4:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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Ⅲ 試験方法
1. 電磁波ばく露条件
周波数: 2GHz(1.95GHz)
デジタル方式: W-CDMA方式
照射レベル: 脳平均SAR(Specific absorption rate、比吸収率)
=0(偽ばく露群)、0.67および2.0W/kg
2. 試験系
(1) 使用動物
動 物 種 : ラット
系 統 : F344/DuCrj
性 : 雌および雄
使用動物 : 試験番号0301〔㈱大雄会医科学研究所(現:㈱DIMS医科学研究
所)〕で作出したラットを入手
母動物に溶媒投与:雌 81匹、雄 79匹
母動物にENU投与:雌 310匹、雄 287匹
週 齢 : 4週齢(入手時) 2003年3月12日入手
[試験番号0301の動物作出方法概略]
動 物 種 : ラット
系 統 : F344/DuCrj(SPF)
入荷動物数 : 妊娠動物(妊娠6~9日)計100匹(発注動物数;100匹)
(妊娠6日;23匹、7日;18匹、8日;32匹、9日;27匹)
妊娠動物:雌雄ラットを一晩同居させ、翌日に膣plugを3個以上
確認できた交尾確認雌動物で、この日を妊娠0日と起算した。
入 荷 日 : 2003年01月23日
供 給 源 : 日本チャールス・リバー㈱
所 在 地 : 神奈川県厚木市下古沢795番地
生理食塩液に溶解したENU投与液(投与量4mg/kg体重)および生理食塩液を投与直前に除菌filter(Millex®-GV、0.22μm、Millipore)を用いて除菌した。ENU投与群にはENU投与液を妊娠18日の体重を基に1ml/kg体重の割合で妊娠動物(妊娠18日)の尾静脈内に注射した。

溶媒投与群には生理食塩液を同様に尾静脈内に注射した。

自然分娩により得た児動物を4週齢で入手した。
入手後、動物番号の若い順に、1ケージあたり2~3匹収容し、飼育した。

群分けまでの1週間を予備飼育期間とし、一般状態の観察(1日1回)を行った。
(2) ダミー用動物
ENUを投与していない母動物から作出した動物のうち、試験に使用しない余剰の動物を雌28匹、雄20匹確保した。

またこれとは別に、6カ月齢の動物を日本チャールス・リバー㈱(〒243-0214 神奈川県厚木市下古沢795番地)より2003年7月24日に雌23匹(22匹を使用)、雄31匹(30匹を使用)を購入し、5日間の検疫、馴化期間中に一般状態の観察(1日1回)を行い、異常のない動物をダミー動物として使用した。

ダミー動物は実験中に死亡などでばく露装置内の保定器にセットする動物が不足した場合、照射条件を同じにするために補填する動物として飼育した。なお、使用しなかった動物(雌1匹、雄1匹)については試験系から除外した。
ダミー動物の体重測定については試験に使用する動物と同様に行った。

一般状態観察は実施せずに生死の確認のみ行った。

また、瀕死動物や腫瘍などで保定器にセットできないと判断された動物は、エーテル麻酔下で安楽死させ、剖検し記録した。
死亡動物についても剖検し記録した(記録は2005年3月15日以降より実施)。また、ばく露期間終了後、全生存ダミー動物についてエーテル麻酔下で腹部大動脈より採血致死させ、剖検し記録した。

これらの記録は試験成績には反映させず、臓器の保存も行わなかった。
(3) 微生物モニター用動物
動物への感染など微生物学的な管理を目的として、微生物モニター用動物を設けた。
4週齢の雌雄各9匹を日本チャールス・リバー㈱より2003年3月13日に購入し、5日間の検疫・馴化期間中に体重測定(2回)と一般状態の観察(1日1回)を行った後微生物モニター用動物として飼育した。

