4.2.3 培地の高さ6mm時におけるペルチェ素子の形状設計
培地の高さ6mm時の温度制御は、中心付近の温度が最も大きくなっていることから、円形型ペルチェ素子により制御することが可能である。
図4.14 培地の高さ6mm時のペルチェ素子の形状設計計算モデル
(a) 培養容器付近の断面図:中心の3mm厚の円形のアルミニウムの
突起の上にペルチェ素子を配置する
(b) (a)を底面から見た場合のペルチェ素子の配置:円形のペルチェ素
子が中心部に配置されている
図4.14に培地の高さ6mm時のペルチェ素子の形状設計計算モデルを示す。円形型ペルチェ素子を厚さ3mmのアルミニウム突起部を介して中心設置する。数値計算ではペルチェ素子の半径を変化させ、最も培地底面の温度分布が一様になっている条件を走査した。
図4.15 培地の高さ6mm時の5000秒後の細胞位置での温度分布
(半径31mmの円形型ペルチェ素子使用時、入射電力は1W)
図4.15は培地の高さが6mm時の5000秒後の細胞位置での温度分布を示す。ペルチェ素子の制御温度は34.0℃、インキュベータの温度は35.5℃である。半径31mmの円形型のペルチェ素子により、ほぼ一様な温度制御が可能になることが確認できた。半径31mmの円形型ペルチェ素子は、市販されていて入手が用意であることから、実際の検証に用いやすいという利点がある。
4.2.4 制御に最適な培地の高さの考察
表4.3 培地の高さ6mmならびに7mm時の5000秒後の定量的温度分布評価
表
表4.3に温度分布計算結果の定量的評価を示す。この表から、標準偏差温度は培地の高さ6mmによる制御の方が抑制されていることが分かる。
また、培地の高さ7mmでの制御においては、ドーナツ状のペルチェ素子を想定し計算を行ったが、ドーナツ状ペルチェ素子の作成は困難であることから、実際には一辺が20mmの正方形のペルチェ素子を8個円形に並べることで、ドーナツ状ペルチェ素子の代用を行うことにする
4.3 ペルチェ素子による温度制御機構装置
4.3.1 円形導波管ばく露装置への実装
前4.2項で決定したペルチェ素子(培地の高さ6mm時は半径31mmの円形、培地の高さ7mm時は幅25-45mmのドーナツ状のペルチェ素子(ただし一辺20mmの正方形8個により代用))による高精度温度制御機構の円形導波管ばく露装置への実装は、(株)日本高周波に設計依頼した。
図4.16 ペルチェによる温度制御機構を実装した新型ばく露装置
図4.17 新型ばく露装置の細胞ばく露部
図4.16はペルチェ素子を実装した新型ばく露装置の一部の写真である。新型ばく露装置では、培養細胞の取り出しが容易になるように、細胞設置個所がスライド式に改良された。
図4.17はスライドを引き出した状態で、培養容器をばく露装置に設置した様子である。
ばく露装置内部へは、ばく露中の温度をモニターするために外部から温度計を差し込める構造になっている。
図4.18 ペルチェ素子の水冷方式
による冷却
図4.19 冷却水循環のためのポンプ
と恒温槽図4.18では、ばく露装置下部にペルチェ素子を冷却するための水冷ヘッドがつけられている.設計ではヒートシンクを想定していたが、ヒートシンクでは放熱が間に合わないために、水冷による冷却に変更した。
図4.19は、水冷循環水を37℃に保つための恒温槽と、冷却水を循環させるためのポンプである。冷却水は通常温度のまま使用すると、37℃になるように温度制御されているばく露装置内細胞位置での制御に影響がでてしまうために、冷却水は37℃に保ち循環させている。
図4.20 ペルチェ素子PID制御の
ためのサーミスタコントローラ
図4.21 ばく露装置内の細胞位置の
空気循環を行うための循環ポンプ
図4.20はペルチェ素子を温度制御するためのPID制御方式のペルチェコントローラーである。
このコントローラーはサーミスタ温度計でペルチェ素子をモニタリングすることにより、0.01℃単位でペルチェ素子を温度制御することができる。また培地の高さが7mm時のペルチェ素子、培地の高さが6mm時のペルチェ素子にそれぞれ対応できるよう、電圧を切り替えて使用することが可能である。
図4.21はばく露装置内の細胞ばく露空間内の空気を循環されるためのポンプである。
細胞培養は温度、CO2、湿度を制御する必要があるが、ばく露装置内はインキュベータによって制御された培養環境に適した空気が入りにくくなっている。
このポンプによってインキュベータの空気をばく露装置内に循環させることで、長時間のばく露によっても培養環境を一定に保つことが可能である。