-3:シックハウス症候群【インタビュー】坂部 貢氏 | 化学物質過敏症 runのブログ

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クリーンルームでの確定診断
坂部 本症では中枢神経,自律神経機能障害が起こります。

神経眼科学的な検査――眼球運動や高位視覚の感度(コントラスト感度),あるいは瞳孔の対光反応を使った自律神経機能検査――などで正常群と差が出てきます。

眼球運動では9割近い患者さんに程度はさまざまですが異常が認められますので,客観的所見の1つとしてこのあたりが診断にはとても有効です。
 厚生労働省研究班(班長=北里研究所 石川哲氏・北里大学名誉教授)が来年の3月頃を目途に他の研究班の成果も総合的に判断して,シックハウス症候群の診断に有用な診断基準を作成する予定になっていますので,それが1つのスタンダードになることでしょう。
 しかし本症の検査は,化学物質を可能な限り排除したクリーンルームの設備がないと難しく,通常の空気中では検査できないものもあります。

クリーンルームの中のブース検査室に化学物質を微量注入して,患者の家の状況を再現した時に症状が出るかどうかをみるという,チャレンジ・テストを行ないます。

それが最終的な確定診断です。実際にはプラセボと,高濃度のものと,低濃度のものとを患者さんに負荷して判断します。

検査する側も二重盲検で行ないます。この検査が最も確定的で客観性のある検査だと考えています。
 最近では,当院の他に,東京労災病院,国立相模原病院,国立南岡山病院,国立南福岡病院,国立盛岡病院等にクリーンルームを有する診断治療施設があります。

今後さらに診断治療用クリーンルームを有する施設は増えていくもの思われます。

治療の最前線-3つの柱
坂部 治療の柱は大きく3つあり,1つは原因物質から遠ざかることです。

環境物質から影響を受けやすい要因にはいくつかありますが,例えば日常的な影響度の判断となる有害化学物質の「総身体負荷量」を少しでも減らすようにと医師が助言してあげることです。

建築工学的対策(建材の交換,換気効率の改善など)はもちろんですが,患者は日用品を含めいろいろな有害化学物質を使っているはずですので,それも含めて減らす努力をしないと,化学物質による身体への負荷は減りません。

もちろん物理的負荷(例えば寒暖),心理社会的負荷(ストレス)の軽減もきわめて重要です。
 2つ目は,化学物質の代謝を促進するものを摂取することです。

現在有効性が確かめられているのは,還元型グルタチオンです。

ある物質が体内に入ると,肝臓における薬物代謝酵素系で2段階に代謝されます。

例えば第一相の酵素系(P450系)で酸化されたものは,引き続き普通,第二相の酵素系でそれを還元したり,抱合して排泄しますが,本症の中にはその第2相の酵素反応が遅い人がいます。

つまり酸化ストレス状態にあるわけです。フリーラジカル・スカベンジャーとしてのビタミンB群,ビタミンC(アスコルビン酸),さらにはビタミンEなどを補助療法として摂取することは意味のあることです。

また米国では,アミノエチルスルホン酸(タウリン),CoQ10(コエンザイムQ10)の有効性も報告されています。

食物アレルギーに対する中和療法を化学物質過敏に応用した方法も米国では行なわれ,ある程度の成果があがっています。
 3つ目としては,運動して汗をかくことですね。

多くの有害物質が,脂溶性でも代謝後は水溶性として排出されるので,発汗で化学物質を早く外に出そうということです。

また発汗は自律神経の機能で調節されますから,自律神経を刺激することも非常に意味があると思います。
 最初は,「人が汗をかいていても,自分はぜんぜん汗をかかない」とか,逆に「人がかかない時に自分だけかく」という訴えが多いですが,こういった治療を重ねていくと,徐々によくなります。