・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・「WSSD 2020年目標」は継続へ
理事 中地重晴(熊本学園大学)
化学物質管理に関する国際的な取組みの経過
私たちは化学物質に囲まれて生活していると言われて久しい。
1972年に「国連人間環境会議」が開催され、日本の水俣病が国際的に知られるようになった。
1992年にはブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催され、地球環境保護の原則として「リオ宣言」、その行動計画となる「アジェンダ21」が採択され、2つの国際条約「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」が締結された。その後、化学物質や廃棄物に関連する国際的な取組みや規制が提案され、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)や国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質等の事前同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC 条約)などの条約、PRTR、GHS などの制度が作られてきた。
その後の進捗を総括、評価するために「持続可能な開発のための世界首脳会議」が2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催され、2020年を目途に化学物質による健康と環境に関する悪影響を最小化することを目指す「WSSD 2020年目標」が採択された。
「国際化学物質管理に関する戦略的アプローチ」
(SAICM)とは
2020年目標を実現していくために、2006年に、「ドバイ宣言」「包括的方針戦略」「世界行動計画」から構成されるSAICM が採択された。273項目に及ぶSAICM 世界行動計画の進捗を管理するために4回の国際化学物質管理会議が3年ごとに設定され、この9月28日から1週間にわたってICCM4がジュネーブで開催された。
このICCM4にIPEN(国際POPs 廃絶ネットワーク)の一員として、日本からT ウォッチのメンバー4人が参加した。
SAICM はマルチステークホルダーによる国際的なボランタリーな取組み(戦略的アプローチ)という性格から、各国政府代表、WHO やILO などの国際機関、産業界、NGO が対等の立場で議論し、2020年目標の実現をめざす。
今回は2011~13年の進捗についての報告と2020年までの取組み方針が中心議題であった。
ICCM4で議論された内容
2020年目標の達成に向けた化学物質管理に関する各国や地域の2011~13年の取組みが報告された。
その中で、開発途上国への支援として資金提供を行う「クイックスタートプログラム」は2012年のICCM3で延長されたが、今後は新たな資金提供を行わず残存資金のみで技術支援などの取組みを実施することを確認した。
また、2020年目標の達成に向けて、全体方針及び指針(OOG)が承認され、包括的方針戦略で定めた5つの目的(リスク削減、知識と情報、ガバナンス、能力向上と技術協力、不法な国際取引の防止)の実施のために、特に重点的に取り組む6つの活動分野「ステークホルダーの責任向上」「化学物質関連の国内法規制強化」「持続可能な開発アジェンダにおける化学物質適正管理の主流化」「新規政策課題(EPI)の検討」「情報アクセスの促進」「2020年目標に向けた進捗評価」が取り決められた。そして、ICCM5の開催準備のための公開作業部会(OEWG3)を2018年に開催し、2014~16年の進捗評価を行うことになった。
2020年以後もSAICMを継続
2020年には目標達成の状況を評価するICCM5が開催される。
目標年度である2020年まで残り5年、その達成が難しくなっている中で2020年以後の取組みをどのようにしていくのかも議論された。
本会議の開催直前の9月25日から27日まで、持続可能な開発に関する国連総会が国連本部で開催され、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。
それを受けて、ICCM4では、2030年までの持続可能な開発に関する国連の取組みの中の化学物質管理及び廃棄物に関して、SAICM が主要な役割を果たすことができるかを議論した。
その結果、2020年目標が達成できなくても、2020年以後もSAICM の枠組みを維持し、化学物質と廃棄物の適正管理を行っていくことを決議した。
すでに、廃棄物管理に関しては、有害廃棄物のバーゼル条約、PIC 条約、POPs 条約の3つの事務局が統合され、そこに一昨年締結された水銀条約も加わって、国際的な有害物質の廃棄物管理が議論されている。
この流れにSAICM も合わせていくという結論になったようである。
新規政策課題にEPPP が追加される
2006年以後に問題と認識されるようになった緊急に取り組む必要のある新規政策課題について、今回、環境残留性医薬汚染物質(EPPP*1)の登録が承認された。
分析技術の発達とも関連して、人間や家畜に投与された医薬品が排泄され、下水道等を通して、河川を汚染していることが分かってきた。
欧米ではEPPPの河川底質への残留が確認され、アメリカでは規制が検討されている。
都市部だけでなく、酪農の盛んな農村地域でも汚染が顕在化している場合がある。今後、問題の啓発、理解、対策のための国際協力を行っていくことを確認した。
製品中の化学物質に関してはUNEP のプログラム及びステークホルダー向けのガイダンスの作成、ナノ物質についてはUNITAR、OECD の活動を引き続き推進することが確認された。
ICCM3でアメリカが提案した懸念される事項の有機フッ素化合物については、日本ではすでに規制されているPFOS 及びその他関連化合物を含むパーフルオロ化合物について、管理及び安全な代替物への移行に関する取組みの最新情報をOECD とUNEP が報告した。
会議に参加しての感想
会議の参加者は、各国代表が103か国地域、アメリカなどオブザーバー29か国、国際機関や産業界、NGO・市団体、労働組合など約800名の参加があった。IPEN からは42か国約70名が参加した。
ICCM2から3回連続で参加したが、NGO の参加は毎回増加し、化学物質管理に関する関心の高さがうかがえるが、政府関係者や産業界からの参加は低調で、議論も冷めた感じがした。
2020年目標を実質化するのか、いっそうの世論喚起が必要だと感じて帰ってきた。
runより:化学物質規制には世界レベルで行う必要があります。
日本が規制しても外国で安価な化学物質を使われて安く売られたら意味無いですからね(-。-;)