21:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

Ⅲ 試験方法
1. 長期埋込型クラニアルウィンドウの装着
電磁波の及ぼす影響が脳の成熟度に依存する可能性が指摘されていることから、幼若獣として4週齢、成獣として8週齢の週齢の異なるラットを使用した。ラットの脳軟膜微小循環動態を直視的に観察するため、実験に先立ちラット頭部に長期埋込型cranialwindowを装着した。

3週齢および7週齢のラット頭部を麻酔下(ketamine:xylazin100:10mg/kg, i.m)で脳定位固定装置に固定し、電動ドリルを用いて頭頂部左側の頭蓋骨を直径約7.5mmの円形に切除した。

次に開口部の脳硬膜を頭蓋骨切り口に沿って三日月状に切開し、Bregma-Lambda間に寄せた。

最後にwindowをかぶせてシアノアクリレート系接着剤にて固定した。術後、各個体の埋込型cranial window内に炎症および感染、血行障害が生じていないことを確認してから実験に供した。

全てのラットは、室温23±1℃、湿度50±5%、明暗が12時間ごとに調節された室内にて飼育し、固形飼料は自由給餌法、水は自動給水にて与えた。

2. 生体顕微鏡的観察
埋込型cranial window内の脳軟膜微小循環動態は蛍光実体顕微鏡を用いて生体顕微鏡的に観察した(図1a)。

麻酔下(ketamine:xylazin, 100:10mg/kg, i.m. + pentobarbital,12.5mg/kg, s.c.)のラット頭部を脳定位固定装置に固定し、蛍光実体顕微鏡(SZX120またはMVX10, OLYMPUS, Japan)下の電動ステージ(LEP5, Ludl ElectronicProducts Ltd., USA)上に設置した。

実体顕微鏡により観察された蛍光像は、各種フィルタを介したのち高感度CCDカメラ(C7190, HAMAMATSU, Japan)により撮影した。
撮影した画像は、血管運動解析システム(後述)上に表示するか、またはオフライン解析用にデジタルビデオレコーダに記録した。

3. 血管運動計測
脳軟膜細動脈を蛍光色素により可視化し、その血管径変化を計測した。

蛍光色素FITC- dextran(200kDa, 25mg/kg)を静脈内投与し、励起光490nmのSZX120蛍光顕微鏡下で脳軟膜血管を造影した。

観察開始時の血管径が30~50μmの細動脈を各個体から1本選択し、麻酔30分後から12分間細動脈を撮影した。

撮影した細動脈画像は直ちに超高速デジタル画像処理装置( CV-2000, KEYENCE, Japan)に取り込み、所定のアルゴリズムに従いサンプリング間隔100msecで経時的に血管径を抽出した(図2)。

4. 白血球挙動計測
細静脈内白血球を蛍光色素により可視化し、MVX10蛍光顕微鏡下でその挙動を観察した。

白血球はrhodamine 6G(100μg/kg)の静脈内投与により蛍光標識した。514nmの励起光を観察部位に照射し、蛍光を示した白血球の挙動を光学フィルタを介して撮影した。

観察部位は1個体につき3箇所選択した。同一箇所の蛍光像は10分毎に30秒間の動画として計8回記録した。
白血球の挙動は粘着現象(sticking)および回転現象(rolling)の2種類に分類し、それぞれの現象を呈する白血球数を計測した。

各観察箇所の中から任意の細静脈を1~2本選択し、この細静脈上の分岐の存在しない部分を血管長軸上で100μm指定し計測領域とした。

計測領域内を30秒間観測し、血管内腔面に接着し続けた白血球を粘着白血球、血管内腔面を回転しながら移動した白血球を回転白血球としてその数を計測した。

5. 電磁波ばく露
本実験では、一般環境下の防護指針値レベルである脳平均SAR2.0W/kgに電磁波ばく露量を設定した。

電磁波は、周波数1,439MHzのPDC(Personal Digital Cellular)方式の信号を使用し、脳表面標的部位における平均SAR値が2.0W/kgとなるように入力を調整した。

このSAR値は、本実験で使用した4週齢および8週齢ラットの体重に近いラット数値モデルを用いたばく露評価により取得した値である。
ラット頭部へ電磁波局所ばく露は改良型8の字ループアンテナを用いて行った(図1b)。

アンテナは、アンテナボックスに挿入後、その位置がcranial windowのガラス面より5mm上方に位置するようにアクリル製脳定位固定装置に取り付けた。シグナルジェネレータ(MG3670B, Anritsu, Japan)より発生させた信号を、パワーアンプ(A2000-50L-R, R&K, Japan)により増幅した後にパワーリフレクションメーター(NRT, ROHDE & SCHWARZ, Germany)およびL型コネクタを介してアンテナに入力し電磁波を発生した。
電磁波ばく露スケジュールは、血管運動計測用と白血球挙動計測用の2種類設けた(図3)。

血管運動計測では、12分間の計測時間の中で計測開始3分後から3分間だけ電磁波をばく露した。

白血球挙動計測では、80分間の計測時間の中で計測開始20分後から50分間だけ電磁波ばく露した。
6. 統計解析
全ての計測値はmean±s.e.で表した。

有意差検定は t 検定を行い、有意水準5%未満を有意差ありとした。