実験期間を通じて有意な差は認められなかった。
3.3 摂餌量(TABLE 3.3)
摂餌量には、実験期間を通じて有意な差は認められなかった。
3.4 帝王切開時検査(TABLES 3.4 and 3.5)
妊娠ラットの肉眼的病理学検査において、水頭症が第2群(偽ばく露群)に1例認められた以外、異常は認められなかった。
生存胎児数において、第1群(無処置対照群)と比較して第2群(偽ばく露群)で有意な高値が認められたが、偽ばく露群と電磁波を照射した群との間には有意な差は認められなかった。
妊娠黄体数、着床痕数、胚・胎児死亡率、生存胎児性比、生存胎児体重、生存胎児胎盤重量および生存胎児外表異常率についてはいずれにおいても有意な差は認められなかった。
なお、外表異常を有する胎児が、第1群(無処置対照群)に1例(矮小)、第2群
(偽ばく露群)に1例(矮小および全身浮腫)、第3群(0.67 W/kg群)に3例(矮小、胎盤癒合)および第4群(2.0 W/kg群)に1例(腹壁裂)認められた。
3.5 内臓および骨格検査(TABLES 3.6 and 3.7)
胎児の内臓検査では、異常胎児はいずれの群においても認められなかった。
変異胎児は、胸腺頸部残留が第1群(無処置対照群)に125例中11例、第2群(偽ばく露群)に141例中13例、第3群(0.67 W/kg群)に132例中11例および第4群(2.0 W/kg群)に136例中11例みられたが、群間における有意差は認められなかった。
胎児の骨格検査では、異常胎児(波状肋骨)が、第2群(偽ばく露群)に130例中1例および第4群(2.0 W/kg群)に131例中1例認められた。
変異胎児(頸椎体分離、胸椎体分離、胸椎体分葉化、第13肋骨短小、腰肋、仙椎弓分離)が、第1群(無処置対照群)に118例中8例、第2群(偽ばく露群)に130例中12例、第3群(0.67 W/kg群)に125例中9例および第4群(2.0 W/kg群)に131例中11例みられたが、群間における有意差は認められなかった。
なお、頸椎体分離は第4群の1例に、胸椎体分離は第1、2、3および4群のそれぞれ1、1、3および1例に、胸椎体分葉化は第4群の1例に、第13肋骨短小は第1群の1例に、腰肋は第1、2、3および4群のそれぞれ4、10、4および8例に、仙椎弓分離は第1、2および3群のそれぞれ2、1および2例に認められた。また、骨化進行度についても第1群(無処置対照群)と第2群(偽ばく露群)間、さらに第2群(偽ばく露群)、第3群(0.67 W/kg群)および第4群(2.0 W/kg群)間に有意な差は認められなかった。
Ⅴ 考察
携帯電話等で用いられる電磁波(2GHz帯高周波電磁波)の頭部への局所的ばく露による妊娠ラットの生殖機能(妊娠維持)および胚・胎児発生に対する影響を検討する目的で、妊娠ラットに器官形成期である妊娠7日から17日まで2GHz帯高周波電磁波を毎日1.5時間照射し、胎児の検査を行った。
照射期間中、妊娠ラットの一般状態、体重および摂餌量いずれにおいても電磁波ばく露の影響は認められなかった。
妊娠ラットの肉眼的病理学検査において、偽ばく露群(第2群)の1例に水頭症が認められたが、水頭症はラットの先天性病変として知られており[1]、他の動物には認められていないことから自然発生による変化と考えられた。
帝王切開時の検査において、無処置対照群(第1群)と比較して偽ばく露群(第2群)で生存胎児数が有意に多かったが、偽ばく露群と電磁波を照射した群との間には有意な差は認められず、電磁波ばく露の影響はないと考えられた。
また、妊娠黄体数、着床痕数、胚・胎児死亡率、生存胎児性比、生存胎児体重、生存胎児胎盤重量および生存胎児外表異常率いずれにおいても電磁波ばく露の影響は認められなかった。
外表異常を有する胎児が、いずれの群においても1~3例認められたが、高ばく露群で増加していないことから、電磁波ばく露の影響はないと考えられた。
胎児の内臓検査では、変異胎児として胸腺頸部残留が認められたが群間には差が無く、電磁波ばく露の影響は認められなかった。
骨格検査では、異常胎児(波状肋骨)が、2.0 W/kg群の1例に認められたが、偽ばく露群においても同様に認められていることから電磁波ばく露の影響はないと考えられた。
なお、波状肋骨については同系統のラットでの自然発生(0.9%)が報告されている[2]。
また、変異胎児がいずれの群においても認められたが、群間には差を認めず電磁波ばく露の影響はないと考えられた。
さらに、骨化進行度についても電磁波ばく露の影響を認めなかった。
以上、携帯電話等で用いられる電磁波(2GHz帯高周波電磁波)の頭部への局所的ばく露による妊娠ラットの生殖機能(妊娠維持)および胚・胎児発生に対する影響を検討した結果、電磁波ばく露の影響は見られなかった。
Ⅵ 文 献
[1] Henk, A.S., Gary, A.B., “Pathology of the Fischer Rat”, Gary, A.B., Scot , L.E.,
Michael, R.E., Charles, A.M.Jr., William, F.M. eds., San Diego, Academic Press,Inc., 1990, p155-177.
[2] Crj:CD(SD)IGS Ratの背景データ-生殖・発生- 日本チャールス・リバー株式会社 1988