毒性学の今日的意義:高感受性群を視野に入れた検討:3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・感受性を考慮した毒性学的研究アプローチ

集団の中には感受性の高いグループが存在することを考慮し、どのような要因が有害物質の感受性に影響するのかを検討する。

二世代曝露:胎児期や授乳期に胎盤や母乳を介して有害物質に曝露される場合の影響。また発達期の曝露も検討するべき。

何らかの疾患(腎臓など)により、排泄機能が低下している場合の影響

個体間の変動が少なく、かつ毒性を検出しやすいという動物を用いたモデル実験

シックハウス症候群の考え方
トリブチルスズ

船底や漁網の防汚材として用いられたトリブチルスズ(TBT)は、規制により使用が減少したが、未だ魚介類や海の底質の汚染が報告されている。

TBTの主要な毒性には胸腺萎縮などの免疫毒性と並び神経毒性があげられる。

現在の汚染レベルは人間の健康に直ちに問題になるレベルではなくなっている。

しかし、慢性の影響にはわかってないことがおおく、特に動物実験における二世代曝露においてはF1(仔)により影響が強く現れることが知られている。

またTBTの分解産物でもあるジブチルスズは、有機合成の触媒として使用され、その残存による毒性が懸念されている。

感受性の高い動物群を用いた検討

動物実験は、限られた動物の使用数、投与期間で行わなければならない限界がある。

実験結果の個体間のバラツキが時に問題がある。

Tokai High Avoider (THA)ラットは、記憶学習能力に優れた個体同士を掛け合わせ累代飼育することにより、一様に高学習能力を示す個体間のバラツキが少ない動物群となっている。THAラットを用いてTBTの記憶学習能力への影響を検討中である。
フッ素による環境汚染

中国やインドではフッ素による地下水汚染が問題となっており、高い場所では数十ppmに及び、井戸水に含まれる8ppm以上のフッ素を飲用することで骨硬化症が問題になっている。

調査は十分ではないが、イラン、タイ、アルゼンチンなどでも飲料水中の高濃度フッ素の問題が指摘されている。
フッ素の代謝と毒性、感受性

フッ素の毒性にも個体差があると考えられるが、現時点では、実際に健康障害が多発していることもあり、感受性の差までの検討は疫学調査では不十分である。

フッ素は腎臓を介して排出されるが、腎機能が低下していると排泄が低下し、結果としてフッ素の毒性が強まる可能性がある。

フッ素は高濃度であれば動物実験において、腎毒性を示す。

腎機能とフッ素の毒性を関連付けた報告は少なかった。

腎機能が低下しているモデル実験動物としてICR-derived glomerulonephritis (ICGN)マウス、High IgA(HIGA)マウスなどがある。
腎機能が低下したマウスを用いた実験

ICR-derived glomerulonephritis (ICGN) マウスはICRマウス由来の糸球体腎炎を自然発症するマウスで、腎機能が低下している。

ICGNマウスにフッ素を含有した飲料水を与えると、100ppm, 150ppmのレベルで死亡が起こる。(Hosokawa et al., 2011)

同じレベルでICRマウスの死亡は起こらない。
フッ素に曝露された腎機能低下マウスの血液生化学

飲料水中に含まれるフッ素に曝露されたICGNマウスにおいては、腎機能を反映するBUN値、クレアチニン値が上昇している。

一方ICRマウスにおいては上昇が観察されない。

シックハウス症候群と化学物質

シックハウス症候群については、医学的に統一された見解は未だない。

化学物質に関連するものを明らかにするために基準付き臨床分類を提案し、2型を狭義のシックハウス症候群とすることを提唱している。

健康影響は、許容濃度より低い値で感受性の高い集団におこると考える。

終わりに:これからの毒性学

今後の毒性学は、従来の基本的概念を踏まえつつ、毒性物質に感受性の高い集団があることを考慮した研究が望まれる。感受性を規定するものが何かも探求しなければならない。

シックハウス症候群のような、発症のメカニズムなど不明の点が多い健康影響に関しても、毒性学から解明が期待される。


runより;画像編集に失敗していくつか抜けてますが基本的にはこれで十分だと思います。