その5:学校等における香料自粛に関する要望:化学物質問題市民研究会 | 化学物質過敏症 runのブログ

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IFRA スタンダードでも、香料の他トルエンやベンゼン等の溶剤も含めた原材料について、使用禁止物質80 件を定めている他、使用制限物質102 件で配合量の上限を設けています27)。

しかし、化粧品やシャンプー等に含有される香料は0.1~1%程度であるのに、それでも抗原性の強いアレルギー性接触皮膚炎を頻繁に起こす香料や、天然香料にも陽性率の高い要注意の香料があり28)、日本皮膚科学会の接触皮膚炎診療ガイドラインにおいても、化粧品による接触皮膚炎の原因物質としてパラベンやホルムアルデヒドとともに香料があげられ29)、原因解明に有効な検査であるパッチテストで複数の香料成分を含む試料が用いられています28,29)。

業界の自主基準のみに依拠している日本では、そのようにアレルゲンとして特定されている物質が、表示義務もなく何の規制もなく流通しています。近年の動向をみても、香りの強い製品が売れ始めると簡単に製品中の香料の含有量を上げるなど、香料業界は、このような現状で本当に自主規制しているといえるのでしょうか。
また、香料は成分が揮発して呼吸で体内に取り込まれるのに、吸入毒性についてほとんど検討されていません。


厚生省生活衛生局の「芳香・消臭・脱臭・防臭剤安全確保マニュアル作成の手引き」(平成12 年3 月発行)では、「6.過去の健康被害事例について(4)文献等からの情報」の項で、香粧品香料素材の安全性について業界のガイドラインは示されているが、「神経機能障害性や内分泌かく乱作用についてはまだ十分研究されておらず、今後の研究課題となっている」ことや、「一般的に気散する成分を含む製品(例えば化粧品、香水、殺菌剤、抗菌製品、芳香剤、いわゆるアロマセラピー用精油など)はその成分が顔面などの皮膚について吸着濃縮され、airborne allergens (*空気中のガス状や浮遊微粒子状のアレルゲン)となる可能性も考えられている」こと、「製品から気散した成分は主として吸入によって体内に摂取されると考えられるが、成分の吸入による毒性が検討されている場合は少ない」ことに触れています30)が、13 年経った今もその状況はほとんど変わっていません。

着香製品にはさまざまな揮発性物質が含まれており、リモネンやエタノール、アセトン等が検出される他20, 31)、中にはアセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の有毒な化学物質を発生する製品もあり31)、様々な製品を使用している児童生徒が多数集まって過ごす教室では、それだけ多くの物質により室内空気が汚染されます。

特に香料等によってつらい症状が出る人にとって受動被曝の問題は深刻ですし、また、香りは個人的な嗜好もあるため、それらの香りを好まない人にとっても受動被曝により不快感やイライラ、集中できないなど心身にマイナスの影響が生じることも考えられます。

香料で症状が引き起こされる自覚のない人であっても、室内空気汚染により健康を害される可能性があります。
香料の健康影響については、一般的疑わしさや懸念があるだけの状況ではなく、研究レベルでの実証も進みつつあり、EU では香料規制の強化に結び付くなど、政治的な動きはこれから更に国際的な流れになっていくはずです。

アレルゲン物質も多く、遺伝毒性、発がん性等を有するものもある香料について、安全性審査を充実させ、無制限に宣伝させないようにすべきであり11)、日本も業界の自主規制に任せて野放しになっている香料製品の氾濫に歯止めをかけるよう規制に乗り出すべきです。
一方、仮にすぐに国として規制導入に向けて取り組んだとしても、基準等の策定までには何年も待たねばなりません。

すでに香料暴露に苦しんでいる多くの人がいて、新たな健康被害の発生も続いており、法令等の整備が未だ整わない現状では、公共の施設や公共輸送機関など公共の場では香料や消臭剤の使用を抑制あるいは自粛するようにする必要があり11)、貴省でできることとして、学校等における「香料自粛の取り組み」を進めていただきたいのです。
今の香りの強い柔軟剤ブームの火付け役となったのは米国製柔軟剤ですが7,32)、米国でも着香製品による健康被害が深刻化し、各地で香料自粛の取り組みが拡がっており、自治体によっては香料禁止方針や職員の香料自粛の行動指針を示しています33)。

また、カナダのノバスコシア州の州都ハリファックス地域都市は無香料の啓発プログラムを実施、2000年には「香料不使用の方針(No Scent Policy)」を市の職場から自治体施設の公共スペースに拡大することを評議会で承認して、法による規制ではないものの公共施設での香料不使用の取り組みを自治体として奨励しており34, 35 ,38)、施設のホームページでも着香製品不使用のお願いや香料の問題に関する啓発がされています36 ,38)。

学校や図書館、バスでの着香製品の自粛など、この動きはノバスコシア州にも拡がっているそうです37,38)。
日本で先進的に取り組んだのは岐阜市です。

「香料自粛のお願いポスター」を全市的に掲示して呼びかけるキャンペーンを始めたのが2005 年で32,39)、その後2008 年から2009 年頃に、岐阜市のポスター40)や公共の場での香料自粛を初めて呼びかけた水郷水都全国会議での掲示ポスター41)の文面等を参考に、各地の自治体で独自のポスターが作られ、ホームページで呼びかけたり、各地の学校や病院、公共施設等でポスターを掲示したりする動きが拡がりました8)。
岐阜市や岐阜県は、香料の影響はすべての子どもたちの健康に関わる問題ととらえて、過敏症の子どもが在籍している学校だけでなく、各施設や各学校にポスターを掲示するよう通知を出しています。

しかし、多くの自治体では、基準となるポスターをHPにアップして掲示を勧めていても通知発出の対応はほとんどなく、掲示は各施設の判断に任されています。

また、ポスターの掲示だけでは改善されないという実態もあり、香料の健康影響についての学校関係者の認識を深めるための啓発や、学校等における香料自粛を進めるための他の啓発方法等の工夫が必要で、また、化学物質に過敏な児童生徒等にいじめ等の二次被害が生じないようにする配慮も必要です。
学校の判断で、香料自粛のお願いのポスターを玄関や校舎内、行事の際の立て看板に掲示したり、行事の案内文書に、香水や整髪料等アレルギー反応を引き起こす恐れのある製品の使用を控えるようお願い文を掲載したりするなどの対応をしてくださる学校もあります。

また、過敏症の児童生徒のためにと強調することで当該児童生徒が孤立したりすることのないよう、全生徒に、学校は、理由がある場合を除いて香粧品をつけてくる場所ではなく、特に強い香りはふさわしくない等の説明をするなど配慮してくださる学校もあります。

ただ、個別対応として、化学物質過敏症の児童生徒のいる学校だけが取り組んでいるだけでは、当該児童生徒が高校や大学への進学後、他の学校で香料使用が当然のこととして過ごしてきた多数の生徒の中で個別配慮から香料自粛をお願いすることに非常に高いハードルが課せられてしまうという問題が生じます。

個別の配慮を求めることだけで問題に対処することには限界があって、いじめや嫌がらせなど別の懸念も生じます。