化学物質の人の健康と生態系への悪影響を最小化するために-2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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 立川 言い方を変えれば、20世紀は環境汚染や毒物の専門から毒性が研究されていました。

今はむしろライフサイエンスの第一線の人がたまたま環境ホルモンを研究するという時代になってきました。

次元が変わったので、世界各国で研究の競争が起こっています。

しかし、日本では、政治的圧力から環境ホルモン研究が進まず、結果として日本の研究は研究者が減って、相当後退しました。
 WHOとUNEPの研究者が作った環境ホルモンに関する報告書(State of the science of endocrinedisrupting chemicals – 2012)の参考文献も、ほとんど2000年以降の研究ですね(広報委員会注:本ニュースレター14、15頁に、この報告書の概要を紹介しています)。

それくらいホットなテーマです。
2006年頃までは日本もそれなりの研究がされていたので、日本人研究者の名前も少しはあるのですが、2008年以降の研究はなかったように思います。

環境ホルモン問題への対応・評価・運動・政策・調査研究まで含めて極めて数が少なく、世界から一周も二周も遅れてしまいました。

 中下 環境ホルモン問題が最初に注目された頃には、日本の取り組みは結構早かったのですが、その後、環境省が環境ホルモンは大した問題ではないと言うようになったために研究が少なくなり、今では世界的に大きく立ち遅れてしまっているのですね。

ところで黒田先生、どのような影響が環境ホルモン作用によって引き起こされることが分かってきたのでしょうか。

 黒田 具体的な症状は、かなりスペクトラムが広くなっています。

これまで原因不明といわれていて.特に最近患者が急増しているという病気について研究をすると、結局、原因は化学物質に行き着いたという例が多いです。
 アメリカでは、肥満などの成人病は胎児期から小児期の発達期の環境が原因になっているというDOHaD(ドーハッド、成人病胎児期起源説)という新しい概念が注目されていますが、日本で研究会ができたのは、ようやく一昨年です。
 実は、環境のうちでは化学物質が一番実験的に研究しやすいのです。

例えば、育児の際の母と子の社会的関係にはヒト特有の要素があるので実験動物では研究しにくいですが、化学物質は母ネズミに与えて産まれた子を見れば、何が起こったのか一目瞭然です。


環境ホルモンや化学物質の健康への影響
 中下 現代病といわれる生活習慣病が環境ホルモンや化学物質と関係あるということですか。
 黒田 発達障害ばかりでなく、うつ病も、いわゆる新型うつ病が非常に増えていて、怪しいです

。新型うつ病は自閉的症状と似ているところがありますね。統合失調症もDOHaDではないかと考えられます。

もう一つ重要なのは、精子の数が減っているだけでなく、遺伝毒性のある化学物質や放射線による突然変異が蓄積して、精子が劣化していることです。

自閉症は父親の高齢度に比例して、発症リスクが高いのですが、それは精子に新しい突然変異が次第に蓄積するためといわれています。


 中下 黒田先生は『発達障害の原因と発症メカニズム』(河出書房新社)という本を3月にも出版されるそうですね。

特に殺虫剤が、子どもの胎児期から産まれた直後あたりまでの時期に影響するのではないかと心配しているのですが、化学物質と発達障害の発症との間には相関関係があるのでしょうか。
 黒田 因果関係は社会的には既に確立されていると思います。

アメリカの小児科学会も、疫学など200ほどの論文を引用した上で、「農薬で子どもの脳腫瘍と発達障害が起こっている」と社会に公表・警告しています。

私ども(木村- 黒田純子ら)が「ネオニコチノイド系農薬の脳の発達への影響」について書いた論文も、欧州食品安全機関(EFSA)で取り上げられ、発達神経毒性の可能性があるので規制を厳しくしろという勧告が出されました。