-4:「マラチオン」の”毒性”について自ら調べないマスコミ | 化学物質過敏症 runのブログ

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しかし、それだけなのだろうか?

以前、農薬の毒性について取材した経験でいうと、あくまでそれは「急性中毒」に関するものでしかない。

「化学物質過敏症」を含む「慢性中毒」に関する説明ではない。

私の取材した経験では、母親の体内にいる時に空中散布された有機リン殺虫剤で、重症の化学物質過敏症になった小学生が、

学校の近隣の梅林で撒かれた有機リン殺虫剤が風に乗ってきたために目の前で倒れてしまったことがあった。

呼吸も困難だったが、有機リン中毒で点滴を受けて回復した。

ただし、この子どもが化学物質過敏症だったために、ごく微量の有機リン農薬にも反応したのだった。

その他のほとんどの子どもは近隣で殺虫剤が撒かれたことさえ、気がつかなかった。

それほど、有機リン殺虫剤による症例は個人差がある。

しかし、現実にひどく反応する子どもたちは存在するのだ。



実は、農薬の毒性に関しては、専門家といわれる大学教授や医師などの間でも意見は分かれる。

特に慢性毒性については学者の間でもどちらかといえば「過小」に評価する専門家と「過大」に評価する専門家がいる。

前者は農薬メーカー寄りの専門家たちに多い。

後者は化学物質過敏症の研究をしている医師などに多い。

前者について言えば、放射能による健康影響に関して少なく評価しがちな人たちが原発メーカー寄りなのと同じような構図がある。


「原子力ムラ」と同じように、「農薬ムラ」もこの国には存在する。

このことを踏まえて、専門家だからとコメントを取って良し、とするだけなら、取材として不十分だ。

有機リン農薬「マラチオン」による子どもの神経に対する毒性については、北里大学の石川哲名誉教授による研究が有名だ。

石川名誉教授は「マラチオン」が空中散布されていた長野県佐久市の子どもたちの症例などを研究し、有機リン殺虫剤が子どもの神経に症状を引き起こすことを証明し、遠山椿吉記念 第3回 食と環境の科学賞 功労賞 を受けている。

有機リン農薬は、特に赤ん坊や幼い子どもの神経の発達に悪影響を与えることが分かっている。


当時、佐久市のヘリの空中散布が行われた地区の小児達に神経系に異常を持つ児童が約75名以上発生した。

これが、有機リン剤の人体毒性研究の発端となった。

当時は、微量摂取による慢性中毒の知識、診断基準は全く無く全力を挙げて中毒患者の診断、治療、予防、疫学研究を行った。最終的に本症の原因はマラチオン空中散布接触による自律神経、視覚中枢路障害であった。Malathion ヘリ散布の中止を要請し、脱リン剤PAM, Atoropin投与、水、食の改善によりその後数年で患者発生は無くなった。

この原著はNeurotoxicity of the Visual System また、後述する化学物質過敏症の約30%以上は有機リン剤(主に殺虫剤)による慢性中毒である事も明らかになってきた。
出典:第3回食と環境の科学賞 功労賞受賞者
マスコミは犯人を追及することをも大事だが、被害の広がりが本当にないのかを検証する責任もある。

3・11以降の原発報道に関してもマスコミの課題になった、政府や会社側の発表を鵜呑みにせず、自らの力で調査する「調査報道」がこうした事件の報道でも求められている。



水島宏明 上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。

日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。

2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学新聞学科教授。

近著に「内側から見たテレビーやらせ・捏造・情報操作の構造ー」(朝日新書)


runより:大量生産とは不具合な物も大量生産されるのだとメーカーはもっと肝に銘じてマスコミは取材が出来る特権を正しい方向に使うべきだと思いますね(´_`。)