・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・先進国と途上国の化学物質管理
―そのギャップを埋めるために―
先進国と途上国のギャップ
ICCM4では、「ギャップ(隔たり)を埋める」という言葉をよく耳にしました。
化学物質管理の分野において、先進国と途上国とのギャップを埋めるという意味です。
先進国であっても、環境ホルモンやナノテクノロジー、環境残留性医薬汚染物質(EPPP)など、これから取組みを始めなければいけない分野もありますし、現在の化学物質管理も万全ではありません。
しかし、途上国では、先進国では適切に管理されている物質であっても十分な規制が行われていなかったり、処理をする技術がなかったりするために、環境や健康への大きなリスクの要因となっていることがよくあります。
そのため、先進国と途上国の化学物質管理の「ギャップを埋める」ことが重要な国際的な課題となっています。
ギャップの事例1―鉛塗料
鉛は、子どもの脳の発達や生殖に悪影響を与えることが明らかになっています。
日本を含む先進国では、法規制等により、子どもが曝露する可能性のあるものに鉛が入った塗料は使用されていません。
しかし、何の規制もない途上国では、今でも子ども向けの製品に鉛入りの塗料が使われています。
2013年にコートジボワールでエナメル塗料を使った市販の商品20点を調べたところ、13点に600ppm を超える鉛が含まれており、そのうち5点は1万ppm を超えていたということです。
エチオピアで行われた同様の調査でも、20点のうち600ppm 以上鉛を含む商品が19点、そのうち1万ppm を超えるものが5点ありました。
ギャップの事例2―毒性の高い農薬
多くの発展途上国では、農民が毒性の高い農薬を防護具もつけずに使用していることは珍しくありません。
2012年にパキスタンで行われた調査では、農薬散布の3~15日後に綿摘みをした女性全員が何らかの健康被害を受けていることが分かりました。
2014年にバングラデシュで行われた調査では、農薬を散布した人の85% が健康被害を受けていました。
農薬を「安全に使う」ことはできないのです。
途上国で実践できる、農薬に頼らない安全で生産性の高い農法が求められています。
ギャップの事例3
―電気電子機器の廃棄物(E-waste) テレビやパソコン、携帯電話等、私たちの周りには電気電子機器があふれています。
2013年に廃棄されたE-waste は全世界で5000万t にも上ったそうです。
電気電子機器には、鉛、水銀、カドミウム、ヒ素、難燃剤などの有害物質が含まれているので、適正に処理されなければなりません。
しかし実際には、E-wasteの大部分はリサイクルされずに、偽装中古品としてアフリカやアジアの途上国に輸出され、野積みにされたり、違法に処理されたりしています。
ギャップを埋めるために先進国と途上国のギャップは上記に挙げたものに限りません。
「2020年までに化学物質が人の健康・環境に与える著しい悪影響を最小化するような方法で生産・使用されるようにする」という国際的な目標の実現には、途上国においても化学物質が適正に管理されることが不可欠であり、先進国にはそのための資金や技術の提供が切実に求められていることを実感しました。