環境省は今年6月に始まった女性クールビズで柔軟剤や制汗剤等の使用を推奨していましたが、健康被害を受ける人が増えるとの市民団体等の多数の声を受けて、すぐに着香製品の推奨を撤回しました8)。
医薬食品局の「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によれば、近年、芳香・消臭・脱臭剤の吸入事故等の報告件数が、年度により減少もありますが増加し続け、平成12 年度の44 件から、17 年度には80 件を超え、23 年度は105 件とこの10 年で倍増しています12)。
消費者庁と国民生活センターの事故情報データバンクにも、「柔軟剤」や「合成洗剤」、「芳香剤」などの「香料」による健康被害の訴えが数多く報告されています13)。
例えば、「柔軟剤」で検索すると、2009 年からの累計で、2013 年9 月19 日現在128 件もの事故情報が確認できます。
新聞報道によると2009 年は5 件、2012 年は48 件と急増したとのことですが8)、今年はさらに増加しています。
柔軟剤による体調不良や健康被害に関する新聞報道が続いていたところ8)、9 月19 日に国民生活センターの「柔軟仕上げ剤」に関する報道発表があり14)、多くのメディアが取り上げました。
相談内容で危害情報の件数が急増、体調不良や呼吸器障害などの危害が91%を占めており、同センターは、消費者への注意喚起をするとともに、業界にも「(商品の注意表示や啓発活動など)においが与える周囲への影響について配慮を促すような取り組みを行うよう」求めました8,14)。
2012 年に実施した商品テストでは、洗濯物を室内に干した際の室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)を分析すると、いくつかの成分は香料原料や香料の溶剤として使われる化学物質と推定され、総揮発性有機化合物(TVOC)の室内濃度は、強い芳香の製品が微香の製品より3 倍から7 倍も高く8)、最も濃度が高かかった製品では、一定の換気がされている状態で干してから1 時間後に厚生労働省の定める室内濃度の暫定目標値400μg/m3 の3 分の1 を超えていました14)。
学校等でも同様です。強い香りの洗剤や柔軟剤等のコマーシャルが目立つようになるに伴い、教室にも様々な芳香臭があふれるかのようになってきました。
今回の要望書提出にあたって、香料への暴露体験事例15)を募集したところ、次のような現状を訴える人もいました。
「ノート、筆箱、教科書、プリント類、弁当箱(の内側まで)、ステンレスボトル、衣類(ウールのセーター、靴下、肌着や下着に至るまで)、マスク、ハンカチ、リュックなど、学校に持って行った物は、すべて強烈な芳香臭をつけて帰ってきます。衣類については、洗っても移り香がとりきれない状況で、それらの物を家に置くだけで、家の中に強い芳香臭が放出され、芳香商品を使用しているかのようになってしまいます。」
教室の空気は、それだけ香料で汚染されているという事になります。
高校生の息子さんは香料で気道粘膜の症状や強いにおいで集中力減退が生じ、また、ご家族はこうした芳香臭によって息苦しさ、喉の圧迫感、側頭葉の圧迫感、頭痛、肩のこわばり、腕の筋力低下、不安症状、記憶障害、味覚障害等さまざまな症状に苦しんでいるそうです15)。
各地の学校で、教師や保護者の香水や化粧品、友達の柔軟剤の香料などに曝露して苦しんでいる子どもたちがいます。添付資料の「香料暴露体験事例集」15)をご覧ください。
小学生の時から、洗剤等の香料、デパート等の色々な香料入りの商品の香り、匂いに敏感で、頭痛、眠気、身体がだるくなっていたというお子さんは、学校の先生の化粧品、衣服に残る洗剤等の香り、リンス、トリートメントの香料も頭が痛くなると訴えています15)。
また、やはり小学生の頃からにおいに敏感だったという別のお子さんは、周りの友達の服の柔軟剤、合成洗剤の香りで気分が悪く、体がだるくなり、頭痛は夜になっても治まらず、不眠、頻尿がひどくなるなどの症状に苦しみ、その後次々と頭痛が起こるものが増えていったそうです15)。
中学、高校と学年が上がると、柔軟剤やシャンプーだけでなく、制汗剤や香水、整髪料を使用する生徒も増えてきます。
ある保護者の方は「ティーン向けの雑誌には、香りつきの物の広告が所せましと氾濫し、子供たちの間では香りをつけていないとタブー視されるくらい」と訴えます15)。