・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
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化学物質の人の健康と生態系への悪影響を最小化するために
国連のヨハネスブルグ・サミットでは、2020年に向けて「化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化を目指す」ことが目標となった。
今回は、この2020年目標を達成するために、特に、環境ホルモンについて、どのように取り組むべきかを中心に、中下裕子事務局長が司会を務め、立川涼代表と脳神経科学者の黒田洋一郎先生に対談していただいた。
環境ホルモン問題とは何か
中下 2020年目標を達成するために「環境ホルモン」問題に適切に対処することが欠かせないと思います。
「環境ホルモン」問題はこれまでの毒性学の常識を覆したと言われますが、「環境ホルモン」が提起した問題はどのような問題なのでしょうか。
立川 現在もそうなのですが、リスク・サイエンスとレギュラトリー(規制)・サイエンスでは化学物質の投与実験をして、無作用量を決め、ADI許容量を算出するということが行われます。
ところがこういう方法が成り立たなくなったのがまさに環境ホルモンです。
つまり、毒性がリニアでないものがいくらでも出始めました。あるいは従来よりもはるかに低い、極端な場合には、分子レベルまで見ないと分からない毒性があることがわかりました。
しかも、異常か正常かの判断が難しい。
例えば、環境ホルモンは、内分泌系と脳神経系と免疫系に関わりがあり、しかも3つの機能の相互作用も簡単には分かりません。
遺伝子レベルでも、DNAはまったく変わらないのに化学修飾によって発現の態様が変わり、しかも僕が古い教科書で習ったのとは異なり、獲得形質が遺伝することも分かってきました。
環境ホルモン問題は、いろいろな学問の最先端とぶつかっているのですね。
その流れの中で化学物質の影響をどう捉えるか、学問的には難しいし、運動論ではもっと難しい。
少なくとも今までとはかなり違うアプローチをしなければいけないだろうし、環境ホルモンは世界的には21世紀の化学物質の生物的影響の主要な問題に間違いなくなってくるだろうと思っています。
中下 日本では環境省が1998年に環境ホルモン戦略計画SPEED'98というのを作り、最初67物質、その後70物質の環境ホルモン候補物質のリストが掲げられていましたが、2003年頃からでしたか「環境ホルモン問題は終わった」、「から騒ぎだった」との声が次第に大きくなりました。
2005年には、環境省もSPEED'98のリストを引っ込め、それまでの計画を非常に縮小した形でExTEND2005を策定したという経過があります。
それ以降はほとんど報道もされなくなりました。
環境ホルモン問題はあのまま終わったと思っている国民の方も多いのではないかと思います。
しかし、昨年、国民会議でEUから講師をお招きして国際市民セミナーをしたところ、EUでは環境ホルモンの規制が始まろうとしていて、今年2014年
が正念場になっているとことがわかりました。
どうしてEUでは、こんなにも環境ホルモン問題の議論が進んでいるのだろうと思いびっくりしたのですが、この間、環境ホルモンについては、世界的に見て、どのように研究が進められてきたのでしょうか。
遺伝子の発現が変わり、行動に異常が起こります。
こういう場合、遺伝子発現の研究者が、農薬を手段として論文を書くことになります。
特に反農薬ということではなくても学問的に面白いので、どんどん進歩していきます。