微生物モニター用動物の一般状態および体重測定については試験に使用する動物と同様に行った。これらの記録は試験成績には反映させなかった。
微生物モニター用動物は、雌雄別々の飼育室で試験に使用する動物と同居させ、約6ヶ月毎に雌雄各1匹の動物を下記検査機関に送付し、微生物学的検査を依頼した。
検査機関:財団法人 実験動物中央研究所 モニタリングセンター
微生物検査部
〒216-0001
神奈川県川崎市宮前区野川1430
微生物学的検査は4回(第1回目:2003年9月29日、第2回目:2004年3月8日、第3回目:2004年9月27日、第4回目:2005年3月7日発送)実施した。
その結果、第1回目の検査で雌の1例に緑膿菌が検出された。

これは盲腸内容物の培養により検出されるものであるが、日本チャールス・リバー㈱におけるSPFの項目には該当せず、他の動物にも異常を認めなかったことから、この感染による試験への影響はなかったと判断した。

第2回目は雌の1例に、第4回目は雌の1例に肺パスツレラ菌が検出された。これは、日本チャールス・リバー㈱における感染事故により、肺パスツレラ菌に感染した疑いのある動物が他の飼育室に入荷されたことから、同動物にも感染したと考えられた。

しかしながら、この菌の感染によってラットでは病変を形成することはまずなく、米国では常在菌として扱うことから試験には影響しなかったと判断した。第3回目は何らの菌も検出されなかった。
(4) 試験系選択理由
発癌性試験で繁用されており、前回の長期局所ばく露評価試験(1.5GHz PDC方式 電磁波照射試験)で使用されたF344/DuCrj系ラットを採用した。
(5) 群分け方法
あらかじめ外観に異常のある動物は群分け用動物から除外した(予備飼育期間中に雄が1匹死亡)。

ENU投与母動物から得た児動物は、雌雄別に体重を基にコンピューターによる体重別層化法により4群に分けた。

溶媒投与母動物から得た児動物も、雌雄各50匹をENU投与母動物から得た児動物各群の平均体重および標準偏差値と同様になるように選出した。群分けは電磁波照射開始の前日に行った。

なお群分け時の体重が各群間に統計学的な有意差のないことを確認した。群分け後、試験および前述のダミー動物としても使用しない動物(雄95匹、雌113匹)については試験系から除外した。
(6) 個体識別法
a) 群分けまで
ケージラベルに試験番号、ケージ番号、ENU処置の有無、仮動物番号および試験責任者名を明記した。

動物の個体識別は、上記内容とケージ内動物番号(マジックインキ法による)の組み合わせで行った。
b) 群分け後
ケージラベルに試験番号、ケージ番号、ENU処置の有無、照射レベル、群番号、動物番号、実験期間とその開始および終了年月日、試験責任者を明記し、更に群毎に異なった色のカラーテープをそれに貼付した。

