25:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・. 細胞生理学的影響評価試験

6.1 細胞影響評価と機構解析
Ⅰ 研究目的
携帯電話からの電磁波が生体にどのような作用を及ぼしているかについて、細胞・遺伝子レベルにてその影響評価を行うとともに、陽性効果については分子生物学的にその作用機構を解明する。特にパルス波、変調波の固有の影響の有無とその機構について明らかにする。

さらに、どの程度のばく露量から影響が現れるかについて検索し、しきい値の推定を行うとともに、安全基準策定のための基礎データを得る。
平成17年度は、細胞ばく露用高周波電磁波発生装置を使用し、以下の細胞生物学的な指標に関して、高周波ばく露の影響評価を行うことを目的とする。
(1) 高周波間欠ばく露によるトランスフォーメーション誘発に及ぼす影響
(2) 高周波連続ばく露によるオルニチン・デ・カルボキシラーゼ(ODC)発現に及ぼす影響
(3) 新しく首都大学東京で製作された装置を用いて、低出力高周波ばく露による小核形成に及ぼす影響(REFLEX報告の予備的検証実験)
(4) マイクロアレー法を用いた高周波ばく露によるヒトの遺伝子発現に及ぼす影響
(予備的実験)

Ⅱ 試験方法および結果
1. 高周波ばく露による形質転換(トランスフォーメーション)評価実験
(1) 使用細胞:C3H10T1/2 細胞(クローン8)
(2) ばく露条件
ばく露周波数:2.45GHz
平均S A R:50および100W/kg
50W/kg (peak SAR 300W/kg…1秒ばく露、5秒非ばく露)
(peak SAR 900W/kg…1秒ばく露、17秒非ばく露)
100W/kg(peak SAR 300W/kg…1秒ばく露、3秒非ばく露)
(peak SAR 900W/kg…1秒ばく露、9秒非ばく露)
ばく露時間:2時間
(3) 1×106個の細胞を10cmシャーレに播種し、20-Methylcholanthrene(MC)入り
培地(最終濃度2.5μg/ml)、または、MC含まない培地で48時間培養
(4) 高周波ばく露用シャーレに移し変え、高周波2時間ばく露
(A)TPA入り培地(最終濃度0.5ng/ml)でばく露。以降、TPA入り培地で培養
(B)TPA含まない培地でばく露。以降、TPA含まない培地で培養
(5) トリプシン処理後、細胞を回収し
(A)生存率検定用に10cmシャーレに200個の細胞を播種
(B)形質転換頻度検定用に10cmシャーレに2000個の細胞を播種
(6) 1週間後、生存率を測定
(7) 5~6週間後、形質転換頻度を測定
(8) Student’s t-test(p<0.01)の統計処理にて有意差を検討
(結果)
トランスフォーメーション(形質転換)の例ならびに高周波間欠ばく露によるト
ランスフォーメーション誘発頻度の結果を図1および図2に示す。


2. 高周波連続ばく露によるODC発現評価実験
2.1 オルニチン・デ・カルボキシラーゼ(ODC: Ornithine decarboxylase)の
性質
(1) ODCはポリアミン*生合成系に関与する律連酵素で、下記のポリアミン合成経路
で、オルニチンからプトレッシン合成時に働く。
オルニチン
↓←ODCによってコントロール
プトレッシン

スペルミジン
↓↑
スペルミン
(2) ODCは細胞増殖、細胞周期の亢進に関係し、この時ODC発現が上昇する。
(3) また、細胞増殖因子、ホルモンなどの刺激により、ODC発現の上昇が確認されている。
つまり、ODCは細胞増殖・分化の亢進状態の指標ともなっている。
*3個以上のアミノ基を持つ非蛋白質性のアミンであり、細胞内に多量に存在して増殖・分化の際に複雑な量的変動を引き起こす
2.2 培養条件と測定方法
(1) 培養条件
使用細胞:マウス線維芽細胞由来L-929細胞(大日本製薬より入手)
使用培地:Eagle’s MEM培地+5%牛胎児血清(+2mM L-グルタミン)
培養条件:37℃、5% CO2、湿度100%
(2) 測定方法
ばく露処理後の経時的な細胞数計測
フローサイトメーターによるODC発現の測定