2.4 HSP70発現量の温度依存性
熱ショックたんぱくは熱以外の環境的要因、病原体、化学物質などによっても発現するが、主に熱影響によって発現されることが知られている。
熱ショックたんぱくの発現量については、熱環境に曝される時間にも依存するため、今回のばく露条件である4時間において、熱環境を変化させた条件で熱ショックたんぱくHSP70の発現量を調査した。
図2.5 HSP70発現量の温度依存性
図2.5にHSP70発現量の温度依存性を示す。
図の縦軸は37℃の条件における遺伝子発現量で規格化したときの「遺伝子発現量比率」であり無次元量である。
また横軸は温度℃を示し単位は摂氏である。
ここでは37℃の条件における遺伝子発現量で規格化しているので、37℃における遺伝子発現比率は1である。
コントロール数は37.0、38.5、39.5、40.6、41.4、42.2℃(設置時間は4時間、ただし培地の初期温度は37℃のため37℃以上の条件では定常温度に至るまでマイルドな温度上昇となる)の6条件で各5枚ずつ行い、ΔΔCt法により37℃コントロールを基準値として相対値を求めた。
エラーバーは標準偏差を示す。それぞれの培地底面の温度は蛍光ファイバー温度計(Model 790, Luxtron)によって計測された。
図2.5の▲のマーカーで示された測定値に対して2次関数を用いて回帰分析を行うと(1)式で示される曲線が得られる。
f (T) = 0.195(T − 37)2 − 0.08(T − 3) +1.06 (1)
ここでf (T)は上で述べたように無次元量であり、温度T℃の関数である。このHSP70の温度依存性発現量比率をもとに、細胞位置での不均一な温度場に対するHSP70の発現量を求めることができる。
図2.6 数値計算による培地底面の温度分布と
蛍光ファイバー温度計による比較
図2.6は数値計算による培地底面の温度分布と蛍光ファイバー温度計による比較を示したものである。
これから、数値計算によって求められた温度分布と実測値は比較的合致していることが確認できる。
また図2.7は培養容器中心におけるsham、5W/kg、10W/kgの温度上昇の時間依存性である。
shamばく露で温度上昇が起こっている理由に関しては次の2.5項において述べる。
これから3つのばく露条件において、いずれもばく露開始から約2時間後に温度が定常状態に達していることが確認できる。