動物の個体識別で、1、2、6、7群は上記内容とケージ内動物番号(イヤーパンチ法およびマジックインキ法)の組み合わせで行った。

3、4、5、8、9、10群については、上記内容と通し番号での識別(イヤーパンチ法を用いて各群の若い番号より1番から50番を付けた)を行い、さらにケージ内動物番号(マジックインキ法)とケージラベルと組み合わせて行った。
c) ダミー動物およびモニタリング動物
ケージラベルに試験番号、ケージ番号、群番号、動物番号、実験期間とその開始および終了年月日、試験責任者名を明記し、カラーテープをそれに貼付した。
動物の個体識別は、上記内容とケージ内動物番号(イヤーパンチ法およびマジックインキ法による)の組み合わせで行った。
(7) 飼育条件
適切に生物学的防御された環境の飼育室で、以下の条件にて動物を飼育した。
飼 育 室 : 第11および12飼育室(第11飼育室:雌、第12飼育室:雄)
温 度 : 第11飼育室;19.5~25.0℃、第12飼育室;19.5~25.0℃
相対湿度: 第11飼育室;49.0~65.0%、第12飼育室;46.5~65.0%
(2004年8月9日の15:00~16:30の間、湿度が一過性に66%まで上昇)
[設定条件:温度;22±3℃、相対湿度;55±10%]
照明時間: 12時間(7:00~19:00)
換気回数: 15回以上/時間
飼 育: 2~3匹/ケージ
ケージ(床敷)交換頻度: 1~3回/週
給 水 ビ ン 交 換 頻 度 : 1~3回/週
(8) 収容ケージおよび床敷
プラスチック製ケージ(日本チャールス・リバー㈱、W260×L412×H195mm)
を常圧蒸気殺菌して使用した。ステンレス製ケージ蓋は高圧蒸気滅菌して使用した。
床敷は高圧蒸気滅菌したベータチップ(Northeastern Products Co., NY, USA)を使用した。床敷中の環境汚染物質については、オリエンタル酵母工業㈱より定期的に分析値を入手し、問題のないことを確認した。
(9) 飼料
低線量照射(6kGy)オリエンタル酵母工業㈱製MF固形飼料(Lot No. 021001、021112、030108、030603、030402、030701、031106、031202、041005)および低線量照射(6kGy)オリエンタル酵母工業㈱製特注MF固形飼料(使用原末Lot No.030603、030701、031002、031106、040206、040506、040804、041102)を使用した。固形飼料はケージトップに設置したステンレス製給餌器に入れ、自由に摂取させた。飼料中の汚染物質の分析については、オリエンタル酵母工業㈱よりロット毎の分析値を入手し、最大許容濃度以下であることを確認した。
(10) 飲料水
一宮市上水道水を透明な給水瓶を用いて、動物に自由に摂取させた。給水瓶および給水栓はソフト酸化水で消毒したものを用いた。
飲料水が当研究所で定める水質基準に適合していることを下記分析機関で定期的(年2回)に確認した。
分析機関: 株式会社 環境科学研究所 分析事業部
〒462-0006
名古屋市北区若鶴町169
3. 試験方法
(1) 電磁波照射およびばく露期間
ENU投与母動物から得た動物に、5週齢から104週間電磁波を照射した。ばく露は一日1.5時間とし、1週間に5回行った。
(2) 各群の照射レベルおよび動物数
群 ENU処置 電磁波照射 照射レベル 動物数
雌 雄 (SAR:W/kg) 雌 雄
1、6 - - - 50 50
2、7 + - - 50 50
3、8 + -(sham) 0 50 50
4、9 + +(low) 0.67 50 50
5、10 + +(high) 2.0 50 50
(3) 動物番号
群 雌 雄
雌 雄 動物数 動物番号 動物数 動物番号
1、6 50 0302001~050 50 0302251~300
2、7 50 0302051~100 50 0302301~350
3、8 50 0302101~150 50 0302351~400
4、9 50 0302151~200 50 0302401~450
5、10 50 0302201~250 50 0302451~500
(4) 電磁波照射方法
電磁波照射条件を設定し管理するための長期局所ばく露実験制御ソフトウエア(独立行政法人 通信総合研究所開発、NTTアドバンステクノロジ(株)ワイヤレスシステム事業部作成)のスケジュール表に基づき、電磁波照射を1日3回に分割して行った。
電磁波照射にはばく露箱(10匹収容)10台を用いた。

動物の保定はラットの体重に応じて内径4.0、4.7、5.5および6.2cmの4種類の保定器を使用して行った。

雌雄各1群毎に動物を保定器に入れ、スケジュール表に従って10匹ずつ該当するばく露箱にセットした。

全ての動物がセットされたことを確認した後、ばく露を開始した。
ばく露終了後はばく露箱毎に全動物を回収し、動物を各ケージに戻した。

同様の操作を1日3回繰り返した。

なお、照射開始時には動物のセットに使用したスケジュール表とコンピューター画面が同一であることを確認した。

また、1日の照射終了後にその日の照射データをNTTアドバンステクノロジ㈱ワイヤレスシステム事業部に送信し、スケジュール通りに照射が実施されたことを確認した。
(5) 電磁波ばく露量設定の理由
平成9年度郵政省電気通信技術審議会の答申で勧告されている局所吸収指針値(携帯電話等の人体近傍で使用する電磁波利用器機に適用)で一般人に対するばく露許容量(任意の組織10g当たりの局所SARが2W/kgを越えてはならない)に基づいて設定した。